武士道入門31 お正月の武士道とは?

江戸期の武士の教育者だった儒学者に、大道寺友山という人がいます。

彼はまさに『武道初心集』という本を書いているのですが、
そのなかにこんな一節があります。

「武士たらんものは、正月元旦の朝、雑煮の餅を祝ふとて、箸を取初るより、其年の大晦日の夕べに至るまで日々夜々死を常に心にあつるを以て、本意の第 一と仕り候」
武士はお正月を祝って、お雑煮を食べるときから、その年の大晦日の夜まで、 ずっと死を覚悟していなさい......と。

ちょっとドキッとする言葉、「のんびり気分のお正月に、なんてことを言う んだ」と、あきれる方もいるかもしれません。
正月くらい休もうよ......。

それはもっともなんですが、武士の考え方は違う。
『武士道』における武士の姿はこうなんです。
「(彼らは)理想の体現者であり、鍛錬に鍛錬を重ねて鍛え上げていく『克己心』の生きた見本だったのです」

ということで、原則、武士たちには「お正月休み」のようなものは、ありませんでした。
町人たちが休むなか、お城へ登場し、年賀の挨拶回りをして......と、じつは普段以上に、ハードなスケジュールを元旦からこなしたようなんです。
そのあとはいつもと変わらず、お務めに励む。ちょっと気の毒かもしれません。

でも、武士たる役目を放棄したら、彼らに存在価値はなくなる。
正月だろうが休日だろうが、それは関係ない......ということなんです。
やはり「戦士の 哲学」ですね。

まあ、そうした武士の原則を私たちの仕事にも当てはめよう、という気はありません。
でも、やはり正月だろうが、私たちは「自分の仕事を成長させようとしているプロ」であり、日々、学んでいる存在であることは変わりません。
お正月にどこかに行った......。 久々に地元の友人や親戚たちに会った......。
それは普段では学べないこと、いつもの日常からは入らない情報などを吸収 できるチャンスでもあるわけです。

「お休みだから仕事のことなんて抜き!」でなく、常に「自分の目標」を心に置きながら、休みの期間を生かす......という考え方も重要なのかもしれません。

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