暴力を止める薬

知的障がい、自閉スペクトラム、
統合失調症の姉を持つ
きょうだい児の芙蓉です。

昨日の続きです。

姉が初めて精神病院へ行った日の夜、
母が泣いていました。

母は、「とうとう精神病院に行く羽目になった」
というような言葉を使った時に、

母にとって精神病院行きが
一番恐れていたこと。
一番避けたかったことだったんだな、
と感じました。

涙を流す母の姿は、悲しみに暮れているというより
悔し泣きをしているようでした。
負けず嫌いが丸出しになっているような……


姉が精神病院から処方された、
薬を飲むようになってからが
また、新たな地獄の始まりでした。

暴力を振るわなくなったのは
よかったのですが

ある夜、私が夜中にトイレに行こうとすると、
廊下の真ん中に、姉がうつ伏せに倒れていました。

びっくりして、よく見てみると、
姉は、ズボンとパンツを膝まで下ろした状態。

お尻を出した状態で倒れて
「うーうー」
と唸っているのです。

「お姉ちゃん、大丈夫?」
と声をかけても、反応はほぼありません。
ただ、「うーうー」と言うだけ。

ズボンとパンツをとりあえず上げようとしましたが、
動かせません。

体が丸太のように固く、
とてつもなく重いのです。

硬直している人間の体って
こんなにも固くて重いものなのか、と
人生で初めて知った瞬間でした。

母を起こして知らせようとは
思いませんでした。

母も疲れているだろうし、
このまま寝かせてあげようとおもいました。

毛布だけかけて、
そのまま放置。

次の朝目覚めると、
廊下にもう、姉はいませんでした。
私は何もなかったように
学校へ行きました。

帰って来て昨夜の話を母にすると

「薬を飲ませるの、とりあえず、止めるわ。
身体を硬直させて、暴力を止めるなんて
ひどい薬!」

と言いました。
なるほど、身体を動かせなくして
暴力を振るわないようにする薬だったのか、

と、私は妙に納得しました。

それから、母と姉の、
地獄のような
精神薬放浪生活が始まります。

続く。

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