エピソード6 「ノーマライズ」
「キモい」というラベルを貼られた私は、どうすることもできなかった。
笑い方を忘れてしまった。
怒り方を忘れてしまった。
泣き方を忘れてしまった。
楽しみ方も、忘れてしまった。
あらゆる感情を、失ってしまった。
私は、こんな自分が信じられなかった。どうしてこうなったんだろう。どうすればいいんだろう。そんな疑問ばかり浮かんでいた。
しかし、その疑問はある時、こんな答えで一時的に解決された。
「普通になればいい」
普通の人たちと仲良くしたいのなら、普通になればいい。できるなら、私は普通になりたい。そう願った。
私は、普通になろうとした。
暗い顔を、無理やり真顔に戻した。
写真を撮るときも、無理やり笑顔をつくった。
悪口を言われても、無理やり言い返した。
ひとりぼっちでも、無理やり人の輪に入っていった。
何度も「無理やり」を繰り返して、私は普通になった、つもりだった。
しかし、そこにあったのは、喜怒哀楽、あらゆる感情を失い、自我さえも失ってしまった、「無」としかいえない私の姿だった。
普通になりたくてもなれない私は、やはり泣くことすらできなかった。
いつになったら、私は笑えるのだろうか?