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特別エピソード 「手紙」
2021年1月11日。
郵便受けに、一通の手紙が届けられていた。
それは、なぜかポリ袋に入っていて、差出人の名前もなければ、切手も貼られていなかった。
だが、僕にはその手紙の差出人が分かった。
なぜなら、手紙には、「未来の自分へ」と書かれていたからだ。
つまりこれは、過去の自分からの手紙だ。でも、いつの自分だろう?
そう考えた時、こんなことを思い出した。
・ ・ ・
エピソード12「卒業」(後編)
卒業式を終え、体育館を後にした私たちは、記念写真を撮るために再び体育館に集まった。
卒業生全員で並び、保護者の方々や担任の先生もそこに入り、記念撮影をした。記念写真なので笑顔で撮ってもらわなければと、私はぎこちない笑顔を浮かべた。
しかし、後から写真を見てみると、皆、真顔だった。卒業生だけでなく、担任の先生も、保護者の方々も、皆、真顔だった。真面目な表情で撮りたかったのだろうか、それとも、涙を
エピソード12「卒業」(前編)
某年、3月初旬。
私はいよいよ、小学校卒業の日を迎えた。
卒業式では、卒業生は皆、中学校の制服を着る。私も、その制服に袖を通した。まだ慣れないセーラー服。だが、悪くない。
辛くても、苦しくても、何とか終えられた小学校生活。そして、これから始まる中学校生活。辛いことがほとんどだったので、今更寂しさは感じない。あるのはただ、生きて卒業式の日を迎えられた達成感、そして、中学校生活への僅かな期待だっ
エピソード11「未来の私へ/あの頃の私へ」
季節は冬。卒業を数か月後に控えた頃。私があの日願ったように、大きなトラブルもなくここまで過ごすことができたので、月日はあっという間に過ぎていた。
私たちは、タイムカプセルを作っていた。
小さい頃から大切にしている人形、昔の家族写真、...皆、思い思いの宝物を用意していた。
私はというと、大切にしていたものはたくさんあったが、多すぎて選べなかった。だから、未来の自分に向けた手紙を書くことにした
エピソード10「これからのこと」
修学旅行、夏休みを終え、季節は秋。
中学校進学が、いよいよ近づいてきた頃。
卒業に向けて、卒業アルバムのための写真撮影や、将来設計が始まった頃のこと。
クラスメイト達は、中学校でどんな部活動をしたいか、という話題で盛り上がっていた。私は相変わらず誰とも話さないが、それなりに中学校生活を想像してみたりもしていた。
(中学校か・・・。また3年間一人ぼっちになるのか・・・。)
私が通うことにな
エピソード9.5「嫌いなゲーム」
私は、小学校生活を一人で過ごしていた。
しかし、そんな私でも、人と関わらなければいけない時間があった。
たとえば、体育の時間。クラス全員で、スポーツをしたり、ゲームをしたりする。「一人ぼっちなのでできません」とはとても言えないので、私も当然参加する。
私は、いつかの体育の授業で行った、とあるゲームが大嫌いだ。
それは、クラス全員で行い、先生が指定した人数で、各自グループを作り、グループが定
エピソード9「変わっても、変われない」
私は、小学6年生になった。言葉によるいじめもなくなり、ようやく普通の学校生活が送れる。これで、小学校6年間、楽しかった!と言えるような一年が送れる。そう期待していた。
だが、現実は厳しかった。
一度空いてしまったクラスメイト達との距離は、再び縮めようと思っても、そう簡単に近づいていくものではなかった。自分から近づいていくのも大変だったし、彼らも私と仲良くしたくないのではないか、とさえ思ってしま
エピソード8.5「絶海の孤島」
それは、いつのことだったろうか。小学6年生の、言葉によるいじめが一段落した頃だったか、それよりも前、小学5年生の、陰口に苦しんでいた頃だったか、はたまたそのさらに前、小学4年生の、一人ぼっち生活に拍車がかかり始めた頃だったか、思い出せない。
それは、国語の授業で起きた出来事だった。その時の授業では、イースター島に関する文章を教科書で取り扱っていた。
そこには、こんなことが書いてあった。
「イ
エピソード8「収束?」
それは、学校を休んで3日目くらいになった日のことだった。
いつものように、担任の先生が家に電話をかけてきた。
またいつものように、私を心配する言葉をかけに来たのか、と、半ば呆れたように、私は母から受話器を受け取った。
しかしその日、先生はこう言った。
「あなたが酷いことを言われて傷ついたのなら、あなたに酷いことを言った人たちに、自分の気持ちを伝えてみない?」
そう言われて、私は真っ先に悟
エピソード7「白日の下に」
それからも、相変わらず陰口は言われ続けたし、私の方も、人を避けていた。
生きる気力はとうに失せていたが、死ぬ勇気も湧いてこなかった。
こんなふうに、私はまるで、成仏できなかったゾンビのように、死に損なったように、生きていた。
そんなある日だった。
その頃、私は小学5年生だった。
小学校で、人権に関する作文を書くことになった。私は当時、人権の意味をよく知らなかったので、とりあえず、いじめの
エピソード6 「ノーマライズ」
「キモい」というラベルを貼られた私は、どうすることもできなかった。
笑い方を忘れてしまった。
怒り方を忘れてしまった。
泣き方を忘れてしまった。
楽しみ方も、忘れてしまった。
あらゆる感情を、失ってしまった。
私は、こんな自分が信じられなかった。どうしてこうなったんだろう。どうすればいいんだろう。そんな疑問ばかり浮かんでいた。
しかし、その疑問はある時、こんな答えで一時的に解決された
エピソード5「絶望へ逆戻り」
ロックという救世主の現れは、私の人生を大きく変えた。しかし、その幸福もつかの間だった。
ロックを聴いているクラスメイトなんて、周りにはいなかった。ロックを好きなのは、私一人だけだった。だから、他人と共通の趣味の話題で盛り上がることができなかった。いや、そもそも会話をする相手もほとんどいなかった。
私はロックを好きな自分が恥ずかしくなって、ロックを聴くのをやめた。
それが私を絶望の日々に引きず
エピソード4「救世主」
それは、突然の出会いだった。孤独な生活に、救世主が現れた。
母は、車でよく音楽を流していた。車に乗っていた私も、当然ながらその音楽を聴いていた。母は音楽を広く浅く聴く人で、車で出かける度に、違うCDを流していた。
そんなある日、とある音楽を聴いていると、私は今までにない感覚を味わった。魂が突き動かされるような、心に火がつくような、そんな快感だった。
それは、ロックだった。
ほとばしるエレキ
エピソード3「アブノーマル」
小学4年生に上がった頃も、私は更に一人ぼっち生活を送るようになった。人を避けて生活するようになってから、私は休み時間にクラスメイト達を観察するようになった。ずっと一人でいるから、読書か人間観察の他にすることがなかったのだ。
で、クラスメイト達が何をしていたかといえば、友達と話したり、外で遊んだりしていた。小学生にとっては、それが「普通」なんだろう、と私は思った。
これはつまり、私はその「普通」