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ドラマ【いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう】名台詞集
2016年1月期フジテレビ月9ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」より、心に残った台詞をまとめました。
*鑑賞時に書き起こした台詞を記録しているため、表記や文言は脚本と異なる場合があります。恐れ入りますがご了承いただけますようお願いいたします。
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第1話
大事な物って荷物になんねん
「大事な物って荷物になんねん。杉原音は、私の想像の湖の中に沈んでん。私はもう林田音。知ってる道で、知ってる顔と会って、知ってるマンホールの上通って、一生この街に残んねん。」
このまま結婚していいのかと練に聞かれた音が言った言葉です。
音は、子どもの頃に身寄りがなく引き取られた親の指定で、地元の名士との結婚が決まっていました。
好きな人って、いて見るんじゃなくて、見たらいるんだよね
「なんか、彼が本読んでる時とかに、こう、何読んでんのかなってこっそり覗き込んだり。あと中庭に百葉箱ってわかる?小さい家みたいな温度計が入ってる箱、あそこに昼休み保利くんいて、あ、今日フルーツサンド食べてるんだとか見てて。不思議だよね。こう、好きな人って、いて見るんじゃなくて、見たらいるんだよね。」
好きな人と結婚がしたい。
その願いを義理の父親に否定され、練とファミレスにやってきた音が、学生時代に付き合った人について話した時の言葉です。
あれって私のつっかえ棒やったから
「白井さんと結婚することにした。さっき病院で決めた。ありがとう、手紙持ってきてくれて。引っ越し屋さんが言ってた通り、あれって私のつっかえ棒やったから。ほんまに嬉しかった。結婚する。」
好きな人との結婚を諦め、好きではない相手との結婚を決めた音が、練と来たファミレスで言った言葉です。
あなたの好きなところに行きなさい
「音、逃げなさい。もうあなたの好きなところに行きなさい。」
白井との結婚が破談になり、子どもの頃からそばに置いていた亡き母の遺骨を雅彦にトイレに流された音。
次の縁談の話を進めようとする雅彦を前に、力なく座り込んだ音を見て、義理の母親である知恵が音に言った言葉です。
音はこの言葉を受けて、何も持たずに家を飛び出しました。
人が寂しいって気持ちを持っているのは、誰かと出会うため
「音へ。今、真夜中の二時を少し回ったところです。今が最後のチャンスかも。そう思って病院の方に便箋とペンを借りました。もうあまり字が上手に書けなくて恥ずかしいけど、便箋を光に透かすと、小さな花びらが浮かびます。素敵でしょう?音、お母さんはそろそろいなくなります。あっという間だったね。時間が足りない。まだ何も出来てない。まだ死ねない。あなたを一人残してしまうのも。音、あなたを父親のいる子にしてあげられなかったこと、何度後悔しても足りません。お母さんはもう髪を結んであげることも出来ません。それでもお母さん、あなたを産んでよかったと思っています。あなたはとても質問の多い子だった。なんで水は濡れるの?髪の毛はどんどん伸びるのになんで眉毛はちょうどで止まるの?どうして寂しい気持ちはあるの?あなたには絵本が必要なかった。自分で作った物語を私に話して聞かせながら眠りにつくから。歩くのが早い私の後を、"大丈夫よ" そう言ってついてくる小さなあなたを見ていて、いつも思いました。この子には、人生を切り拓く強い力がある。音、たくさんの人に出会ってね。自由に見て、自由に話して、好きなように生きて。それはあなたが心に持って生まれた大切な宝物だと思う。あなたはいつか学校に行って友達を作るのかな。中学生になって、高校生になって、誰かを好きになるのかな。どんな恋をするんだろう。恋をすると、嬉しいだけじゃなくて、切なくなったりするね。きっと、人が寂しいって気持ちを持っているのは、誰かと出会うためなんだと思います。時に人生は厳しいけど、恋をしてる時は忘れられる。恋をして、そしていつか、たった一人の人に出会えるといいね。その人はきっと、あなたの質問に答えてくれる。あなたの物語を聞いてくれる。あなたが生まれたことを喜んでくれる。ぶどうの花はぶどうの味がする。バナナの花はバナナの味がする。愛するって、心から心へと残していくことだと思う。音が笑ってる時、お母さんも笑ってる。音が走ってる時、お母さんも走ってる。大好きな私の娘。大好きな音。愛しています。どうか幸せに。母より。」
音の母が、音宛てに残した手紙の内容です。
一日街を歩いても知っている人に会わない
「東京に来て一年が過ぎた。知らない街。知らない道。知らない顔。一日街を歩いても、知っている人に会わない。引っ越し屋さん。どこにいますか?」
練のトラックに乗り、逃げるように東京へとやってきた音。
練とはその日に別れて以来会うことがなく、第1話ラストのモノローグでの音の言葉です。
第2話
私もう着る恋愛はいらないの
「恋愛ってさ、衣食住の順番で来るの。恋愛は最初は着るものなの。で、次に恋愛は食べるものになって、最後に住むものになる。私もう着る恋愛はいらないの。恋は、食べるもの。」
自分のアパートのような場所は木穂子には似合わないのではと言う練に、木穂子が言った言葉です。
東京は夢が叶わなかったことに気付かずにいられる場所だよ
「練くんは帰らないよ。帰ったら気付いちゃうじゃん、夢が叶わなかったことに。東京は夢を叶えるための場所じゃないよ。東京は夢が叶わなかったことに気付かずにいられる場所だよ。」
田舎に帰れば良いのにと小夏が練のことを話した時に、晴太が言った言葉です。
会わない時間に生まれるもの
「恋って、会ってる時間じゃなくて、会わない時間に生まれるものなんじゃないんですか?わかりませんけど。」
かつて一度だけ会った人を好きだと話す音を笑った朝陽に、音が返した言葉です。
第3話
片思いだって五十年経てば宝物になるのよ
-仙道静恵「どんな彼女だったの?」
-杉原音「うーん…。人間だったと思います。」
-仙道静恵「残念ね。でも、片思いだって五十年経てば宝物になるのよ。」
-杉原音「え、静恵さん、それ本気で言ってます?」
-仙道静恵「ううん。同情してるだけ。」
練の恋人・木穂子と初めて会った後、落ち込む音と静恵の会話です。
朝起きるとまず初めに今日一日を諦めます
「わたしは新しいペンを買ったその日から、それが書けなくなる日のことを想像してしまう人間です。誰にとっても特別な存在になれないのなら、初めからそのつもりで付き合えばいい。そうして出会ったのが、今の恋人なんです。何も期待せず、望まずにいられる関係。わたしは朝起きると、まず初めに今日一日を諦めます。だけどきっとまだ、心の奥のところで諦めが足りなかったのでしょう。練に助けられた時、ずっとこのまま抱きしめられていたいと思いました。本当の自分を見られるのが怖かったから、嘘をたくさんつきました。あなたの前でもう一人の自分になれることが嬉しかった。日向木穂子でいられることが嬉しかった。私、笑える。ねずみの顔じゃなく笑える。だけどいつでもあなたと別れられるように、夢から醒められるように、保険をかけていたんです。でも、もうそれもやめにします。練、あなたと付き合いたい。あなたを恋人だと思いたい。買ったばかりの新しいペンで、思う存分あなたを好きだと綴りたい。今から彼に別れを告げてきます。もう駅のトイレで着替えるのはやめます。地味なわたしを見たら驚くかもしれないけど、その子が本当のわたしです。じゃあね。あとでね。」
木穂子が練に宛てたメールの文章です。
この世で一番難しい問題だね
-市村小夏「好きになってくれる人を好きになれたらいいのに。」
-中條晴太「それは...この世で一番難しい問題だね。」
小夏と晴太、二人の会話です。
第4話
めんどくさいし鬱陶しいし捨てようとしても捨てられない
「夢って大変なものなんだよ。めんどくさいし鬱陶しいし捨てようとしても捨てられない。もつれた糸みたいに心に絡んで取れなくなる。それが夢。自分の夢に潰される人間だっている。」
夢について音と話していた時の朝陽の言葉です。
これ、ずっと欲しかった生活なんです
「もし夢があったとしたら、私はもう叶ってます。自分の部屋が欲しかったんです。自分で仕事を持って、自分のお金でその日食べたいものを食べて、自分の部屋で自分の布団で眠りたかったんです。これ、ずっと欲しかった生活なんです。」
朝陽と夢について話していた時の、音の言葉です。
決して楽だとはいえない東京での生活。
それさえも、音にとっては、かつての音にとっては、夢にまで見た欲しかった生活でした。
どこにでもいる子になりたくない子ってどこにでもいるよ
-市村小夏「向いてないのぐらい知ってるよ。なんでもいいから違う自分になりたいんだよ。どこにでもいる子になりたくないんだよ。」
-中條晴太「どこにでもいる子になりたくない子ってどこにでもいるよ?」
怪しげなプロダクションからのスカウトを受け、何者かになりたいとその道に進もうとしていく小夏に、晴太が言った言葉です。
ごめんなさい。ごめんなさい。好きでした。
-曽田練「東京は向いてないって思うんです。うちに帰っても帰った気がしません。自分の部屋にいても、来てる気がします。そうやって、東京で五年経って、そうやって、杉原さん、あなたのことを好きになりました。好きで、好きで、どうしようもないくらいになりました。いつもあなたのことを想ってます。それを、そのことを諦めなきゃいけないのは、苦しい。杉原さん、今日まで冷たくしてごめんなさい。明日からまた同じことします。」
-杉原音「…はい。」
-曽田練「ごめんなさい。ごめんなさい。好きでした。」
しばらくぎこちない関係が続いていた練と音が、一緒にたこ焼きを食べた夜の会話です。
第5話
片想いなんて扁桃腺と同じだよ
「片想いなんて扁桃腺と同じだよ。何の役にも立たないのに病気の元になる。僕を好きになりなよ。僕だったら君に両想いをあげられるよ。」
練に想いが届かなかった音。
音を呼び夜空の星を鑑賞していた朝陽が、音に言った言葉です。
一度人を好きになったらなかなか好きじゃなくならないんです
-杉原音「私、一度人を好きになったらなかなか好きじゃなくならないんです。好きになってほしくて好きになったわけじゃないから。たとえ片想いでも、同じだけ好きなままなんです。」
-井吹朝陽「…はい。僕も同じ意見です。」
朝陽からの告白を断った音が、朝日に言った言葉です。
こいつ馬鹿だな~と思ってやってりゃいいんだよ
「こんなくだらない儀式な、こいつ馬鹿だな~と思ってやってりゃいいんだよ。」
引っ越し作業中、「お前らのせいでエレベーターが使えない、謝れ、土下座しろ」とクレームを言ってきた住人を前に、練がどうしたらいいか迷っているところ、さっと現れさっと土下座した佐引。
謝る練に、佐引が言った言葉です。
別れ方がわかんなくて付き合ってる人たち
「恋人には二種類あるんだよ。好きで付き合ってる人たちと、別れ方がわかんなくて付き合ってる人たち。」
練と木穂子、二人を見てお似合いだと落ち込む小夏に、晴太が言った言葉です。
ちょっとずつ投げやりになってかないと
「私たちはちょっとずつ投げやりになってかないと、こういうことがある度に傷ついちゃうんです。」
契約を打ち切られ職場を離れることになってしまった玲美と音。
「投げやりにならないで」と二人を気に掛ける朝陽に、玲美が言った言葉です。
少しくらいずるしたっていいのよ
「本当に好きだったら、少しくらいずるしたっていいのよ。」
練への想いを終わらせようとする音に、静恵がかけた言葉です。
眩しくて眩しくて泣いてしまうんだろうな
「あのね、私、ちゃんと好きになりました。短かったけど、ちゃんと好きになった。好きだったらそれでよかった。それが、すごく嬉しいんです。ずっと、ずっとね、思ってたんです。私、いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまうって。私、私たち今、かけがえのない時間の中にいる。二度と戻らない時間の中にいるって。それぐらい眩しかった。こんなこともうないから、後から思い出して、眩しくて眩しくて泣いてしまうんだろうなって。」
練に恋をし、その想いを終わらせようとした音。
静恵と二人で話しながら、音が言った言葉です。
みんなそうやって人に会って人のことを想って生きてる
-曽田練「会津、ああ、練の町か。そう思ってもらえる。俺はそれが嬉しいんだ。東京のあの人。会津のあの人。行ったことねえとこに知ってる人がいる。住んでる人のことを考える。今東京で何かあったら俺は友達の心配をする。みんなそうやって、人に会って、人のことを想って生きてる。そういうのが嬉しいんだ。」
-曽田健二「そうか。」
-曽田練「うん。東京が嫌いだった時は会津さ帰れねえと思ってた。今は東京も好きだから、会津さ帰って来れる。」
祖父の健二に東京が嫌になったかと聞かれた練が言った言葉です。
種ひとつ撒くところから始まんだ
「んだら、早く寝て、早く起きろ。ここで生きんなら、種ひとつ撒くところから始まんだ。」
東京から久しぶりに会津に戻ってきた練。
今は東京で生きる、いつかは会津に戻る。
そう話す練に、健二が言った言葉です。
第6話
どこも行くとこなくなった人の帰るとこ
「せやなあ。お母さんが思うんはな、帰るとこ。おうちもなくなって、お仕事もなくなって、どっこも行くとこなくなった人の、帰るとこ。わかれへんか。大丈夫。いつかわかる。お母さん音にもわかってほしいわ。」
回想シーン。
子どもの音に「恋って何?」と聞かれた音の母が答えた言葉です。
追い抜いた覚えはないのに
「追い抜いた覚えはないのに、もう前を歩く母はいない。二十七歳になった。母が死んだ歳になった。」
幼少期の母とのエピソードの後の、音のモノローグです。
用があるくらいじゃ来ないよ
「どうして何の用ですかなんて聞くの?何の用ですかなんて、用なんかあるわけないじゃないですか。用があって来てるわけないじゃないですか。用があるくらいじゃ来ないよ。用がないから来たんだよ。顔が見たかっただけですよ。私は…私はこっちにいたから、東京にいたから、メールもらっても人づてに聞いても、実際会うまでわかんないじゃないですか、大丈夫かどうか。わかんないじゃないですか。顔、見たかっただけです。声、聞きたかっただけです。無事でよかった。いてよかった。それだけです。」
何年も音信不通になった練と久しぶりの再会を果たした音。
危なげな仕事をして顔つきも変わってしまった様子の練に、音が言った言葉です。
第7話
よく頑張ったわね。よく頑張った。
-仙道静恵「震災の時はどこにいたの?」
-曽田練「会津の家の近所に。」
-仙道静恵「無事でよかった。よく頑張ったわね。よく頑張った。生きてる自分を責めちゃだめよ。音ちゃんを見てると、音さんのお母さんがどんな人だったかわかる。練を見てると、練のおじいちゃんがどんな人だったかわかる。私たち、死んだ人とも、これから生まれてくる人とも、一緒に生きていくのね。精一杯生きなさい。おかえり。」
祖父が亡くなり、自分を責めながら生きてきた練。
音との再会を機に再び静恵の家へと戻ってきた練に、静恵が言った言葉です。
第8話
そう。そのポン酢感覚。
-日向木穂子「恋愛って衣食住っちゃ。」
-杉原音「衣食住?」
-日向木穂子「最初は自分を着飾るための衣装ったい。次に恋愛は食べるものになると。心の栄養というとこやな。そして最後に住むものになると。落ち着く場所っていうかまあ簡単に言ったら結婚やね。私にとって恋愛は今、住むものっちゃんね。」
-杉原音「木穂子ちゃん結婚すんの?」
-日向木穂子「今待っとうと。一回プロポーズされたことあるっちゃけど、忙しくてスルーしたらその後言われんくなったから。音ちゃんも今の彼氏にプロポーズされたら何も考えんと"はい"って言わないかんよ。ポン酢取って。」
-杉原音「ああ、はい。」
-日向木穂子「結婚して。」
-杉原音「はい。」
-日向木穂子「そう。そのポン酢感覚。」
音と木穂子が二人で鍋をしていた時の会話です。
手に入らない物ばっかり欲しがって
「手に入らない物ばっかり欲しがって、人生失敗したよ。」
デザイナーになる夢を追いかけながら練に依存していた小夏。
そのことを晴太に突きつけられた小夏が、晴太と練の前で言った言葉です。
説得しないで
-杉原音「待って。説得しないで。ごめん、でも、」
-井吹朝陽「結婚するか別れるか、どっちかなんだよ。」
朝陽からのプロポーズの返事をためらっている音をよそに、親への挨拶などをどんどん進めていこうとする朝陽。
気乗りしない音を説得するように話す朝陽に、音が言った言葉です。
一番初めに思い浮かぶ人よ
-園田「どんな男の子が好きなの?」
-杉原音「どんな男の子?」
-園田「男らしい人?かっこいい人?面白い人?優しい人?好きな人、いるんでしょ?」
-杉原音「わかんないです。」
-園田「一番初めに思い浮かぶ人よ。」
-杉原音「…わかんない。」
朝陽からプロポーズをされたものの、色々なことが変わってしまった朝陽に違和感を感じていた音。
朝陽の父親との食事の場で、朝陽が自分の生い立ちを偽って父親に紹介していたことを知り、会食後、ひとりで施設の入居者・園田のもとへやってきた音。
園田は以前朝陽が現場にいた頃に共に対応した大切な入居者でした。
そんな園田と音の会話、最後の音の「わかんない」は、涙ぐみながらつぶやいた音でした。
俺は杉原さんのところにいます
-杉原音「よかった。私が間違ってるのかなって思ってたから。こんな風に思うの私だけかなって。同じ風に思う人いて嬉しいです。」
-曽田練「杉原さんは間違ってないですよ。」
-杉原音「そうかな。」
-曽田練「自分の思った通りでいいと思います。」
-杉原音「でも私多分、多数決があったら毎回だめな方です。」
-曽田練「だめな方はだめな方で、そこで一緒にいればいいじゃないですか。」
-杉原音「そこでも多数決ががったら、一緒にいる人だんだん減っていきますよ。」
-曽田練「俺は最後までそこにいますよ。多数決が何回あっても、俺は杉原さんのところにいます。」
-杉原音「…へえ。」
-曽田練「そこにいます。」
-杉原音「へえ。」
朝陽とのことがあった後、心配して音のもとにやってきた練。
練が誕生日だったため、プレゼントにと似顔絵を描く音と、練との会話です。
ほんまに綺麗やったんやで
-曽田練「最近ずっと、ずっと杉原さんの事を考えてました。何をしてても、ずっと杉原さんのこと考えてました。」
-杉原音「…引っ越し屋さん。あんな、六歳のときな、お母さん死んで火葬場に行ってん。火の中に棺が入って、係の人に二時間少々待っててくださいって言われて、他の人ら待合室行って私は駐車場行って、一人でな、地面に絵描いててん、チョークで。気付いたら夕方なってて、さっきまでと空の色が変わってた。ちょっと怖い空やった。高いような低いような、オレンジみたいなピンクみたいな、優しい、寂しい、そんなんやって、ほんまに綺麗かってん。そういう時やったから特別に見えたんかもしれへんけど、ほんまに綺麗かったんよ。今までずっとな、あの時見た空の話がしたかってん。誰に言っても伝わらへん気して。伝わらへんかったらって思って、言われへんかったんやけどな、ほんまに綺麗やったんやで。私も、私もずっと曽田さんのこと考えてた。同じやね。」
-曽田練「杉原さん。好きです。」
曽田と音、二人の会話です。
第9話
奇数ははじかれるの
「優しいと優しすぎるは違うよ。恋愛って不平等なんだよ。奇数ははじかれるの。しょうがないよ。頑張りな。私も相変わらず楽しくやってるから。」
音に想いを伝えたものの、朝陽に阻まれ進めずにいる練。
五年ぶりに練に会いにやってきた木穂子が、音には相手がいるからと練が躊躇う様子を見て、かけた言葉です。
自分を一度捨てたことのある人間なんだろうな
「あの女どうした。お前みたいのは早く結婚したほうがいい。むしろああいう貧しくて貪欲な女の方が合ってる。女房に尻を叩かれたほうがやる気が出るだろう。あれはたいした玉だ。嘘がばれても弁解しなかった。きつく当たったが怒りも泣きもしなかった。自分を一度捨てたことのある人間なんだろうな。」
息子の朝陽に結婚を急かす父・征二郎が言った言葉です。
昔の自分を思い出すといつも寂しくなる
「その人、あの頃の僕しか知らないからちょっとびっくりしてた。君と同じ。僕もそう思うんだよ。あの頃の自分と今の自分を比べたら、あの頃の自分の方が好きだなって。昔の自分を思い出すといつも寂しくなる。だけど今さら戻れない。」
父親の元で働くようになり、自分を押し殺すうちに、変わってしまったことを自覚する朝陽。
それでも音を繋ぎ止めない朝陽が、音に言った言葉です。
これが今の僕が選んだ一番幸せな現実です
「明日からはもう二度と君の前ではそんな顔見せない。君の前ではいつも笑顔でいる。君が大切にしている仕事や部屋も僕が守る。君だけを好きでいる。どうかな?これが今の僕が選んだ一番幸せな現実です。音ちゃんが誰を好きでも構わない。世の中にはニ番目三番目に好きな人と幸せになった人の方がきっと多いはずだよ。恋から始まらなくていい。ここで生きよう。一緒に生きよう。」
音にあらためてプロポーズをした朝陽の言葉です。
ふるさとっていうのはさ、思い出のことなんじゃない?
-柿谷嘉美「行くって何?帰るでしょ?」
-曽田練「ああ、もう家もないし家族もいないんで。」
-柿谷嘉美「うーん…私はさ、東京生まれで元々田舎もないしよくわかんないんだけどさ、ふるさとっていうのはさ、思い出のことなんじゃない?そう思えば帰る場所なんていくらでもあるし、これからも出来るってこと。」
祖父が植えた大根の収穫のため会津に帰る練に、職場の社長が言った言葉です。
音ちゃんには練やろ
-日向木穂子「音ちゃんには練やろ…」
-杉原音「遅かったんだよ。」
-日向木穂子「遅いも早いもないよ。」
-杉原音「ある。朝陽くんともう二年付き合ってるの。」
-日向木穂子「でも好きなのは練でしょ?」
-杉原音「二年って長いよ。今さら裏切れない。」
-日向木穂子「え、じゃあ自分は裏切っていいんだ?自分の気持ちは裏切っていいんだ?」
-杉原音「私は…、そうやって生きてきたし、これからもきっとそうなの。人傷つけてまでとは思わない。」
-日向木穂子「練は傷つくよ?」
-杉原音「彼はいいの。」
-日向木穂子「なんで?」
-杉原音「わかってくれる。」
-日向木穂子「…絶対後悔するから。
-杉原音「…ありがとう、きほちゃん。でももう決めたの。自分で決めたの。」
練と音。二人の想いを知る木穂子が、練への想いを閉ざして朝陽との結婚を進めようとする音に言った言葉です。
世の中に希望がないからって一人一人に希望がないわけじゃない
「世の中に希望がないからって、一人一人に希望がないわけじゃない。あなたを見てると、そう思います。」
待ち合わせ場所になかなか現れない音に、練が留守電で残した言葉です。
第10話(最終話)
通り過ぎたりしない
「杉原さんはほっとかない。通り過ぎたりしない。」
練との待ち合わせに向かう途中、ひったくりに遭ったという明日香という女の子と遭遇し、周りの人間がひったくり犯を捕えようともみ合いになった際に階段から転落してしまった音。
音の意識が戻らず、自分のことをほっといてくれたらよかったのにと悔やみ謝罪した明日香に、練が言った言葉です。
君に甘えて逃げ道を塞いでた
「決めることじゃない。恋愛って決めることじゃない。いつの間にか始まってるものでしょう?決めさせた僕が言うことじゃないけど。君が寝てる間にお母さんの手紙を読んだ。僕は一番の人じゃなくていい、ニ番目でいいって言ったけど、間違ってた。大切に想う人に順番なんてつけられないんだから。ごめんね悩ませて。君に甘えて逃げ道を塞いでた。僕を、選んだらだめだ。僕はもう、きみの事好きじゃない。」
音との別れを決めた朝陽が、音に言った言葉です。
私の恋をしまっておいてください
「お母さんへ。お母さんに手紙を書くのは何年ぶりかな。久しぶり、お母さん。音は、二十七歳になりました。とっても元気にしています。音は今、なんと、東京に住んでる。雪が谷大塚という坂の多い町で、一階にラーメン屋さんのあるアパート。今はずっと介護の仕事をしています。立派な資格も持ってるんですよ。休みくれとか、もっと給与くれとか思う。大変は大変。でも、ありがとうと言われると、頑張って良かったなって思える。努力って、時々報われる。お金は貯まらない。でも、私には足りてる。ちょっとのいいことがあれば、夜寝る時に思い出せる。優しい気持ちになれる。寝て起きたら、次の日が来る。私には、思い出が足りてる。坂の上に立つとね、東京の夜の町が見渡せるの。そこで、会ったことのない人のことを、想像するのが好きです。今あの鉄塔の下で、女の子がマフラーを落とした。パン屋の男の子が拾ってあげた。ありがとう、気を付けて。深夜の町を走り抜けていくバス。後ろから三番目の座席に座った、引っ越し屋さんと介護福祉士さん。おつかれさまでした、おつかれさまでした。この街にはたくさんの人たちが住んでるよ。時々思うの。世の中って綺麗なものなのかな、怖いものなのかな。混ざってるのかなって思った。だから、綺麗なものは探さないと見つからない。そんなことを教えてくれた人がいたの。一人で見る景色と、二人で見る景色は、全然違ってたよ。お母さんにお願いがあるの。私の恋をしまっておいてください。私ね、お母さんが言う通り、好きな人と出会えたよ。ちゃんと恋をしたよ。六歳の私に教えてあげたい。あなたは、いつか一人じゃなくなるよ。その人はトラックに乗って現れる。トラックの荷台には、たくさんの桃の缶詰めが積んであって、飴をひとつあげると、バリバリと噛んで食べる。恋をすると、楽しかったことは二倍になるよ。悲しかったことは半分になるよ。それまで待っててね。頑張って待っててね、って。この恋は、私の大切な思い出です。お母さん、どうか、しまっておいてください。大好きなお母さん。また手紙書くね。じゃあね。杉原音。」
朝陽との結婚へと進もうとした音が、練への想いを母に託すように、母親宛てに書いた手紙の内容です。
朝陽と別れ、親代わりに育ててくれた義理の親の介護のため北海道に戻ることを、練に告げずに決めた音。
東京からの引っ越しの日、音はこの手紙を破り、練と出会った日にもらった桃の缶詰めを食べ、家を出て行きました。
道があって、約束があって、ちょっとの運があれば、また会えます
-曽田練「振り出しじゃないですよ。杉原さん、振り出しじゃないですよ。前にここで会った時の杉原さんと今の杉原さん、全然違います。苦しいこともあったけど、全然違います。変わってないように見えるかもしれないけど、全然違います。人が頑張ったのって、頑張って生きたのって、目に見えないかもしれないけど、心に残るんだと思います。杉原さんの心にも、出会ってきた人たちの心にも、僕の心にも。北海道遠くないです。何回でも来ます。道、ありますから。そこ走ってきます。車でも、電車でも。会津に行く約束だってまだ果たしてないです。猪苗代湖だって見せたいし、じいちゃんの種の大根も食べてもらいたい。道があって、約束があって、ちょっとの運があれば、また会えます。」
-杉原音「…会える。」
-曽田練「僕も、杉原さんのことが好きです。」
-杉原音「はい。」
音に会いに北海道までやってきた練。
二人が出会った日に行ったファミレスで、同じようにハンバーグをシェアしながら、練が言った言葉です。
ううん。遠回り。
-杉原音「出て、右行って、左。」
-曽田練「近道?」
-杉原音「ううん。遠回り。」
ファミレスを出て、雪が降る中を手を繋ぎながら駆けてトラックに乗り込んだ練と音。
二人のラストシーンでの会話です。
以上、ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の名台詞集でした。