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エピソード1 「終わりで始まり」

私は幼い頃から父が好きだった。

母や妹ももちろん好きだが、父は自分とどこか似ている気がしたのだ。

父とは2人だけで色々な所へ遊びに行った。一生忘れられない思い出を、2人だけでたくさん作ったのだ。私は父が好きだった。大好きだった。


そんな父は、私が9歳の時に他界した。


実を言うと、父は私が7歳の時から入院生活が続いており、父に会えない日が何日か続いていた。何度も見舞いに行く度、父は笑顔を見せてくれた。

だが、小学3年生に上がった時、父はその笑顔を見せなくなった。

身体は痩せ細り、歯を食いしばって生きているのが垣間見えた。

そして約半年後、父は永い眠りについた。

私は父の最期を見ていた。やはり歯を食いしばっていた。私は父の消えゆく命を泣きながら見届けた。

だが、告別式ではなぜか涙が一滴も出てこなかった。母も、妹も、祖父母も、親戚の人も、父の友人たちも、母の友人たちも、皆、涙を流していた。その中で、私だけは涙が出てこなかった。我慢しているわけでもないのに。

私はそんな自分が許せなかった。父の死を悲しむことのできない、冷たい人間だと。

この時から、私の物語は始まったのだ。

苦悩の日々が、始まった。

父の人生の終わりが、私の人生の始まりだった。

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