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グラナージ~機械仕掛けのメモリー~

第2話「告白」

文字数 2,341文字

 アキトは、ごく平凡な高校一年生の男子。
 彼は待っていた。放課後の校舎裏。告白スポットで知られている場所。
(ハルカ、遅いな…。しかしなんだってこんなトコに…まさか…。)
 ハルカは、彼の幼馴染だった。
 彼は次第に心臓がドキドキしてきた。日が傾き、暗くなってきた。
「ごめーん!ナツキとおしゃべりしてたら遅くなっちゃって!」
 彼に向かって大声で、息を切らしながら走ってきた少女。
 くりっとした目が印象的で、肩のところまで伸ばした黒髪がサラサラと風になびいている。
 ハルカだった。
「なんなんだよ…。話って…。」
 アキトはドキドキしながら、それだけを言った。
「あんたにも来てもらうわよ。」
 ハルカは、腰に手を当てて、有無を言わさないといった態度でアキトを見た。
「は?」
 アキトはそこで初めてハルカの方を見た。
「人に聞かれるとまずいからこんなトコに呼び出したの。あのね、私の部屋に、レイが出たの。」
「レイ?レイって、幽霊とか、お化けのこと?」
 内心がっかりしながら、アキトは言った。
「そうね。少し違うけど…魂って言った方がいいかな。とにかく、レイよ。」
「レイね。それが何?」
「キテ…キテ…って。ずっとその言葉ばかり繰り返してるの。怪しいと思わない?」
「ハルカの見間違いじゃねーの?だいたい、レイなんかいるのかよ。」
「あんたはそういうの信じてないからねー。そのくせ、UFOは信じるのに。何が違うの?」
「UFOは地球外生命体の乗り物だ。宇宙には他の生命体がいるんだ。」
「まあいいわ。とにかく、レイは部屋に居座ってて、消えてくれないのよ。だから、どうしたらいいかレイに聞いたの。そしたら、何人か友達を連れて来てほしいって言うの。そして、レイの住む所に連れてくんだって。ねえ、面白そうじゃない?」
「バカ言うな!レイの住む所って、死の世界だろ!死んだらどうすんだよ!」
「レイを信じないのに、死の世界はあると思ってるの?まあ、あるんだけどさ。」
「僕は嫌だね。死にたくない。」
「大丈夫よ。そのこともレイに聞いたから。死なないって。ゲーム世界みたいなものなんだって。そこがね、滅びそうになってるから、今レイたちが、こちらの世界に来て良さそうな人をスカウトして回ってるんだって。」
「ゲーム?」
「そこでは、魔法を使ったり、魔物と戦ったり仲良くしたり、まるでゲーム世界みたいなんだって。あたしたちは、そこの住人になればいいんだって。」
「それは面白そうだけどさ、こっちの世界はどうなるんだよ。」
「あくまでも、こっちが本体で、あっちはレイ体なんだって。寝ている間にあっちで生活して、あっちで眠りについたらこっちで起きるみたいな。だから、何も困ることはないんだって。」
「なんかムシが良すぎやしないか?」
「とにかく、レイに会ってみてよ。」

 ハルカの家に来ると、家の前には、ナツキとトウマがいた。
 ナツキはハルカの親友で、トウマはハルカの所属する剣道部の先輩だ。
「なんでトウマ先輩まで。」
 アキトはトウマにお辞儀をした。
「レイのことはハルカに聞いた。力になれればと思ってな。」
 トウマは、背が高く、くっきりした顔立ちをしていた。誠実な人柄も皆に信頼されていて、女子生徒からの人気ばかりでなく、男子からの人気も高い。
「あたしもハルカに聞いて~、楽しそうって思って。」
 ナツキは上目遣いでアキトを見つめた。アキトは目を逸らした。ナツキはアキトを気に入っていた。ショートヘアのナツキは可愛い顔をしていて、よくあざとい表情やポーズをとっていたが、どこか憎めない性格なので、友達も多かった。
「じゃあ皆も、レイのことは知ってんだね。」
「さあ、入って。レイに会いに行こう。」

 ハルカの部屋は、いかにも女子高生らしい、可愛らしい部屋だった。
 ぬいぐるみや、お花、キャラクターグッズなど、棚に綺麗に並べてあった。
 しかしその中で、奇妙に光った球体が、部屋の真ん中に浮かんでいた。
「さあ、皆を連れて来たわよ。」
「よし。」
 レイが言葉を発した。
「こいつ、しゃべるのか!?」
 アキトがびっくりして言った。他の皆も驚いていた。
「これからお前たちは、メル・マナという世界に行く。そこに行くために必要なのが、アストラルスーツだ。これを着ることで、眠りによって現世とメル・マナを行き来出来る。着るというより、繋ぐ、と言った方がいいかもな。お前たちはメル・マナでは、グラナージとして生活するんだからな。」
「グラナージ?」
「メル・マナの住人はグラナージ、つまり、機械生命体なんだ。背中にねじが付いている。そのねじが翼に変形して、空を飛ぶことも出来る。ねじの動力は世界を循環するマナだ。マナの力で、グラナージは永遠を生きることが出来る。」
「うーん…。キカイかあ…ロボットみたいなもの?」
「ロボットとは違う。とにかく、そこはあまり気にしなくていい。とにかく、背中にアストラルスーツを繋ぐから、一人ずつ俺の近くに来い。」
 まず、ハルカが前に出た。球体の近くにいくと、体が一瞬光って消えた。他の皆も同じだった。
「これでアストラルスーツを装着した。何も感じないだろうが、まあそんなもんだ。」
「私、何か変な服を着せられるのかと思ってたけど、そうじゃなくて良かった…。」
 ハルカは、自分が戦隊もののヒーロースーツを着ることを想像していた。
「これで準備が出来たな。そしたら、お前らで寝る時間を決めて、こっちに来てくれ。こっちってのは、俺の本来いるメル・マナのことだ。いいか、分かったか?」
「多分。」
「じゃあ、俺は待ってるからな。」
 球体は消えた。
「それじゃあ、寝る時間を合わせましょう。今夜の十時でどうかしら。」
 皆頷いた。
「じゃあ、これで解散。また夜にメル・マナで会おうね。」

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