グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#22
第22話「再会」
文字数 1,585文字
一方、メルは、猫耳族のミラと共に、森を過ぎて、洞窟の中を進んでいた。
悪魔のキルもその後を付けていた。
メルの姿は、顔以外もうほとんど毛むくじゃらの魔物だった。
「魔物化をどうすれば止められるのでしょう…。」
ミラが聞いた。
「いや、もうそんなことはどうでもいい。」
「えっ?」
ミラは、驚いたようにメルを見た。
「もう分かっているんだ。僕は…うっ!」
メルは苦しみ出した。
ミラが、いつものようにメルに口づけしようとすると、そこへ、キルが現れてメルを突き飛ばした。
「フン。そうはさせねえぜ。」
「悪魔…。」
メルは、苦しみながら、キルの方を見た。
キルは、メルに見せつけるように、ミラとキスした。
「ア、アル…!」
それが、メルには、アルとキルがキスしているように見えていた。
「妬けるか?ハハハッ!」
キルは、メルを鋭く睨んだ。
「俺だって同じ思いをしてるんだ。早くどこへでも行けばいい。」
「今の僕には結果しか見えない。どうやって行くのかも分からない…。」
「アカシアってのが見えるそうだな。まあ、俺にはどうでもいいことだが。」
メルは苦しそうに呼吸していた。ミラは、キルの様子を伺いながら、メルに口からマナを送り込んだ。
やっと、メルの呼吸が安定した。
「ここからは、俺が貴様を連れて行く。ミラ、もちろんお前も一緒だ。…待てよ…。」
キルは、耳を澄ましながら、何かを考えているようだった。
「貴様の連れが来たぜ。」
「アルならここに…。」
メルには、ミラがアルに見えていた。
「…そうだ、そいつがアルだ。」
何故かキルはそう言って姿を消した。
残されたミラは、戸惑ったようにメルを見た。
「アル。」
メルは、ミラを抱き寄せた。
魔物化したメルの目には、アルの幻しか見えていなかった。
メルの心には、アルへの愛情が溢れ出していた。
「メル!!」
そこへ、アルが現れた。
メルは、ミラを抱きしめてキスをしていた。
「貴様~~!!」
アルは怒り狂った。
「あれが…メル!?」
ハルカたちも、その様子を目撃した。
「うわ、いきなり大変なトコ見ちゃったね。」
ナツキは口に手を当てて驚きの表情をしてみせた。
「え?」
メルは、鬼の形相のアルを見て驚いていた。
「アルが二人!?」
「ざけんなーーー!!」
アルが叫びながら、メルたちの方へ突撃してきた。
ミラはそれを避けようとしたが、その必要はなかった。
アルは始めから、メルだけを狙っていた。
メルの頭に、アルのげんこつが当たった。
「痛!!」
「お前が猫耳族のミラだろう。メルバカが迷惑をかけてすまなかった。」
アルは、ミラに謝った。
「あれ!?なんでアルが…!…ミラ?そうか…僕は…。」
メルは頭を押さえながら、二人を見比べていた。
「フン。言い訳は聞かん。浮気したのは事実だからな。」
「ち、違う!」
「すみません!私が悪いんです!」
ミラがアルに向かって土下座した。
「悪魔の言うことを聞いてしまって…。」
「メル、お前どこに行こうとしてた?」
「それは…。」
「おい、そこにいるんだろう。悪魔。」
アルは、岩壁の影に隠れているキルに気付いていた。
仕方なしに、渋々とキルは出て来た。
「ま、面白いトコは見せてもらったよ。」
「…メルをどこに連れて行こうとしていた?」
「虚空城さ。」
「何!?アーリマンのもとへか!?」
「アーリマンね。まア俺みたいな下っ端は見たことないんだけどね。ボスの命令さ。」
「メルをそんな危険な所へ行かせるか!」
「アル。これは僕の使命なんだ。」
メルは、真剣な眼差しで、アルを見た。
「…アカシアで何を見たんだ?」
「それは言えない。」
「メル!」
アルは怒鳴った。
「メルさん!」
ハルカがメルの前に進み出た。
「君は?」
「私はハルカという人間です。そしてグラナージです。アル・マナとメル・マナを行き来しています。私は世界を助けたい。メルさんの助けになりたいんです。」