グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#24

第24話「それぞれの気持ち」

文字数 1,542文字

「ところで、アル。新しい鍵を作ったんだね。そのペンダント…。…ううっ!!」
 メルが苦しみ出した。
「大丈夫だ!今は私がいる。」
 反射的にメルを助けようと動いたミラをアルが制止した。
「シャイン。」
 アルは魔法を唱えた。
 すると、メルの体がほのかな光に包まれて、メルの発作が治まった。
「あれー?キスするんじゃないの?」
 ナツキが言った。
「ば、ばかもん!人前でそんな恥ずかしいマネをするか!」
 アルは顔を赤らめて言った。
「メルバカには魔法で十分だ。」
「…まだ怒ってるんだね。」
 メルは、悲しそうにアルを見た。
「本当に悪かったよ、二人とも。僕はすっかりミラをアルと思い込んで…。頭が朦朧としていたんだ。でも、アルが来てくれて、意識がちゃんと戻ったみたいだ。」
「ふん。」
 アルは、腕組みをして、メルに背を向けていた。
「アル…。」
 メルは、アルを後ろから抱き締めた。
「なっ!」
 アルは急に抱き締められたので驚いて抵抗し、メルは地面に叩き付けられた。
「あっ!ご、ごめん…。」
 さすがにアルはメルに謝った。
 二人はしばらく見つめ合っていた。
「あーあ。羨ましいねえ。」
 その様子を見て、悪魔のキルが言った。
「俺も早く任務を済まして、ミラと…。」
「そうだお前!メルを虚空城に連れて行くつもりだったな。そうはいかぬぞ。」
 アルがキルを見て言ったが、それをメルが遮った。
「いや、僕はそこへ行かなければいけないんだ。」
「何故だ?」
 アルが不満そうに聞いた。
「僕の行動は全て、アカシアが見ている…。」
「そういう、わけの分からんもやもやした言い方をするな!はっきり言いなさい!」
 メルは、アルの方を見て微笑んだ。
「あ!何だその顔は。お前私を馬鹿にしてるな!?もう。」
 アルは膨れた。
「なんだかアル様、可愛いわね~。メル様と再会してから、すごーく嬉しそうだし。」
 ナツキが言った。ハルカも頷いた。
「強がっちゃってるけど、内心は嬉しくてしょうがないって感じね。」
「そうなのか?」
 アキトが言った。
「僕には、アル様がさっきからお怒りになられてるとしか…。」
「俺にも分かるぞ。アル様は喜んでるってな。」
「さすがトウマさんねー。アキト君はー、もう少し勉強した方がいいかも?」
「何を?」
「別に~。」
 ナツキは、上目遣いでアキトを見て微笑んだ。
「なんなんだよ…。」
 アキトはきょとんとしていた。
「ま、お前はそのままがいいってことだろう。」
 トウマも笑って言った。
 一方、少し離れた所では、キルがミラを口説いていた。
「…ってわけで、もう今後のことは考えてあるんだ。もしなれれば俺もグラナージになって、ジョブに就く。そして家をもらってそこでお前たちと暮らす。どうだ、いいだろう?」
「そんなわけには…。」
「じゃあ、お前らはどうやって暮らしてるってんだ。」
「森にはプラスマナがあります。それを少しずつ集めて、薬を作って売っています。」
「ふうん。そっか。その手があるのか。けど、あんまり稼げねえだろ。」
「私たちは、穏やかな生活が出来ればそれでいいんです。」
「そうか…。…そうだよな。だからこそ、俺は…。」
 キルが真剣な眼差しでミラを見た。ミラは恥ずかしそうに俯いた。
「ミラ…。」
 キルは、今にも気持ちがバクハツして、ミラを抱きしめたくなるのを必死にこらえていた。
「…まあ、悪魔に言われてもって感じだよな。グラナージになれたら、改めて…。」
「…キルさん…。」
 ミラが俯いたまま、口を開いた。
「私はキルさんを嫌いではないんです。でも…こうしていると…なんだか緊張してしまって。本当は…。」
 ミラは赤くなった頬を両手で押さえた。
 その様子を見て、たまらなくなったキルは、その場から離れた。
「キルさん…?」
 キルは、アルとメルの方へ近付いて行った。

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