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年金改正の狙いは70歳支給開始への布石なのか?

「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が令和2年6月5日公布になった。

何だか難しそうだが、簡単に言えば5年に1度の年金制度改革が決定したということである。

ポイントは大きく分けて4つになる。
その改定点を説明して、最後にその改定の意図を探ってみたいと思う。

①被用者保険の適用拡大
週20時間を超える短時間度労働者にも厚生年金の加入が義務付けられる。
まず、2020年6月から501人以上の会社が該当になる。
そして段階的に規模が小さくなってくる。
2022年10月からは101人以上に。
2024年10月からは51人以上に。
そしてやがては全事業所が対象になるかもしれない。

ここで懸念されるのが、今までパートなどで扶養の範囲で働いていた人も将来の年金はプラスされるだろうが、厚生年金加入となると手取りが下がる。
喜ぶべきか悲しむべきかはわからないが、政府の狙いは加入者を増やして年金財政を安定させることだ。

これまでの第3号被保険者は絶滅危惧種になるかのように激減するだろう。

②在職中の年金受給の在り方の見直し
60~64歳の在職老齢年金制度について現行ではその間に収入はあれば年金がカットされる。
その収入金額が28万円だった。
それが47万円に増額される。

これは、60歳定年制が65歳に伸びたり、60歳退職後も再雇用などで仕事をするようになったので年金カットがあるために雇用の妨げとなっていた。

これで心置きなく65歳、または70歳まで働ける環境が整った。
しかし、思考や体力的に70歳まで仕事を続けられるかは微妙ではあるが、これからは70歳までも続けられる仕事に段階的にシフトしていく必要があるだろう。

③受給開始時期の選択肢の拡大
現状は年金支給開始は65歳である。
その支給開始を65歳から70歳まで繰り下げて支給することが出来る。
逆に60歳から繰り上げて支給することも可能だ。

65歳からの支給を繰り下げると1カ月当たり0.7%加算される。
70歳支給開始だと42%加算されていた。

この繰り下げ支給が70歳から75歳に伸びた。
加算額も最大84%になる。

また、繰上げ支給も1カ月当たり0.5%の減額から0.4%の減額になる。
これは少し得だが、今は繰上げ支給を希望する人がほとんどいないので実際はあまり効果はないようだ。

この支給開始年齢の引き上げに伴って、企業型確定拠出年金(DC)や都塵型確定拠出年(iDeCo)も75歳まで引き上げになる。

④確定拠出年金の加入可能要件の見直し
現在の企業型確定拠出年金(DC)を利用している人が個人型確定拠出年金(iDeCo)を併用して利用したい場合は、企業での確定拠出年金に規約を変更しなければならなかった。

しかし、今回の変更で、企業の規約を変更せずにiDeCoを利用することが可能になった。
これにより、iDeCoでの老後資産づくりの障害となった企業の規約は気にせずに済むようになりマッチング制度に縛られることもなくなった。

この施行は2022年4月から。
https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636614.pdf


今回の改正の本当の狙いは?

他にも多少に変更点はあるが、この4つのポイントを見ただけでも確実に言えることは、「国民よ!もっと長くまで働け!」と言わんばかりの様だ。

年金財政は常にひっ迫している。
決して運用が盤石ではない。
それよりも人口減少により加入率は下がる中で、支給は増えていく。

政府の年金問題は聖域と言えよう。
過去に年金問題で自民党は政権を失った。
そのトラウマは今でも残っている。
なので大改革は政権の命取りになり兼ねない。

とはいうものの年金財政に余裕はない。
なんとしても財政を安定させるには収入よりも出口を抑えることだ。
その改善策は一つしかない。

それは、年金支給を70歳にすることだ!

このための布石が今回の年金改革だろう。
5年後に再度年金改革は行われる。
その時には70歳支給案が出てくるだろう。
出てこない場合は消費税アップで考えるつもりかもしれない。
しかし、これでは一時しのぎにしかならず、抜本的な解決にはならない。

そうなると、70歳に支給年齢を延ばすしか方法はないようだ。
そのために長くまで働かせる環境を整えるのが今回の改正の様だ。

大事なことは、国の年金制度に依存することなく、自力でも準備するのが得策だろう。

その準備は直ぐにでも始めないと間に合わないかもしれない。
何故なら時間こそが誰にでも与えられた平等の資産だから。


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