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グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#11

第11話「キルとミラ」

文字数 1,672文字

 話はしばらく前に遡る。
 猫耳族の少女ミラは、森の近くで、二歳下の弟ソラと二人で暮らしていた。
 そんなある日、ソラは真っ青な顔をして家に戻って来た。
「どうしたの!?ソラ??」
「…毒の霧を…吸ってしまったみたいだ…。」
「毒って…マイナスマナね!ここに横になって。」
 ソラは、ミラの敷いた布団に横たわった。
「私には、マナをためる力が…。」
 ミラは、ソラの口を開かせて、口移しでプラスマナを送り込んだ。
「姉さん…。なんだか少しラクになったような…。」
「今のはプラスマナを送り込んだの。私の体内の…。でも、これだけじゃマイナスマナは消えないわ。もっと集めないと…。」
 その様子を窺っていた男がいた。
 男は、ミラの後をつけた。
 ミラは外へ出て、森の中に来ると、目を閉じて、両手を広げた。そして、大きく口を開けた。
 するとどこからか、光の粒のようなものが、ミラの口の中へと入っていく。
「な…何やってんだ!?」
 男は思わず物陰から飛び出した。
「きゃあ!」
 驚いたミラは、その場に尻餅をついた。
「わりい。おどかすつもりはなかったんだが…。」
と男は、ミラに手を貸した。ミラはその手に捕まって立ち上がり、男と目が合った。
「あ…ありがとうございます。」
「お…おう…。」
 男は、下を向いたミラの方をじっと見ていた。
「…で、今何してたんだ?」
「マナを集めてたんです。」
「マナを?」
「ええ。私の弟が毒にやられて…。早くプラスマナをあげないと…。」
「ちょっと…見に行ってもいいか?」
「え?でも…。」
 ミラは男を見て、怪訝そうな顔をした。
 男は悪魔の姿をしていたのだ。それに気付いて、男は頭をかいた。
「あ、そっか。でも、別に何もしねえから。」
 ミラは答えずに、急いで弟の元に戻った。その後を男もついて行った。
「姉さん…。あっ!そいつ!」
 弟は、男の顔を見て叫んだ。
「毒の霧をあいつが撒いてたんだ!」
「まあ!…でも今は、ソラの方が先よ。」
 ミラは、先程と同じように、口移しでマナを与えた。
 ソラはすっかり良くなったようだった。
「ありがとう!姉さん!」
「良かったな。」
 男は笑って言った。
「何言ってるんだ!お前のせいだろ!」
 ソラは怒って言った。
「悪気でやったわけじゃねえんだ。ボスの命令でな…。ところで、オレはその姉ちゃんに用がある。」
 悪魔の男は、ミラの腕を強引に掴んで、風のように走り出した。ソラも追いかけたが、あまりの速さに追いつけなかった。
「どこへ行くのです!?」
「…ここまで来りゃいいか。」
 人気のない森の奥まで来ると、男は立ち止まり、ミラの方を振り返った。
「オレはキル。見ての通り悪魔だ。あんたの力を借りたい。」
「力?」
「その、マナを集める力とか、毒を治す力とか…。猫耳族には、時々、そういう力を持った奴がいるって話を聞いてな。探してたんだ。」
「…私は、マナを体の中にためることが出来るのです。勿論、プラスマナに限りますが。」
「もし、マイナスマナを吸ったらどうなる?」
「少量なら耐えられます。体内のプラスマナで浄化出来ますから。」
「そうか。そういうことか…。」
「なんです?」
「オレはボスに命令されてることがあるんだ。それを手伝ってほしい。いや、手伝え。さもないと、お前の弟がどうなるか…。」
「な…!私の弟をどうするというのです!?」
「わかんねえが、お前の返事次第だ。手伝え。」
「…どうすればいいのです?」
 キルは、計画をミラに話した。
「…どうして…?」
 ミラは戸惑ったように聞いた。
「ボスの命令なんだ。オレはそれしか知らねえ。」
「あなたのボスって、悪魔なんでしょう?何か悪いことを企んでいるのでは…。」
「これだけは言っておく。オレのボスは小さな悪魔なんかじゃない。そしてオレはただの下っ端。ただ命令を実行するだけのな。」
「そんなことして、あなたは何か得をするの?」
「オレはキルだ。損得とかじゃねーんだ。命令は命令だ。それで、オレの言う事を聞かなければ、お前の弟は嫌な目にあう。」
「分かりました。私も、それ以上は考えません。弟に危害を加えられるのは絶対に嫌ですから。」

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