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僕が僕になるまで~第一章 "Childhood"~

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今でこそ「僕」である自分が、まだ「僕」とは言えなかった頃の物語。全部実話です。
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2020年11月の記事一覧

エピソード4「救世主」

エピソード4「救世主」

それは、突然の出会いだった。孤独な生活に、救世主が現れた。

母は、車でよく音楽を流していた。車に乗っていた私も、当然ながらその音楽を聴いていた。母は音楽を広く浅く聴く人で、車で出かける度に、違うCDを流していた。

そんなある日、とある音楽を聴いていると、私は今までにない感覚を味わった。魂が突き動かされるような、心に火がつくような、そんな快感だった。

それは、ロックだった。

ほとばしるエレキ

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エピソード3「アブノーマル」

エピソード3「アブノーマル」

小学4年生に上がった頃も、私は更に一人ぼっち生活を送るようになった。人を避けて生活するようになってから、私は休み時間にクラスメイト達を観察するようになった。ずっと一人でいるから、読書か人間観察の他にすることがなかったのだ。

で、クラスメイト達が何をしていたかといえば、友達と話したり、外で遊んだりしていた。小学生にとっては、それが「普通」なんだろう、と私は思った。

これはつまり、私はその「普通」

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エピソード2 「暗転」

エピソード2 「暗転」

 父の通夜と告別式を終え、しばらくして私たちは日常に戻った。私は再び小学校に通い始めた。

しかし、父がいなくなった喪失感は、9歳の私にとっては重すぎるものだった。これは、父の人生最後の9年間、一番父の近くにいた私だからこその重みだったのかもしれない。

その重みを抱えたまま、私は再び登校した。身体は重いのに、心の中にはぽっかりと穴が空いたような空しさがあった。

ある時、ふと考えた。自分には何人

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エピソード1 「終わりで始まり」

エピソード1 「終わりで始まり」

私は幼い頃から父が好きだった。

母や妹ももちろん好きだが、父は自分とどこか似ている気がしたのだ。

父とは2人だけで色々な所へ遊びに行った。一生忘れられない思い出を、2人だけでたくさん作ったのだ。私は父が好きだった。大好きだった。

そんな父は、私が9歳の時に他界した。

実を言うと、父は私が7歳の時から入院生活が続いており、父に会えない日が何日か続いていた。何度も見舞いに行く度、父は笑顔を見せ

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