祖母から手紙を返品されたことがあるだろうか
昔、祖母に「誕生日おめでとう」のお手紙を書いたことがある。
祖母は近所の同い年くらいのおばあさん仲間といつも3人で遊んでいて、みんなで集まってはお菓子を食べて楽しんでいるようだった。
「おばあちゃんに仲良しのお友だちがいて、嬉しいよ、これからも元気でいてね。」
私が書いたのはそんな内容のお手紙だったと思う。
ピンク色のかわいらしいキャラクターの封筒に入れて、祖母の部屋に行った。
「お誕生日、おめでとう、これ」と言いながら封筒を渡すと祖母はびっくりしつつも嬉しそうな顔で受け取った。
「ありがとう、ありがとう」そう言いながら、封筒をしっかり握ってくれた。
しかし、驚くことに祖母は
「ありがとう、受け取った、1回受け取った、じゃ、返すわ」
と言って封筒を開けもせずに私に返してきたのだ。
それも、にこにこと。
一生懸命用意したプレゼントを笑顔で受け取り、笑顔で突き返された経験はあるだろうか。
私はその場に固まってしまった。
返す、とは、どういうことか。
一応、かわいい孫からのお手紙なわけだ。
「中身は金だろ?」
固まった私に向かって祖母は言う。
どうやら彼女は「誕生日プレゼント」の封筒の中身はお金だと思ったらしい。
そして、「お金は自分で持っておきな」という意味で私に返そうとしたわけだ。
「お金」を渡されて「自分で持っておきなさい」と言うのは分かる。特に孫からもらったならなおさらだ。
けれど、私は中身がお金だなんて一言も言ってないし、そもそも入ってすらない。
祖母は「何か物をもらった→封筒だ→金だ!」という思考の持ち主だったわけだ。
「それ…手紙なんだけど…」
私がそう言うと
「手紙か、そっか」とつまらなそうに受け取ってくれた。
私が自室に戻って1人で過ごしていると祖母がやってきた。
「手紙読んだけどな、最近、ワシ、あの人たちと仲良くないぞ」
祖母はそう言って、去っていった。
今もたまに祖母に手紙を書くけど、「大して喜んでないだろな。まぁ暇つぶしにしてくれたらいいか。」と思いながら書いている。
そして当然、金は入れていない。
書いた人(絵と文)
なつめももこ/webライター、管理栄養士
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