1分短編 #17 「鍵」
#17 「鍵」
2021年冬。付き合って1年目のクリスマスに彼は鍵モチーフのネックレスをくれた。
「僕の錠とペアなんだよ」なんて言って笑っていた。
2022年冬。付き合って2年目のクリスマスには彼の部屋の合鍵をくれた。
私の手に鍵を置く時の彼の顔は今でも鮮明に思い出せる。
2023年冬。付き合って3年目。
今年は何をくれるのかとわくわくしながら、私からは何をあげようかと1人でウィンドウショッピングしていた。
窓越しに彼に似た人を見つけた。隣に女の人を連れている。思わず振り返る。
あのコートの後ろ姿。女の人に顔を向けた時の横顔。笑顔。彼だ。
彼も隣の女の人もお互いしか見えていないようで、私の視線に気が付かない。
手を繋いでいるのは見えているけれど、仲がいいだけの友達かもしれないと一縷の望みを捨てきれずしばらく目を向けていた。
彼の方から女の人にキスを落としたのが見え、静かに踵を返す。
彼の家に帰り、合鍵で中に入る。
リビングの扉の前で首にかけていた鍵のネックレスを外す。彼との思い出を仕舞うように、少し開いていた扉を閉める。空で鍵を閉め、ドアノブにそれをかける。
家を出て合鍵で鍵をかける。さよなら。ドアの前で呟いてオートロックの外に出ると、合鍵は郵便受けに落とす。
さよなら。LINEにメッセージを入れ、その場を去った。
100本ノック17本目。
浮気のお話。
鍵と錠はセットで「絆」を意味します。鍵単体では「心を開く」とか「未来を切り開く」とか。「大切なものを守る」魔除けの意味も。
でも、「心を開く」っていう意味があるなら、「心を閉じる」こともできるよねって思ってネックレスの鍵で扉を閉めました。
リアルの私はどうなんでしょう。股かけられてるのわかってて向こうから振られるまでそのままにしてたら、振られる頃には三股でした。因みに三股かけられてたのは別れた後共通の友達から聞いたので、本人からは全くそういったことは聞いてません。何でもかんでも受け入れすぎなんでしょうね。まぁこれは笑い話の1つになったのでいいんですけど。
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