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グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#15

第15話「シャイン」

文字数 1,313文字

 トウマが、銅の剣で魔物を殴りつけるようにした。
 続いて、いつもの作戦で、ナツキが囮になって逃げ回り、アカリが火を吐いて、魔物を火達磨にした。黒い毛にはすぐに炎が燃え移ったが、魔物は燃えながらこちらへ突進してきた。
「ナツキ!」
 ハルカがナツキをかばって前に出た。
 魔物の体から、ハルカに炎が燃え移った。
「きゃあああ!」
「ハルカ!!」
「キュア!」
 アキトが呪文を唱えた。しかし、炎は消えない。
「この場合は、キュアは効かない。火傷には、『バンヒール』だ。」
 テントウが唱えた。
「バンヒール!」
 すると、ハルカに燃え移った炎は消え、火傷も治った。
 魔物は火達磨になっても、平気な顔をしている。
「こいつの属性は闇だ。今までの魔物は無属性だったから火も効いたが、闇は火に強い。闇より強いのは光だ。光魔法『シャイン』を使うときだ。俺は攻撃魔法は使えない。早く唱えろ!」
「シャイン!」
 ナツキが唱えたが、何も起こらなかった。
「どういうこと?」
「光魔法は、術者の心に応じて発動する。」
「どういう意味よ!」
「シャイン!」
 トウマが唱えた。すると、光の柱のようなものが現れ、魔物に直撃した。だが、魔物を倒すほどではなかった。
「今度は僕が!シャイン!」
 アキトが唱えた。だが、ナツキと同様に、何も起こらなかった。
「だめか。シャインを使いこなせる者は、なかなかいない。だから今まで、誰も凶暴な魔物を倒した者がいないんだ…。」
「そんなに難しい魔法なの?」
 ナツキは不満そうに言った。
「あとハルカが残っている。ハルカ!」
「シャイン!」
 テントウの言葉で、反射的にハルカが唱えた。
 すると、大きな光の塊が生じて、大きな剣の形に変化した。
 そして、その大きな光の剣が、魔物の胸を突き刺した。
「グアアアアアア!!」
 魔物は大きな悲鳴を上げて、その場に倒れた。
「すごいぞ!あんなものを出せるとは!」
 テントウが驚いていた。
「え?シャインのお陰じゃないの?」
「魔法は、唱えた者の内にあるイメージが形になるんだ。」
「よし!最後のとどめ!」
 アキトがレーザーガンを撃とうとした。
「待て!」
 テントウが、虫の息となった魔物の前に躍り出た。
「何か手掛かりがないか…。」
 魔物の周りを飛び回っていたテントウは、魔物の口の中で、何かが光っているのを発見した。
「トウマ、魔物の口の中に何かがある。取り出してくれ。」
 トウマは、魔物の口の中に手を入れ、それを取り出した。
「そ…それは…!グラナージの機械心臓!!トウマ、それを大事に持っていてくれ。」
 テントウは、自分の体より少し小さいくらいの瓶を取り出した。
「これを開けて、中身を心臓に振りかけてみてくれ。」
 トウマは言われた通りにした。
 そこへハルカもやって来て、皆集まった。
 瓶からは、小さな光の粒がきらきらと輝きながら降り注ぎ、機械心臓に溶け込んだ。
 機械心臓はドクドクと動き始めた。
「これでよし!これを急いでアル様のもとに…!」
「待て。テントウ。魔物は…?」
 トウマが聞いた。
「魔物は大丈夫だ。そのうちマナに還る。それよりも、機械心臓の方が大事なんだ。急げ!」
 近くにあったセーブポイントから、皆はアルの図書館に向かった。

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