グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#30
第30話「復活の呪文」
文字数 1,422文字
「ハルカ。本当にこれでいいのかな…。」
アキトが不安そうに聞いた。
「大丈夫よ。普通に暮らしていれば、そのうちテントウちゃんが迎えに来てくれるわ。」
「そのお迎えって、違う方のお迎えじゃないよね?」
「もちろん。」
ハルカたちは、アストラルスーツを脱いできたので、メル・マナには行けなくなっていた。
しかし、アル・マナでの日常を、前よりも大切にするようになっていた。
一方、メル・マナでは――。
「復活の呪文だ。」
「アル様!それがあるなら、最初から言って下されば…!」
テントウとアル、そしてメルが、グラナージ・アヌムの一室にいた。
「いや、これはだな、大きくマナを消費するから、おいそれとは使えないんだ。」
「でも、メル様だって、どうにかしてアカシアを書き換えれるんでしょう?それでミラを救えないんですか?」
「僕も、アルと同じだ。大きくマナを消費するからね、それに、あまり記憶に手をつけたくないんだ。」
「そんな。ミラのおかげでメル様は救われたんですよ!ミラを灰のままにしておいていいんですか!?」
テントウは怒っていた。
「大丈夫だ。私がミラの亡骸を抱きしめたとき、シャインを唱えておいたんだ。灰になったといっても、ミラは完全に死んだわけではない。今にチョウチョが、ミラの弟の居場所を教えてくれるだろう。そこで生き返らせる手筈だ。」
「良かった…。」
テントウは胸を撫で下ろした。
そして、チョウチョの案内で、アルたちは、ミラの家にやって来た。
そこには、弟のソラと、悪魔のキルがいた。
「お前ら…。」
キルは驚いて立ち上がった。
「え?キルさん、この方たちを知ってるんですか?」
「君がソラだね。僕はミラに救われたんだ。ミラは…。」
メルが、事の次第をソラに話した。
「そんなことが…。ああ、姉さん…。」
「大丈夫だ!このアル様が、姉さんを生き返らせてみせるからな!」
テントウが胸を張って言った。
「あっ、あなたはこの間の!テントウさんですよね。」
「テントウ。静かにしろ。復活の呪文は難しいんだ。集中したい。」
アルは、土間に大きな布を敷いて、その真ん中に、小さな壺からミラの灰を取り出した。
「アルメル…グラナージ…ネコミミゾク…リメル…リマナ…プラマイゼロ。」
アルは、厳かに復活の呪文を唱えた。
すると、ミラの灰がキラキラと光り出した。
その様子を、皆真剣に見入っていた。
光が強くなり、大きく眩しくなった。思わず皆、目をつぶった。
そして、目を開けると、敷かれた布の上に、ミラが横たわっていた。
「ミラ!!」
「姉さん!!」
キルは、ミラに近付こうとしたが、ソラに気付いて身を引いた。
ソラは、嬉しそうな泣き顔で、ミラに抱きついた。
「良かった!!」
「私は…?」
ミラは、不思議そうにしていた。
「覚えてねえのか。お前は、メルを助けようとして、自分の命まで与えてしまったんだよ。まあ、それでメルは助かって、今お前はアルの復活の呪文で生き返ったってわけだ。」
キルが説明した。
「…そうだったのですね。私は…あまり覚えていないのですが…どこか遠くに行って、メル様を助けようとしていたことは…なんとなく分かります。」
「本当に、ミラがいなければ、メルバカは今ここにいなかっただろう。ありがとう。」
アルとメルは、ミラに頭を下げた。
「そんな…。私はただ必死だっただけで…。」
ミラも頭を下げた。
「…そういえば、あいつらはどうなったかな。」
テントウは、セーブポイントに向かった。