押してダメなら、どうするか。
自分の決意を反対された時。どうしましょうか。
これは私の意思に反対した父の気持ちが変わった時のお話です。
父、反対する
20代半ばを超え、30代が見え始めてきた頃、私は進学を決意した。
管理栄養士の資格を取ろうと思ったのだ。
しかし、管理栄養士の資格を取るには最短で4年制の学校を卒業するか、もしくは2年制の学校を卒業後に3年間の実務経験を積む必要があった。
アラサーの私に「4年(もしくは5年)」という時間の重さがのしかかり、ひるみそうになる。
なんとかして「夜間制」「通信制」など社会人を続けながら資格を取る方法がないかと考えたが、どうやら「全日制の学校に4年(もしくは2年)」行くしか方法がないようだった。
それでも私は学びたいと思ったので、「来年から4年制の学校に行きたい」と親に報告した。
そして、あっさりと反対された。
親からすればこの先の4年は結婚して出産して、家族で仲良く暮らす、そんな娘の未来を勝手に想像し、願っていたところであろう。
それがまさか4年も学校に行きたいとは。
反対されても仕方がなかったとは思う。
ところが、話をしてから数日経った頃に「分かった、応援する」と、全く逆の返事が返ってきた。
「いろいろ考えてくれたのかな?」、その程度にしか思わなかったが、親の考えが変わったのにはある女性の言葉が大きく影響していたということを私はのちに知ることになる。
喫茶店の、りっちゃん
父の親戚に喫茶店を営むおばさんがいる。父は苦労していた学生時代から社会人になってもおばさんにとてもよくしてもらっていたそうだ。
そのため住んでいる場所は遠く離れていたけれど、父は大人になってもおばさんとの交流を欠かさなかった。
四季折々の写真を撮って印刷した葉書に近況をしたためたり、遠方に住むおばさんの家に顔を出したり…。父がおばさんを大切にするので、私も自然とおばさんと仲良くなっていた。
父は、私の進学希望の話をおばさんにも伝えたようだった。
「娘が、今更、学校に行きたいと言っている」と。
おばさんは自分が営む喫茶店のアルバイトの女の子にその話をしたらしい。
彼女はりっちゃんという。りっちゃんは私より2~3歳上だったと思うが、同じ「アラサー」の女性だった。
「えーー!今から学校?絶対行きたくない。今から勉強しようって思えるのがすごいわぁ!」
りっちゃんは素直にそう言ったらしい。
おばさんはそのままりっちゃんの言葉を私の父に伝えた。
「30代になろうかという頃に、勉強をしてみようと思えたその気持ちがすごい」
と、りっちゃんの言葉は素直に父に響いたようだ。
そして、私に「応援する」と伝えてくれることとなった。
他者からの視点
私1人でどんなに「学校へ行きたい」と言っても父は納得しなかったのではないかと思う。
私の自由なので、止めることまではしないにしてもおそらく「しぶしぶ」としか受け入れてくれなかったのではなかろうか。
それが「応援する」というだけでなく「お金に困ったらできることはする」とまで言ってくれたのはりっちゃんの言葉のおかけであろう。
他者からの視点というのは、違う角度でものごとを見るきっかになる。
相手の理解を得たい時、了承してほしい時、自分の意見だけでなく他者からも何か伝えてもらえると相手も受け入れやすくなることがあるようだ。
人は相手と意見や考え方が違って当然。
その中で相手の気持ちを理解し、あゆみよって関係を築いている。
それでもやはり意見が食い違い、受け入れられない時も多々あるわけで。逆にそれの方が当たり前なわけで…。
そんな風に意見が食い違う2人の間に、ふらっと第三者が現れる。
3つ目の意見が加わる。
そうしていい結果に結びつくことがある。
りっちゃんもまさか自分が言った言葉で1人のおじさんの考え方がくるっと方向転換したことなど知らないだろう。
言葉って、おもしろい。
言葉そのものだけでなく、「誰が言ったか」ということでも世界がぐるりと変わるのだ。
書いた人(絵と文)
なつめももこ/webライター、管理栄養士
noteには私の日常、過去のこと、考えていることをゆるゆると綴っています。
今日ものんびりと、どうぞ。
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