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グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#16

第16話「真相」

文字数 1,435文字

 アルの図書館に着いた。
 テントウは、トウマに動いている機械心臓を持たせて、アルの部屋へ急いだ。ハルカたちもついていった。
 そして、テントウはアルに事の次第を告げ、動いている機械心臓を渡した。
「そうか、やはり…。これは、グラナージの機械心臓。それが魔物の体の中にあったということは、つまり…。」
 アルは、金属の容器のようなものに、機械心臓を入れた。
「アル様も同じ考えでしょうか。グラナージが行方不明になったのは、グラナージの魔物化が原因だと。」
「うむ…。信じられんが、そう考えれば納得がいく。それではもしかしたら、メルも…。普段、メルはアカシアに常時アクセスしていて、プラスマナもマイナスマナも受け取っている。しかし現世でマイナスマナが増え、それによってメルの精神も次第におかされていった…それが魔物化を引き起こしたと考えられる。メルは魔物化を悟って自ら街を出たのかもしれない。私に黙って…。それが納得いかんのだ。」
「…ちょっと待って…!それじゃあ、私たち…。」
「ん?どうかしたのか?」
 テントウがハルカの青ざめた顔を見た。
「魔物化したグラナージ…それってまさか、私たちと同じ…?」
「いや、それはないと思うぞ。前にも言ったが、アストラルスーツで二つの世界を行き来しているお前たちの本来の世界は向こう、アル・マナ(現世)だ。だから、こちらのマナの悪影響を受ける心配はあまりない。」
「でも、ゼロではないんでしょう?これから先、もしかしたら、私たちも魔物化したり、あるいは、魔物化したグラナージを…殺す…ことにならないの?」
「そうか…そういうことか…。ハルカが言いたいのは、つまり、俺たちが、結果的に人間をこの世界で殺すことにならないか不安なんだな。」
 トウマの言葉に、ハルカは頷いた。
「緊急時にアストラルスーツが自動で外れるようになっている。アストラルスーツが外れれば、この世界との繋がりも断たれる。魔物化した場合も、マナの数値の異常をアストラルスーツが感知して外れる。いずれにしても、お前たちが不安になるようなことは全て想定済みだ。心配はいらない。」
 テントウが説明した。
「そう…。」
 ハルカはまだ、何か納得がいかないような顔をしていた。
「とにかく、マナのバランスが崩れて、マイナスマナが増えてしまったせいで、グラナージが魔物化した。そして、メルも魔物化したと考えられる。それが、魔物の増加の理由。ここまでは、分かるな?」
 全員がアルを見て頷いた。
「うむ。そして、今疑問なのは、何故メルがいなくなったのかということだ。魔物化した初期なら、私と相談するなり、何か魔物化を抑える方法があったはずなんだ。だが、いなくなったということは?メルは、アカシアの記憶者だ。アカシアに、何かが書かれていて、そのために街を出たとしか考えられない。メルがここにいるとまずいことが起きる、もしくは、アカシアに書かれた何かを実行するために?…私は残念ながら、アカシアを読むことが出来ない。だからメルの考えは分からない。」
「メル様を探すしかないでしょう。この四人なら、大丈夫です。俺は戦うことは出来ませんが、案内役なら出来ます。」
 テントウが胸を張って言った。
「しかし…来たばかりのお前たちを危険な目に遭わせるわけには…。魔物と戦うことになるかもしれない…いや、確実に戦うことになるだろう。」
「そのことなんです。」
 ハルカがアルを見て言った。
「何か気になることがあるのか?」
 アルがハルカに聞いた。

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