武士道入門10 知行合一の精神

「武士道の源流」に関して「儒教の影響」という話をしたのですが、とくに「武 士の勉強法」として非常に重んじられたのが、儒教の「知行合一」という考え方。

もともとは儒教のなかでも、「陽明学」という教えで重んじられた思想ですが、 これが幕末になってくると非常に大きな影響を日本に及ぼすようになります。
その発端が、次の言葉を言った人物です。

「心の役割は『思う』ことである。その内容は、実行する事柄を工夫すること である。思いを集中していくと、そのことに関してますます明確になっていく し、真剣に取り組むことになるのである。 その真剣に取り組むことを『行』といい、明確になっていくことを『知』と いう。『知』も『行』も、行き着くところは『思』という一文字なのである」

述べたのは、「佐藤一斎」という儒学者。
いまでも多くのリーダーに読まれる、『言志四録』の一節ですね。「人の上に立つ人」の勉強』(三笠書房)の現代訳を使用させてもらいました。

つまり、何らかの行動をしなければ「知識」は得られないのです。行動し、 それによって学んだことをプラスして、はじめて私たちは「思う」ということができる。
そうでなければ、学んだって意味がないんだよ......と。
そういう厳しいことを説いているわけです。

だから影響を受けた多くの人は、具体的な行動を起こします。
佐久間象山、 吉田松陰、西郷隆盛......と、具体的な行動を起こしたからこそ、結局は幕府が転覆されることになりました。

しかし歴史的な問題のみでなく、いまだって「知行合一」は大切なのです。
「知識は、生きていく上での実行を伴って初めて価値あるものと見なされる」
新渡戸稲造さんは、『武士道 』でそう言っています。

たとえばリーダーシップの本を読んだ。
あるいはセミナーで、自己発信の重要性について学んだ。
それで残念ながら、「価値が生まれる」ことはありません。

リーダーだったら、次の日には部下に対して、本で読んだことを実践しなければ、価値にはならない。
自己発信だったら、それこそブログに何か書く、あるいはフェイスブックで 学んだことを公開する......。

現代において「学びのツール」は溢れているのですが、やっぱり私たち、「学 んでそれっきり」になっていることが多いのです。
それでは結局、何も変化は起こりません。
むしろ勉強すること自体が大変だった武士たちのほうが、本質的な勉強をしていたのかもしれませんね。

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