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賢者の言葉14 着ざれば風身にしむ

「著ざれば風身にしみ、食ざれば命持ちがたし」

覚林寺さんの、掲示板に貼ってあった言葉。
日蓮さんが残しているものだそうですね。

お寺の解釈では、
「衣服も食べ物も、基本的には
自分でつくっているものではない。
私たちはそんなふうに、皆で支えあって生きている。
だから周りへの感謝を忘れないようにね」
という意味だそうです。

ただ、そのままの訳をすれば、
「服を着ないと風が冷たいでしょ。
何も食べなければ、生きられないでしょ。
いいんだよ。無理をせず、
自分を最優先させようよ」と。
そんなふうにも解釈できます。

「まず自分」でいいじゃないか。
あまりストイックにならず、
もっと自分のありのままを認めてあげよう……。

あまり日蓮宗的ではないのかもしれませんが、
とても大事なことだと思います。

ご存じのように、
誰でもが知っている芸人さんが、
先日、お亡くなりになりました。

傍目では、亡くなるようにはまったく見えない
明るい方。
でも考えてみれば、
自己評価はとても低かったのかもしれません。

喋りがうまいわけではない。
器用にいろんなことができるわけではない。
周りをみれば、自分より優れているように見える人が大勢いる。
そんななかで、うまくいかないことが重なると、
すぐ「自分になんて存在価値がない」と思ってしまう。

私にもそんなふうに思うことがないわけではありません。
だから亡くなった方に申し訳ないのですが、
彼のようなタイプの自虐ネタの芸人さんが、
私はあまり好きではない。
なんとなく自分自身と重ねてしまうのが、
嫌なところもあるんでしょうね。

でも、本当は逆なのでしょう。

さほどの実力はないし、
仕事でも、人間関係でも、恋愛でも、プライベートの活動でも、
大きな成果を出したわけではない。
周りをみれば、すごい人がいくらでもいる……。

でも、そんな世界で、60年、50年、40年、30年と
何とか頑張って、まだ生き抜きている自分自身がいる。
そのことをもっと誇りにしていいのではないないか?

着るための服を得られる、
生きるための食べ物を得られる。
それだけで私たち、十分に立派なんです。
心のうちなどわからない他人と
比べていてもしょうがないですよね。

長く楽しませてくださった芸人さんに感謝し、
私たちは前を向いていきましょう。

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