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特別エピソード 「手紙」

2021年1月11日。

郵便受けに、一通の手紙が届けられていた。

それは、なぜかポリ袋に入っていて、差出人の名前もなければ、切手も貼られていなかった。

だが、僕にはその手紙の差出人が分かった。

なぜなら、手紙には、「未来の自分へ」と書かれていたからだ。

つまりこれは、過去の自分からの手紙だ。でも、いつの自分だろう?

そう考えた時、こんなことを思い出した。

        ・ ・ ・ ・

あれは、小学6年生の、たしか冬だった。私たちは、タイムカプセルを校庭に埋めた。私はタイムカプセルに、大人になるであろう自分に宛てた手紙を入れた。

そして担任の先生が、クラス全員の前で、こんな約束をした。

「あなたたちが大人になる年の成人の日に、このタイムカプセルを掘り起こしましょう。」

私はその後も、この約束をずっと覚えているつもりだった。早く大人になりたい。そう願っていた。

        ・ ・ ・ ・

あれから9年が経ち、気がつけば、僕は大人になっていた。よくもまあこれだけ生きていたもんだ。

もうお分かりいただけただろう。今日、僕の元に届いたのは、12歳の「私」が、20歳の「僕」に宛てて書いた手紙だ。

しかも、それが自宅の郵便受けに届けられていたとは。まさか、12歳の「私」が、タイムマシンで2021年の1月11日にやってきて、郵便受けに置いていったのだろうか。

そんな冗談はさておき、僕はその手紙を読んだ。

全文をここで紹介すると、12歳の彼女は恥ずかしがるだろうか。いや、20歳の僕が許可しているのだから、いいだろう。

では、12歳の「私」が、未来の「僕」に宛てて書いた手紙を、特別に紹介しよう。


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