グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#14
第14話「魔物との戦い」
文字数 1,696文字
「せっかく翼があるんだし、手分けして探してみたら?」
ハルカが言った。
「それはだめだ。メル・マナは広い。迷子になる確率が高い。それに、魔物に襲われるリスクもある。皆で行動した方が安全だ。」
テントウが言った。
「そうかー。それもそうね。」
「時間はかかっても、安全に捜索する方がむしろ早く見つかるかもしれない。俺たちが迷子になってても仕方ないからな。」
辺りを注意深く見回しながら、テントウと四人は森の中を進んだ。
そうして進んで行くと、テントウが急に止まった。
「…魔物がいる。」
四人は身構えた。
「こちらに気付いてる。戦いは避けられない。」
「あれは悪い魔物なの?」
ハルカがテントウに聞いた。
「良いか悪いかは、目で判断するんだ。悪さをしている魔物は、目が赤い。白目は要注意。凶暴化した魔物だ。あれは…目が赤いだろう?」
「そうね。でも…どうして赤いの?」
「悪に染まったマナは、赤くなるんだ。それが目に現れる。普通の魔物の目は青か緑色をしている。」
「アカリちゃんはー、緑色の目。いい魔物だもんねー。」
「グルルル…。」
黒い毛に覆われた、大きな犬のような魔物がこちらへ走ってきた。
戦士のトウマが、銅の剣を振りかざして立ち向かっていった。
その後に、農民戦士のハルカも続いた。ハルカは、草刈り鎌を両手に装備していた。
ナツキの相棒の子供竜、アカリは口から小さな火の玉を吐きながら、前に出た。
アキトはレーザーショットガンを装備して、後方支援にあたった。
テントウは機械虫なので戦えない。戦うための能力はないのだ。
四人は魔物と戦闘を始めた。
飛び掛かってきた魔物に、トウマが銅の剣で攻撃し、ハルカはとどめを刺す機会を窺っていた。
魔物に銅の剣の攻撃は、全く効いていなかった。魔物は、ハルカを突き飛ばした。
突き飛ばされたハルカは、木にぶつかってそのまま地面に落ちた。
「いたた…!」
「ハルカ!大丈夫か!?」
トウマがハルカに駆け寄り、キュアを唱えた。ハルカのHPは少しだけ回復した。
「ここで待ってろ。」
トウマが戦闘に戻った。
魔物は、ナツキとアカリのコンビネーションに振り回されていた。
ナツキが囮となって逃げ回っている間に、アカリが火の玉を大きく膨らませて、それを魔物にぶつけると、魔物の硬い毛に火が燃え移って、たちまち魔物は火達磨になった。
「とどめだ!」
アキトが少し離れた所から、レーザーガンを撃った。レーザーは魔物に直撃し、魔物は倒れた。魔物はやがて、灰になって消滅した。
「すごい!アキト君。」
ナツキがアキトに駆け寄った。
「別にすごくないよ。道具の力さ。」
何でもないというふうに、アキトは言った。
トウマは刃こぼれした銅の剣を見て、ため息をついていた。
「銅の剣はだめだな…。新しく剣を買わないと。」
ハルカは、魔物が灰になった所をじっと見ていた。
「どうかしたか?」
テントウが聞いた。
「…ううん。何でもない。」
心なしか、ハルカの顔にはいつもの元気がなかった。
こうして、何匹か悪い魔物を倒しながら進んで行くと、今度は白目の魔物に遭遇した。
「あれだ!凶暴化した魔物。」
テントウが草陰に隠れて、魔物の様子を窺った。四人もすばやく隠れた。
「グルルルルル…。」
白目の魔物は、先程倒した魔物たちより体が一回り大きかった。黒いふさふさとした毛に覆われていて、狼のような姿だった。何か獲物を探しているのか、しきりに地面の匂いを嗅いだり、風の匂いを嗅いだりしていた。
「もしかしたら、何か手掛かりが見つかるかもしれない。凶暴な魔物を倒した者は今の所誰もいないんだ。灰になるかどうかも分からない。どうする?」
テントウは四人を見た。
「あたしがなんとか、説得してみる。」
魔物ブリーダーであるナツキが言ったが、テントウは首を振った。
「あれは、普通の魔物じゃない。凶暴化した魔物だ。」
「どうするも何も、やるしかないだろう。」
トウマが決意した目で言った。
「よし。」
テントウが、そっと草陰から出て、四人に合図した。
四人は身構えつつ、草陰から飛び出した。
その気配に気付いた魔物は、唸りながら向かって来た。