1分短編 #23「哀しい笑顔」

#23 「哀しい笑顔」

「頑張れ」とか「頑張ろう」とか、
そんな簡単に言わないでほしい。

辛い、しんどいと零した僕を見捨てず、声を掛けてくれた唯一の友人にそう言い放ってしまった。
後悔はしている。友人はひどく傷付いた顔をしたから。でも、本心であることに変わりはなかった。頑張れていたら苦労していない、と思う。努力は才能なのだ。意志の弱い僕にはその努力する才能がない。だから頑張りたいと思っているのに、何も出来ない。飽きてしまったり諦めてしまったり、何も成し遂げられない。
昔からそうだった。学校の勉強も、習い事のピアノも、受験勉強も。最初の躓きを解消しようともせず、敵前逃亡してきた。何の因果か、努力している風を装うのは得意だったから、周りの目はただのアホの子だと誤魔化せていた。でも実際は、やっても出来ないのではなく、やることすら出来ない、であった。

一度放った言葉は取り消せない。だから僕は友人に、弁明するかのように自分の思いを語った。友人に口を挟む隙を与えず、立て板に水を流すようだったことだろう。
自分から言い放ったくせに、僕は友人の顔を見れなかった。友人に傷付いた顔をさせ、励ましの言葉を受け取れなかったことへの罪悪感が、僕の顔を下に向けていた。

「君が今の今まで生きてきて、こうやって僕の目の前にいることこそが、君の努力の結晶だと思うけどね」
そう目の前から聞こえてきた。え、と思わず顔を上げた。友人は哀しい笑顔を浮かべて僕を見ていた。


100本ノック23本目。
久しぶりの通勤なので久しぶりの執筆。

しっかりスマホ依存の現代人なので相も変わらず語彙力が乏しいなぁと思いながら書いておりました。もっと読書しないとだめです、私。紙の辞書、実家から持ってきて読もうかな…。

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