夫をコントロールするたった1つの言葉
私は途方に暮れていた。
引っ越しの日までにもう時間がないというの荷造りが進まない。
進まない理由は明らかで、夫が全然荷造りをする様子がないこと。
夫と私の荷物が混在していて作業を進めにくいこと。
できれば不要なものを手離して新居へ行きたいけれど、夫の物を勝手に捨てるわけにはいかないこと。
と、まぁ、夫が夫が、と人のせいみたいに書いてみたけどそもそも私も集中力がないから荷造り作業にすぐ飽きてしまうのも問題だ。
せっかくだから好きなものを見ながら荷造りをしよう、とYouTubeをつけてみると結局ただYouTubeを見てるだけの時間になってしまう。
そこで私は叫んだ。
「アレクサ!30分のタイマーをかけて!」
これが夫をコントロールする言葉になるとも知らずに。
アレクサ!30分のタイマーをかけて!
私はアレクサのアラームが鳴るまでの30分はとにかく荷造りをすると決めた。30分!30分は集中しよう!
リビングでTwitterばっかりやってる夫を無視して黙々と作業する。
アラームが鳴ったら休憩する。
また、アレクサに30分のアラームをかける。
私が繰り返していると夫も一緒に荷造りをし始めた。
「次の30分が終わったらおやつでも食べよっか」
そんな風に声をかけながら私たちはその日、30分単位でタイマーをかけて荷造りを進めたのだった。
パブロフの犬
それからまた1週間経ち週末がやってきた。夫も仕事が休みで1日家にいる。
今日もまた、荷造りを進めなければいけない。
けれど私たちは2人ともリビングのテーブルで向かい合って座っているだけだった。
もう荷造りは面倒くさい。やりたくない。
私はそんなことを考えていた。
夫は相変わらずのんきにTwitterを見ている。
Twitterを見始めた夫はなかなか動き出さないことを私は知っている。
荷造りが進まなくて困るのは夫だって同じはずだ。
この人は自発的に動くということはないのかね?私は疑問とちょっとした怒りを覚えた。
そんな時、私はふと思いついて
「アレクサ!30分のタイマーをかけて!」
と叫んでみた。
もちろん私は動く気はない。
ただ、「アレクサ!30分のタイマーをかけて!」と言ってみただけ。
でも夫は、それを聞いた瞬間にスマホをテーブルに置き、がたっ!と立ちあがり段ボールの方へ向かっていった。
私は相変わらず椅子に座ったままで、首だけ動かして夫の方を見る。
「すげぇ」
と言ってにやにやして笑うのを止められなかった。
夫の中で「アレクサ!30分のタイマーをかけて!」が「荷造りするよ!(しなくちゃいけないよ!)」の合図になっているわけだ。
このまま放っておこうかと思ったけれど、かわいそうなので私も立ち上がって一緒に荷造りを始めた。
パブロフの犬(条件に反射する)、ってこういうことだったな、と思い出しながら。
人は簡単にコントロールできてしまうものらしい。
条件のないパブロフの犬
この頃から約1年経ち、私は今「ポモドーロテクニック」を使って記事を書くようにしている。
25分書いて、5分休憩、25分書いて、5分休憩、しばらく繰り返したら長めに休憩(午前中からとりかかるとちょうどお昼休憩くらいになる)という時間管理の方法だ。
私は毎回「アレクサ!25分のタイマーをかけて!」と叫んでいる。
「アレクサ!30分のタイマーをかけて!」という声を聞いただけで、立ち上がり、荷造りを始めた夫のように私もこの言葉をスイッチにして自然に文章を書くモードに入りたい。
そう思っているが、叫んでいるのが自分だからか、そういう下心があるからか、あの時の機械式に動き出した夫のような切り替えはできない。
私と同じく在宅勤務の夫は横で相変わらず「アレクサ!25分のタイマーをかけて!」の声を聞きながら働いている。
どうやら彼も知らないうちに私に便乗してポロモードテクニックの時間管理を使っているようだ。私がアレクサに叫ぶと共に夫も25分集中して5分休憩するようになったのだ。
ある時、私がタイマーをかけ忘れた時があった。
”あっ!タイマーしてないな…、まぁ、仕事じゃなくてnoteの記事書いてるだけだから、いっか!”と私はタイマーなしでそのままPCに向かっていた。
すると夫が「あれ?タイマーならなくない?」と不思議そうに言ってくるではないか。
私が「今、かけてないよ」と答えると
「え!今、集中してやってたのにタイマー中じゃなかったの?!」とショックを受けていた。
どうやら彼は「アレクサ!」の号令がなくても勝手に25分5分のサイクルをやってしまっていたらしい。
彼の場合、号令とかコントロールとかそういう次元ではないことを私は知った。
条件がないのに反射できるとは…、どえらい発見をしたような気分である。
実験協力
夫が座ったまま動かない
子供が勉強しない
家族が部屋を片付けない など
そんなお悩みがある方はぜひアレクサに叫んで自ら動いてみて欲しい。
相手もつられて動くかもしれない。
そしてそれを繰り返してるうちに相手は合図なしに動き出すようになるかもしれない。
うちの夫のようにかけてもないタイマーにつられて動く人がいるのかどうか、ぜひ知りたいところである。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?