大学の図書館と高校の学習館
長期留学がスタートして2ヶ月が経とうとしている。現地の英語にも少しずつだが慣れてきて、やっと「非日常」なイギリス生活が「日常」になってきた。その中で欠かせないのが大学の図書館である。
アメリカの大学と比べ、イギリスの大学は課題は多くないものの、それでも課題はある。そして実りのある留学にするには自ら学ぶ機会を作り出していかなければならない。morning person(朝型)の自分にとっては、朝9時前から大学図書館に行き、ニュースチェックや授業の準備をするのがルーティンになっている。
イギリスの学生は大変勤勉だ。11時を過ぎる頃には自習スペースは満杯になる。試験やレポートに追われる学期末じゃなくても皆んな毎日のように分厚い文献や、英字に溢れたパソコンとにらめっこをしている。盗難のリスクがあるから、図書館では眠るという概念がない。試験期間前にならない限り、眠る学生ばかりの日本の大学の図書館とは大違いだ。
そう、図書館は「学を生み出す場」なのだ。
図書館をその様に考えてみると、個人的には高校時代の自習スペース「学習館」を思い出す。地元では一応進学校で、多くの生徒が旧帝大を目指すのが当たり前だった母校。部活を引退した高校3年生はこぞってここに集まり、受験勉強を始める。進路指導室の先生は6時半には学習館を開放してくれ、生徒を陰ながら応援する。
数年前、私もそんな生徒の1人だった。どうしても行きたい大学があった。どんなに部活が忙しくても眠くても妥協せずに勉強に勤しんでいた高校1.2年だったから、部活が終わって勉強一色になってからは一層本気になった。その生活で欠かせなかったのが学習館であった。
自分が高校生だった時に使用していた電車はSuicaもPASMOも使えない超ローカル線(笑)。その始発は高校の最寄駅に6時15分に着くものだった。そこから10キロを超える荷物を持って長い坂を上がり、学校6時30分に着く。7時になると多くの生徒がやって来て7時30分を過ぎると満杯になってしまう。だから誰よりも早く行って、席と勉強時間を確保したかった。
6時30分。この時期は日の出が遅く、暗い。進路室の先生に軽く挨拶をし、真っ暗で誰もいない自習室に電気と暖房をつける。いつもの「特等席」に着く。そして25カ年の数学を始める。
7時。別の路線の子達がこぞってやってくる。だんだん、学習館はみんなの熱気に包まれてくる。
8時15分。授業開始10分前のチャイムが鳴る。問題集をめぐる音とシャーペンを走らせる音しかしなかった空間に「休止の合図」が響き渡る。みんな安堵を感じさせるため息の後、各々の荷物をしまい、大きなリュックを背負って、各々の教室へ向かう。学習館から教室に向かうまでは、みんな「受験生」から「普通の高校生」に戻って楽しそうに会話をしながら歩く。
そう、学習館は「夢を生み出す場所」だった。
それから数年。私は、異国の地で再び夢を生み出そうとしている。必死で頑張った受験は本番でズッコケて不合格。第二希望だった大学に在籍する今、交換留学でイギリスで学ぶ。高校時代の自分が思い描いていた場所で自分の花を咲かせることはできなかったけれども、あの頃の頑張りがあったから今があるし、今がとても充実している。
そして、今日も昔を思い出させる空間へ足を運ぶ。あの頃の自分のように、自己成長をさせるために。
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