1分短編 #28 「Deja vu ―既視感―」
#28 「Deja vu ―既視感―」
―速報です。17時38分頃、○△公園付近で通り魔事件がありました。被害者は女性3人。犯人は凶器を持ったまま逃走中です。
帰宅途中、適当に流していたラジオ番組から速報が聞こえてきた。
○△公園……。この近くだ。
17時38分……。まだ20分しか経っていない。
被害者が全員女性ということは、通り魔と言えど女性を狙っているのだろうか。それならば、男装ともとれるような今の私は狙われないだろうか。
あまりに身近な場所での事件に、少しそわそわとしながら歩みを早めた。
―軽傷の被害者によると、犯人は黒色のキャスケットを被り、黒色のロングコートを身に付けています。身長は170~180cm程度。黒のマスクをつけており、顔は確認できていないとのことです。
全身黒色の服装。ちょうど今日の私みたいな服装だ。私が被っているキャスケットは高校生の頃に買ったお気に入り。黒のワイドパンツにブラウスを合わせ、ロングコートも黒だ。好きな色、好きな服を着ているだけでこんなにも焦燥感を覚えることになるとは思わなかった。事件の被害者になるのも怖いが、犯人に間違われたらと思うとぞっとする。
あと少しでアパートに着く、というところで、早足で歩く1人の男性とすれ違った。恐ろしいほどの既視感に襲われ、思わず振り返る。その男性の後ろ姿は、私自身のそれを鏡に写したかのように酷似していた。
私が足を止めたことに気が付いたのか、男性も足を止め振り返る。私は顔色蒼然となり、咄嗟に動けなかった。こちらを見た男性はにやりと口角を上げた。
100本ノック28本目。
デジャヴ。一度も経験したことのないことが、いつかどこかですでに経験したことであるかのように感じられること。なので、若干の意味、ニュアンスは正しくないんですが、既視感で思いついたお話です。
完全フィクションであるものの、全身黒の服装しちゃうのは割と私もです。気が付くと、上から下まで黒いんです。あれ?ってなります。好きな服着ただけなんですが。まぁ黒が好きだとそうなりますよね。
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