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グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#19

第19話「鍵作りのノーム」

文字数 1,750文字

「ここには魔物はいないんでしょうねー?」
 ナツキはアカリの明かりを頼りにして、周りを用心深く見回していた。
「多分いない。一応、ノームの縄張りだからな。」
 テントウが言った。
「ノームは魔物じゃないの?」
「闇の眷属だ。魔物まではいかない。なんというか…敵でも味方でもない奴らって感じだな。」
「ふうん。そういうグレーな存在もいるんだ。」
「どこにでもいるだろう。アル・マナにも。」
「そうねー。あたしも、シャインを使えないのがショックだったけどー、ハルカみたいなのがむしろ貴重っていうかー。」
「まだ気にしてんのか?シャインを使えない戦士や魔法使いも多いぞ。それだけ、光属性の魔法や攻撃は難しいってことなんだ。確かに、ハルカには驚いたが…。」
「それよりさ、ふと思ったんだけど、アルとメルが王様ってことは、大臣とか家来とかはいないのか?王を守る騎士とか…。」
 トウマがテントウに聞いた。
「まあ、機械虫がその役目をしているようなものだ。」
「だが、機械虫は戦えないんだろう。アルとメルは誰が守るんだ?」
「アル様のお考えで、特別に王様を守る騎士とか組織といったものはないんだ。そういうものを作ってしまうと、面倒なことになるとかで。それに、アル様はお強いんだ。メル様は…だが。」
「そこを悪魔に狙われたのか…。」
「いや、しかしメル様にはアカシアの知識がある。危険があれば察知して避けることは出来るはずなんだが…。」
 とりとめのない会話をしながら進んで行くと、奥から何やら騒がしい声が聞こえてきた。
 何かを掘り出しているような、金属音も鳴り響いていた。
 そちらへ行くと、急に開けた所に出た。天井が見えないくらいに上まで広がっていて、螺旋状の階段が上から下まで伸びていた。丸くなった壁に沿って廊下があって、所々に小さい人のような、様々な色のとんがり帽子を被った者がいて、ツルハシで土壁を掘ったり、粘土をこねたり、何かを作っているようにみえた。
「や!ノームたちだ。」
「なんかうるさいけど…ケンカでもしてるのかなー?」
「奴らの言葉遣いが荒いだけだ。これが普通。…ヤマさん、皆準備はいいかな?」
 テントウが、後ろの方を歩いていた三匹の機械虫たちに合図した。
 機械虫たちは頷いた。
「よし。…おい!おーい!!」
 テントウは、ノームたちに向かって大声を張り上げた。
「なんだあ?テントウじゃねーか!おみやげでも持ってきたのかあ?」
 赤いとんがり帽子を被ったノームの一人が、いそいそと近寄ってきた。
 ノームの顔は皺だらけで、老人のようだったが、弱々しいところはなく、むしろ元気に溢れているように見える。
「何もねえよ。今日は、頼みがあって来たんだ。」
「なんでえ。けち!頼みってなんだ?報酬次第だぜ。」
「報酬ね…。まあ、聞いてくれよ。アル様の命令なんだ。」
「アル様の…!?」
 しかめっ面だったノームの顔が一気にほころんだ。
「アル様がついにわしらを…?」
「何を期待してんだか知らねーが、とにかく、鍵を作ってほしいんだ。グラナージ・アヌムのな。」
「鍵!?それもグラナージ・アヌムの!?」
 ノームは驚いたように言って、腕を組んだ。
「そうなると…これは難しい命令だな。鍵を作るには、型を取りに六角形の部屋に入らなくちゃならんし、時間の石も必要だ。かなりの高額依頼になるな。」
「命令だと言ったろう。報酬はなしだ。」
「なに!?報酬がないとは話にならん!!いくらアル様の命令でもな。貴様六角形の部屋に入ったことがあるか!?頭がおかしくなるぞ。時間の石も見つけるのに何時間もかかるんだ。いや、時間の石なんてもうないかもしれん。とにかくこの話は終わりだ。」
「待て!」
 テントウは振り向いて、三匹に合図した。
 すると、三匹の機械虫がノームの前に進み出た。
「な…なんでえお前ら。」
 ノームの声が少し震えていた。カエルもクモも強面で、ノームは彼らに弱いのだ。
「テントウと、アル様の言う事を聞くんだ。さもないと…。」
 カエルとクモがヤママユガの方を見た。
 ヤママユガは、羽をばさっと広げてみせた。
「ぎゃーーーーーー!!」
 ノームは失神して倒れた。
「やりすぎだ!気絶したら話が出来ないだろう。」
 テントウは、倒れたノームの頬を軽く叩いた。
「すみません。」
 ヤママユガは謝った。

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