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牝馬に似ているね、君
なかなかない、お褒め?の言葉をいただいたことがある。
リゾートや会員制のフィットネスクラブなどでボディケアをしていた時代があった。その頃は普段の生活でお目にかかれないような方々と出会う事も多く、そんな環境の中で働くのはとても楽しかったし、日々の会話がとても勉強になったのを覚えている。
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その日、フットマッサージを担当していたお客様にこう言われた。
「牝馬(ひんば)の〇〇に似ているよ君」
耳を疑った。なにせ過去一度たりとも馬に似ているなんて言われたことがない。なんといっても私の顔は「丸顔」だ。
『え?私でしょうか?』
その方は笑って
「いや顔じゃないよ。姿勢っていうか雰囲気がね。な?」
隣にいた関西出身であろう奥様が話を振られ、ホンマやなーと答えていた。突拍子もない言葉に若干動揺して〇〇の部分は飛んでしまったが、牝馬(ひんば)と言われたのは確かだった。。。冗談なのか、褒め言葉なのか??よくわからなかったが「なんかありがとうございます」と とりあえず 答えた。
「いや、この人な、馬の調教やってんねん、もう長いこと。だからね」
そう言って奥様が微笑んだ。その方は、厩舎を経営されている調教師さんとその奥様であると判明した。過去はわからないけれど、小柄な体格やふくらはぎの筋肉から、おそらく競走馬とかに乗ってたのかな、と勝手な想像をしてみる。過去はともかく、とにかく調教師さんと分かれば、牝馬に似ていると言われたことが断然興味深くなっていた。
「自然界の馬はね、牝馬がハーレム作っててリーダーが3ー4匹いてね、その2番手のリーダー〇〇に似てるなと思って、ついね。それぞれのリーダーにそれぞれの呼び名が付いててね、1番手が〇〇、2番手が〇〇、、、、」
色々と教えてくれたと思う。でも個々のリーダーの呼び名は外国名で聞き慣れないものばかりで忘れてしまったし、馬の集団特性についても知らなかったので詳しく覚えていないが、とにかく、はっきりと覚えていたのは「2番手のリーダーに似ている」と言われたことだ。
2番手か。確かに、私は2番手が好きだ。なんとなく今までも、サブのポジションにばかりいたような気もしないでもない。性格上、補佐的な役割のが向いていると自分なりにも思うし、リーダーや頑張ってる人をサポートするのはとても好きだ。言葉を話さない馬達と信頼関係を構築し、その馬達に教育をし続けている調教師さん。きっと優しくも鋭い心の眼をもっているであろう方から言われた言葉。2番手で生きてきた自分を認めていただいてるようで、少し嬉しく感じてしまった。
コロラド州のカウボーイの町では、夏の間、毎週ロデオ大会が行われている。コロラドの近隣の州から本物のカウボーイ、カウガール達が集まり、ロデオやその他の技術を競う、レベルが高いロデオとして地元の恒例イベントになっている(ヘッダーの写真はその大会時のものです)。大会以外でも普段から近所を散歩すれば、広大な庭で飼われている優しい目のお馬さん達に頻繁にお目にかかれる環境だ。
目の前で颯爽と走る馬達の姿は迫力もあるが、澄んだ瞳はなんだかとても愛らしい。娘と散歩しながらお馬さん達を見ていたら、ふとあの頃のエピソードを想い出し少し誇らしげな気持ちになった。真意は何だったのかわからないけれど。。
港町ばかりに惹かれてきた私。過去性は絶対、船に乗って色々と点在して旅していた!と小さい頃から思い込んでいた子供だった。だからか、港町に縁があるたびに哀愁を感じては呼ばれていると思い込んでしまう節が今だにあったりする。なのになぜ?私は今、海のないコロラドに今居るのか?などと、出ない答えを悶々と考え巡らせたりしているのだが、今日その答えらしきものが出たような気がする。
きっと馬だったんだな、私(笑)
おしまい