エピソード5「絶望へ逆戻り」
ロックという救世主の現れは、私の人生を大きく変えた。しかし、その幸福もつかの間だった。
ロックを聴いているクラスメイトなんて、周りにはいなかった。ロックを好きなのは、私一人だけだった。だから、他人と共通の趣味の話題で盛り上がることができなかった。いや、そもそも会話をする相手もほとんどいなかった。
私はロックを好きな自分が恥ずかしくなって、ロックを聴くのをやめた。
それが私を絶望の日々に引きずり戻した。
友達もいない。好きなものも好きでいられない。そんな私は、ただただ暗い表情を浮かべていた。そんな私に、とあるクラスメイトがこんな言葉を投げつけた。
「キモイ。気持ち悪い。」
しかも一度だけでなく、何日も、何日も、事あるごとに「キモイ」と言われた。その言葉に、私はどうすることもできなかった。反撃することはおろか、泣くことすらできなかった。
私はその時、自分が他人から嫌われうる人間であることを悟った。その瞬間、私の自尊心、自己愛、自信、プライド、全てが消え失せた。私は自分が大嫌いになった。
私は、とうとう父のいる天国への道を探し始めた。その時の私の周りには、生きる希望なんてもうどこにもなかった。生きる理由も、どこにも見つからなかった。
そして、「キモイ」という言葉は、その後の人生において、私の一番嫌いな言葉になった。人に言われるのはおろか、自分でその言葉を発するのも大嫌いだ。たとえ人に対して言う場合でなくとも、この言葉は絶対に使いたくないと、今では思っている。それほど、「キモイ」という言葉は、私の一つのトラウマとなった。