グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#26
第26話「虚空城」
文字数 1,222文字
着いた所は、何もない、断崖絶壁。
「城」というから、ハルカは、そういう建物があるのだとばかり思っていた。
「ここで間違いないのか?」
アルがキルに聞いた。
「間違いない。見えねえのか?虚空城が。」
そう言われて、アルは目を何度も擦って見たが、崖の先に広がるのは真っ暗闇だった。
「もしや…これが!?」
アルははっと気付いた。
気付いた途端、虚空城が目の前にその姿を現した。
「なんにもないじゃなーい。」
ナツキはきょろきょろと辺りを見回していた。
断崖絶壁の下には、真っ暗闇が広がり、今ハルカたちの立っている所は荒れた地面だった。草木一つ生えていない。森を抜け、洞窟を越えたあたりから、ずっとこの景色だった。空も暗い。
「待って。今何か見えたような…。」
アキトは目を凝らしていた。
「うーん。俺にも何も見えないな…。」
トウマには見えないようだった。
「私も…何も見えない…。」
ハルカにも見えていない。
キルは既に先に進んでいて、姿が見えなくなっていた。
ミラも、必死に城の姿を探していた。
「お前たちには見えないのか…。これでどうだろう。」
アルは、光の魔法「シャイン」を唱えた。
すると、ハルカたちの目の前に、黒い影のようなものが見えてきた。
よく見て見ると、それは、巨大な骸骨だった。
頭を上にして、仰向けになった骸骨。
ハルカたちは、驚きながらも、巨大な骸骨の頭に開いた穴を見つけて、そこから中へ入った。
「でも、どうしてシャインで見えたのかな…。」
「虚空城は、認識出来ないと目にも見えず、触れることも出来ない。しかしアルの光魔法は、全てを照らす。それで君たちにも認識出来るようになったんだ。」
メルがハルカの言葉に答えた。
「光のもとでは、どんな影でもその姿を現すのさ。」
「なあ、メル。これがあの骸骨の中なのか?」
アルが不思議そうにしていた。
「そうだよ。」
骸骨の内部は、細長い管が何本も繋がっていて、それが一本道になって奥へと続いていた。
「全く城でも何でもないじゃないか。虚空城などと、大げさな…。」
「この奥に、アーリマンがいるはずなんだ…。」
「アーリマン…。」
アルは緊張して、拳を握り締めた。
ハルカたちも二人のあとについて進んでいた。
「テントウちゃん。」
ナツキは、一番後方を歩いているテントウに声をかけた。
「皆がいるから、大丈夫よ。」
「そうだな。…しかしまさかアーリマンに会いに行くなんてな。ハア…。」
テントウは、すっかり肩を落として、元気をなくしていた。
「ダイジョウブ。」
アカリがしゃべった。
「なに!?お前、言葉を!?」
「なによー失礼ね。アカリちゃんだってしゃべるわよ。あたしが教えたんだから。ねー。」
アカリとナツキは顔を見合わせて笑った。
「むむ…。アカリは全く怖いもの知らずだな。よし!こうなったら俺も腹をくくろう。ここまで来たんだ。世界を滅びさせるわけにはいかない。」
「そーそー!その意気よ!」
ナツキはテントウを励ました。