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グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#17

第17話「鍵」

文字数 1,434文字

「…今まで気にしたことがなかったんですが…。魔物を倒して灰にするって…残酷なことですね。現世でそういうゲームをしていて慣れてたけど、実際にやってみると…なんか…。」
「ハルカは優しいのだな。」
 アルは微笑んだ。
「だが、そのことはそこまで真剣に考えなくともよいぞ。魔物の多くはフレンドリーで敵意もない、可愛い奴らだが、中には、マイナスマナの影響で、悪い魔物になってしまったものもいる。そういう魔物にも生きる権利はあるが、やはり悪さをする魔物は懲らしめねばならん。そういう魔物には、一旦灰になってもらい、マナの中で生まれ変わってもらう。『倒す』とは、そういうことだ。『再生』させるというか。だから、そこまで深く考えずともよいのだ。」
「生まれ変わる…。」
「うむ。このメル・マナでは魔物が生まれ変わったり、グラナージが生まれ変わるのは日常茶飯事だ。グラナージの場合は、機械心臓が古くなったから取り替えるとか、その程度のことだが。アル・マナの常識とは違うということだ。」
「そうなんですね。」
 やっと、ハルカの顔に笑顔が戻った。
「そうだ。魔物は好きで暴れてるわけじゃない。マイナスマナに狂わされてるだけなんだ。それを倒して灰にして、生まれ変わらせるのが戦いの目的だ。」
 テントウも言った。
「アル様。危険は回避できるように、アストラルスーツを整備してありますし、大丈夫ですよ。こいつらに、メル様の捜索を任せてもよいのでは?」
 何故かテントウは、誇らしげに言った。
「アストラルスーツ。…そうだな…。テントウが連れて来た者たちなら、出来るかもしれん。…それにしても、ハルカの心がけは素晴らしい。倒すべき相手にも敬意と慈悲の心を持つこと。ただ戦うのではなく、敵にも心があるということ。それをお前は、私に改めて教えてくれた。礼を言うぞ。」
 アルはにっこりと笑った。
「そんな、教えるなんて…。私が部活動で常に心に刻んでいることです。」
「ブカツドウ?」
「あ、はい。私は、高校で剣道という部活をしているんです。トウマ先輩も。」
「ふーん。…一度、私もアル・マナに行ってみたいものだな。」
「アル様は行けないのですか?ああ、そうか。ここから出ることは出来ないから…。」
「そうだ!それを忘れていた。鍵だ!きっと、メルの奴が持ち出したんだ。最終的に、私を守るために。あいつのしそうなことだ。新たな鍵を作ろう。そしてメルのもとに私も行く。」
 アルは立ち上がった。
「え!鍵を作る??」
 テントウが驚いたように言った。
「うむ。このグラナージ・アヌム全体を守る鍵だ。それを作るのはかなり難しいことだが、不可能ではない。テントウ。『鍵作りのノーム』に頼んでほしい。」
「ええ!?あのノームたちに?あいつらは闇の眷属ですよ。素直に言う事を聞くかどうか…。」
「ノーム?」
 ナツキは首を傾げた。
「こびとのことだ。ずる賢くて用心深くて、抜け目がない奴らなんだ。俺なんかが交渉に行ったところで、奴らに何をされるか…第一、機械虫でも俺みたいな飛ぶやつは、地下が苦手なんだ。」
「へーえ、ノームって地下に住んでるの。」
「そうだな…カエルとクモに頼んで行ってもらうか。俺は交渉向きじゃないからな。すぐに頭に血が昇っちまうし。そうだ、あとヤママユガもいれば、奴らビビるかもな。」
「ヤママユガ…って、あの大きな蛾!?いやあ!」
 ハルカは背筋がゾクッとした。ハルカは、蛾が苦手だった。
「お前も怖いんだな。それなら、奴らも怖がるだろう。ヒヒヒ。」

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