グラナージ~機械仕掛けのメモリー~#31
第31話「マナに満ちた世界」
文字数 1,725文字
「キテ…キテ…。」
ハルカの部屋に、光の球体が現れた。
ちょうど寝ようとしていたハルカは、それを見つけて、すぐさまナツキたちに連絡した。
「テントウちゃんね。その、キテ、キテ…って、何かの呪文なの?」
「呪文じゃねえ!とにかくこっちに来いってことだ!」
「はいはい。」
ハルカは、光の球体に触れた。
そして、再びアストラルスーツを身に付けた。
「テントウちゃん、他の皆にも行ってあげてね。」
「だめだ。お前の部屋にしか繋がらない。他の奴らの居場所を探すのは時間がかかる。」
「どういうこと?」
「こっちからアル・マナに行くのは簡単なことじゃなくてな。とにかく、お前の家に集合させろ。」
「うーん。分かった。」
夜遅い時間だが、どうにか親に適当なわけを説明して、三人に来てもらった。
「メル・マナから帰ったときは自分たちのベッドにいるわけだから、問題ないでしょ。」
ナツキが言った。
「でも、親に変に思われるんじゃ?どうやって二階から玄関に行って帰ったのかとか。」
アキトはびくびくしていた。
「大丈夫よ。そんな細かいことは気にしない人たちだから。」
ハルカが言った。
「おい!皆そろったな。こっちに来い。アストラルスーツをつけてやる。」
四人は全員、アストラルスーツを身に付けた。
「よし!じゃあ、まず適当に寝ろ。」
ハルカとナツキがベッドに入り、カーペットを敷いた床でアキトとトウマが横になった。
これで、メル・マナへ行く準備が整った。
間もなく眠りについた四人は、見慣れたメル・マナの家で目覚めた。
離れていたのは一週間ほどだったが、それよりも長く感じた。
「なんか、懐かしいわね…。」
外へ出て、ハルカが言った。
「ねーねー?なーんか違くない?」
ナツキが、辺りの景色を見渡して、言った。
確かに何かが変わっていた。
景色じたいには変化はない。しかし、何かが違っていた。
「いつもと同じじゃね?」
「アキト君はー、ニブイから。トウマさんは気付いてるよねー?」
「ああ。プラスマナの光が溢れてるな。まあ、マイナスマナも潜んでいるが。でも、それでいいんだろうな。」
「そうね。光と闇が世界を生かしているのよね。どっちかだけじゃなくて。」
「ハルカの言う通りだ。」
テントウがどこからともなく現れた。
「メル様も元に戻ったし、ミラも生き返ったし、これで万々歳だな。」
「え!?ミラが生き返ったの!やったね!」
「それってまさか…アカシアを書き換えたとか?」
アキトが言った。
「いや。メル様はアカシアを書き換えたりしなかった。アル様のとっておきの魔法、復活の呪文でミラが生き返ったんだ。」
「あ!知ってる。復活の呪文。」
「なんだ?ハルカ。お前が知ってるわけがないだろう。アル様しか知らない魔法なんだ。」
「ふふ。そうね。でもメル・マナは、アル・マナの想像が形になるんでしょう?」
「…不思議なんだ。お前たちがいなくなったってのに、その後、プラスマナが急速に増え出してな。そのおかげで、メル様がアカシアを書き換えなくて済んだんだ。」
「え?メル様はアカシアをどう書き換えるつもりだったの?」
「アーリマンに脅されてな。アル・マナを作り変える…つまり、一旦今のアル・マナを壊して、再び別のアル・マナを作ろうとしていたんだ。そんなことを繰り返したらキリがないのに。」
「そんなことをしたら、私たちの世界がなくなるってことでしょう?それに、私たちも。」
「そうだ。アーリマンにとっては、お前たちが誰だろうが関係ない。人間のマイナスマナを吸い取って生きているからな。だが、どういうわけか、メル様と仲良くなってたな…。」
「ねえ、そんなことより、ミラに会いたいわ。」
「あたしもー。」
アキトとトウマも頷いた。
「よし!それじゃあミラの家の近くのポイントにワープで行こう。」
「待って!ちょっとお店に寄って、花束でも買ってミラにプレゼントしたいわ。」
「そうだな。何かプレゼントするのも、好感度を上げることが出来ていいだろう。」
「テントウちゃん。そういうのは今はいいの。ただの気持ちなんだから。」
ハルカが笑って言った。
「つい、チュートリアル口調が出ちまったぜ。今のは野暮だったな。」
テントウも笑った。
世界はこれからも続いていく。