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わたぶんぶん わたしの料理沖縄物語 

わたぶんぶん。沖縄の言葉で、おなかいっぱいという意味だそうだ。響きがなんとも可愛い。そして奈良美智の絵が表紙。無印良品の本コーナーで見つけて、沖縄料理のことが書いてある!そんなお気楽さで、早速、図書館で借りてきました。
18の沖縄料理のタイトルがつけられた物語の中は、人との出会いや思い出やご両親のことだったり、もしかして好きになった人のことだったりが、お料理とともに、丁寧に柔らかくそしてせつなく愛しく書かれているノンフィクション。
沖縄の文化、唄、画家、台湾のこと。与那原さんが歩を進めれるままに、どんどんとその奥にまで連れて行ってくれる物語だった。
なかでも、宴会好きだったご両親のエピソードから、与那原さんのご自宅で開かれる宴会の物語『みぬだる』が好きだ。
宴会の最中に、台所に立ちっぱなしにならないように、あらかじめ準備して順番に出せるようにしておき、わたしじしんが宴会を楽しめるようにくふうしておくことだ。そうでなければ、宴会をする意味がない。と。それをふまえたメニュウの構成やお料理とお皿の組み合わせは、お客を喜ばせるためのほんとうのおもてなしだなと思う。
たとえばこうだ。
まずさいしょに「スクガラス」を出す。中略
水をよく切った5センチほどの木綿豆腐の上にかわいく並べる。冷蔵庫に冷やしておいて、宴会スタートと同時に登場である。これは白い豆腐の美しさをいかすために、墨色のおおぶりの皿にする。プチトマトをスライスしたものやイタリアンパセリを添えて、おめかしするのもいい。
素直な気持ちの表現がみずみずしく、登場する数々の沖縄料理はプルプル旨そうで。
でも軽くこういう本だったよと感想を言えない、なかなか重みのある作品だ。
ほっこりというのとは違っていて、ひとつひとつに込められた、沖縄の眩しさと優しさとおおらかさにある光と影が、人との関わりがしっかりとずんときて。
返却までまだ時間があるから、読み返そうと引き込まれる世界。
この本は買います。
2023.6.28

わたぶんぶん わたしの「料理沖縄物語」
与那原 恵
講談社文庫



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