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エピソード10「これからのこと」
修学旅行、夏休みを終え、季節は秋。
中学校進学が、いよいよ近づいてきた頃。
卒業に向けて、卒業アルバムのための写真撮影や、将来設計が始まった頃のこと。
クラスメイト達は、中学校でどんな部活動をしたいか、という話題で盛り上がっていた。私は相変わらず誰とも話さないが、それなりに中学校生活を想像してみたりもしていた。
(中学校か・・・。また3年間一人ぼっちになるのか・・・。)
私が通うことになる市立中学校は、私の小学校を含め、市内の3つの小学校からの生徒が入学してくるらしい、ということを聞いていた。おそらく、一クラスの人数も増えるであろうが、そこで仲の良い友達を作れる自信が、その頃の私には全くなかった。なぜなら、私と全く話すことのない、私のクラスメイト達もそこに入学するからだった。
一言で言うと、私は中学校に入学することに、それほど大きな希望を抱いてはいなかった。
そんなある日の昼休み。一人で読書をしていた私を、教卓で作業をしている担任の先生が呼び出した。
そしてこんなことを尋ねた。
「あなたは、中学校でどんな部活に入るの?」
私は、かねてから決めていた答えを先生に話した。
「エコ部に入ろうと思っています。」
私が通う予定の中学校には、エコ部という、ペットボトルのキャップ集めなど、環境保全のための活動をする部がある、という話をどこかで聞いていた。しかも、その部は少人数で活動しているらしく、人付き合いが苦手な私にピッタリの部活動だと思っていた。
そんな私に、先生はこんな言葉を返した。
「エコ部って、外部でスポーツのクラブに所属している人が入る部活みたいで、ほとんど帰宅部みたいなものらしいよ。他の部にしたら?」と。
私は、(そうか・・・)と、少し考えを巡らせて、こう答えた。
「じゃあ、吹奏楽部に入ります。」
私はスポーツが苦手なので、運動部に入るという選択肢は頭に入れていなかった。文化部は、美術部と、吹奏楽部と、エコ部の3つだ。エコ部に入ることは反対されてしまったし、美術部で絵を描くだとか、何か作品を作るのも、下手なので気が乗らない。結果、半ば消去法で、吹奏楽部に入部することを決めた。
しかし、後から考えてみると、この決断には納得がいった。
私の小学校には、クラブ活動とは別にブラスバンド部があった。実は私は、4年生の時からそこで活動していた。担当楽器はスネアドラムだった。
地味な楽器ではあったが、曲のリズムを司る存在なので、楽しく演奏していた。曲の始まり、テンポをとるためにスティックでカウントを鳴らすのも、私の役目だった。
そして、私は以前、日常的に音楽を聴いていたこともあった。音楽が、暗い生活に光をもたらしていた。
つまり、私は音楽が好きなのだ。
私はようやく、自分の好きなものに気が付いた。
中学校でも音楽をやりたい。私の心は、知らないうちにそう願っていたのだろう。
こうして私は、大好きな音楽を、これからも続けることを決意した。