グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#20
第20話「時間の六角形」
文字数 1,168文字
アルとメル。
金のように、きらきらした音が鳴り響いていた。
ひとつの神が、ふたりになった。
ふたりは生まれた瞬間から夫婦だった。
世界をともに創り、自分たちがいるところをメル・マナ、もう一つのところをアル・マナと名付けた。
最初は何もなかったが、次第に色々な物が増えていった。
「僕は何でも覚えているんだ。君とふたりになったことも、その前のこともね。」
メルは言った。
「そうかー。私はあんまり覚えてないんだ。メルは賢いな。」
アルは草原に寝転がっていた。
「あのさー、メル。私…。」
アルは口ごもった。
「なんだい?」
メルは優しげな目でアルを見つめた。
「私たちは色々な物を作って、生んだけど…、私たちの子供というのも、どうだろうか?」
アルは少し恥ずかしそうに、頬を赤らめて言った。
それを見て、メルはくすっと笑った。
「な、何がおかしいんだ!」
「いや、そういえばそうだね。僕たちはそろそろ、親になってもおかしくない。」
「と、とにかく。私も親になりたいんだ。アル・マナで見たんだよ。人間が赤ん坊を抱いているのを。可愛かったなあ。」
「そうだね。僕らは世界を作るほうに必死で、自分たちのことまで考えてなかったね。」
メルは、アルに優しく口づけした…
「これがいい。」
青いとんがり帽子を被ったノームは、ひときわ強い輝きを放っている銀色の宝石を見つけた。
「これが時間の石さ。」
ノームはポケットにそれを入れた。
「あとは六角形だ。型をとって、それで終わりさ。」
ぴょんぴょん跳ねるようにして、ノームはどこかへ消えていった。
六角形の部屋は、ノームしか知らない。
どうやって行くのかも分からない。
そこでは時間もなく、ただ六角形の形があるだけだ。
ひとつではなく、無数に六角形の部屋が広がっていた。
ノームはそこで、ポケットから時間の石を取り出した。
すると、時間の石は勝手に六角形の形に変形した。
「これでよし。」
ノームは来たときのように、ぴょんぴょんと跳ねながら、やがて消えた。
「出来たぞ、ほい。」
青いとんがり帽子を被ったノームが、テントウのもとへやって来た。
鍵は一週間ほどで出来た。その間、ハルカたちはいつも通りの二世界生活をしていた。
「おう、これか。ありがとう。そうだ、アル様のもとへ行こう。褒めてもらえるかもしれないぞ。」
ノームは目を輝かせた。
「ああ、これが…。」
アルは、鍵を手にとった途端、どこか悲しげな表情を浮かべた。
「どうしました?」
テントウが聞いた。
「いや…何でもない。ノームよ、よくぞ鍵を作ってくれた。礼を言うぞ。これで私も、外に出られる…。」
アルは、小さなノームに顔を近付けて、頬にキスした。
ノームは真っ赤になって、そのまま固まった。
「本当によくやったな、テントウ。さて、私もお前たちの冒険に参加しようじゃないか!」