エピソード8.5「絶海の孤島」
それは、いつのことだったろうか。小学6年生の、言葉によるいじめが一段落した頃だったか、それよりも前、小学5年生の、陰口に苦しんでいた頃だったか、はたまたそのさらに前、小学4年生の、一人ぼっち生活に拍車がかかり始めた頃だったか、思い出せない。
それは、国語の授業で起きた出来事だった。その時の授業では、イースター島に関する文章を教科書で取り扱っていた。
そこには、こんなことが書いてあった。
「イースター島とは、太平洋に浮かぶ絶海の孤島である。」
正確な文までは覚えていないが、こんなことが書いてあった気がする。
それが起きたのは、グループで話し合う時間の真っただ中だった。
グループのうちの一人が、私に向かってこんなことを言って笑った。
「お前はまるで、絶海の孤島だな。」
絶海の孤島、すなわち陸地から遠く離れ、広大な海にぽつんと浮かぶ島。
つまり、普通という名の広大な陸地から遠く離れた、社会という名の海にぽつんと浮かぶ、一人ぼっちの島。
私は自分の孤独さを、絶海の孤島に例えられた。自分の孤独さを例えるのに、これほどふさわしい言葉はなかった。
だから私は、何も言い返すことができなかった。
「傷ついた」とすら、言えなかった。だって、全くその通りだったから。
何一つ、間違っていなかったから。