肩関節治療に持つ苦手意識を克服するために知っておくべき内容
こんにちは、理学療法士のTakuです。
今回は前回の続きになります。前回の記事をまだご覧になっていない方は、ぜひ先にご覧ください。
前回の記事では、肩関節の治療が苦手なセラピストが抱える課題を解説しました。今回はそれらの課題について具体的な例を挙げて説明していきます。前回の記事が少し抽象的だったかもしれませんので、具体例を通じて内容をより理解しやすくすることを目指します。
🔸運動学を意識しすぎている介入の具体例
一般的に、運動学を参考にして肩の動きを考え、治療を進めていくことは大切です。しかし、運動学にとらわれすぎるとどのような問題が生じるか、具体的な例を挙げて説明していきます。
ここで、一緒にある動作を試してみてください。動作はパターン1とパターン2の2種類があります。座っていても立っていても構いません。
まずパターン1から始めましょう。左右どちらかの上肢を90°の外転位にし、可能な範囲で水平外転を行います。動作自体はこれだけです。このときの最終域の角度や肩周囲の感覚を覚えておいてください。
次にパターン2に移ります。一度手を下ろしたら、同じ上肢を再び90°の外転位にします。今度は腕を空間上で動かさず、体幹を挙げている手と反対側に可能な限り回旋させてみてください。最終域まで回旋させたら、全体を戻すときには腕ごと動かします。正面に戻ったときには、挙げた腕が水平外転位になっているはずです。このときの腕の角度と感覚を覚えておいてください。
最後に、パターン1と2でとった水平外転の角度を比較し、またそのときの肩周りの感覚を比較してみてください。多くの方が、パターン2の方が楽に、そして大きく水平外転できることを体感できるはずです。
今回の文脈で言うと、パターン1は運動学的な思考、パターン2は肩の評価・治療に必要な全体的な思考を示しています。
運動学的な思考が強いと、動作の違いによる特徴を把握できず、良かれと思って行っていた動作が実は肩に負担をかける方法であったということが生じることがあります。
🔸角度計測が目的になっている具体例
セラピスト自身が角度計測が目的になっているとは思っていないでしょう。しかし、結果としてそれが目的化してしまうことがあります。
例えば、水平内転の治療をしていると、現状の到達点を知るために角度を計測することがあります。しかし、「角度を計測しよう」となった瞬間、すでに「患者さんの肩の状態を把握しよう」という本来の目的から逸脱してしまっているのです。
肩関節を触ると、最終域の手前でわずかに筋緊張が起こったり、代償運動が見られたり、動きが逸脱したりと、さまざまな変化を感じることが多いです。
角度計測が目的になってしまうと、これら小さながらも重要な変化を見逃してしまう可能性が高まります。
🔸自分の身体を適切に使えていない具体例
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