漏斗胸の治療記録(1. 下調べ)
この記事では、いま現在悩みを持たれている方、
または周囲の方向けに、手術前に調べたコトを患者目線で書いています。
治療法や専門医、かかる費用や入院期間について、
調べた限りで網羅的に記録していて全文はかなり長いため、気になる見出しまで飛ばしてお読みください。
※ 術後記事はコチラ
漏斗胸って、そもそもどういう物?
漏斗胸は、胸骨やその周囲が凹む先天的な骨格異常の病気です。
発症率は 1/1000 程度とされ、軽度〜重度まで症状に個人差があります。
凹み具合を定量的に判断する目安として、
4段階のグレードという基準が存在し、専門医の先生により診断をしていただけます。
私(イチ患者)の感覚ですが、圧迫により日常的に息苦しさ等の症状を感じる場合は重度、外見的な懸念のほか日常生活に支障がない場合は軽度といえそうかと思っています。
これらは私の解釈になりますので、下記に医師の方の説明も引用いたします。
漏斗胸なのか、治療が必要か、迷っている方へ
前提として、自身が漏斗胸か、どう相談すればよいか分からないという場合、漏斗胸の診断までは先生にして頂けますが、治療の判断に関しては、
かなりの重度でない限りは先生から手術をすべきだと断定されることはないかと思います。つまり自身で決断する必要があります。
とはいえ、大きなことで色々と迷うかと思いますので、
私が手術を決断するまでの経緯をご参考までに。
大きくは、下記の3ステップだったと思います。
「漏斗胸」で画像検索
漏斗胸の諸症状について検索
手術事例について検索
それぞれ書いていきますと、
1は、他の患者さんのグレードを比較して、相対的に重症度を判断する目的。
2は、自覚症状について、共通のものを調べる目的。幼少期から患っていたことで無意識だったものの少食といった共通点が多い事に気づきました。
3は、手術時の年齢や、前後の改善内容を調べる事で、症状に対する手術の効果をある程度判断する目的で調べました。
これらの事を調べた結果、加齢による症状の悪化も加味して、手術を決断しました。
主に病的な観点ですが、審美的な意味合いで治療をする方も多いようですので、気になる場合は相談されてみると良いのではと思います。
ちなみに、女性の方向けにも傷痕などを加味して男性と異なるアプローチで治療に取り組まれている先生もいらっしゃいました。
もしその辺りも悩まれている場合は、下記のページが参考になるかもしれません。
参考:「胸のかたち」研究室〜漏斗胸専門サイト〜「女性の漏斗胸治療には特別の配慮が必要である」
漏斗胸の具体的な症状は?
下記の通りです。
一般的な症状
猫背(凹みにより、姿勢が悪くなる)
人より体力が少ない、疲れやすい
仰向けで寝づらい、寝られない
少食(胃の圧迫により、量を食べられない)
私の自覚症状
胃の不快感
圧迫感による日常的な息苦しさ
上記に伴う心的不調
中でもとくに胃の不快感は慢性的で、20代半ば以降は明らかに強まり、
胃カメラを飲んだところ「バレット食道」という病気を患っていました。
こうした不調が増えた事から、本気で治療を考えるキッカケにもなったと思います。
成長過程の凹みと、自覚症状の変化
私は幼少期の頃、そもそも骨格の状態が異常という自覚すらありませんでした。
成長とともに凹みが深くなったこともありますが、12歳頃になると範囲としてこぶし大の凹みを目視できる程度にはなっていたかと思います。
20代半ばを過ぎた辺りで、胸部の違和感や体力の低下が顕著になりました。
治療法は手術だけ?
調べた限り、現状では基本的に手術のみのようです。
手術以外の方法として、「バキュームベル(陰圧吸引治療法)」と呼ばれる吸引力によって骨の凹みを治す装置もあるようですが、
幼少期はともかく、ある程度成長して硬くなった骨を吸引力だけで矯正するというのは、かなり厳しい印象を受けました。
手術といっても患者の状態に合わせて複数の方式がありましたので、
その辺りも書いておきます。
方式は大別して「一回法」と「Nuss法」の2種類があり、
後者のNuss法は、これをベースに専門医特有の技術や他の術式を併用する、といった形のようでした。
下記に、それぞれの具体的な説明を引用します。
一回法について
Nuss法(ナス法)
多くは、こちらが適応対象となるのではと思います。
後戻りについては、専門医の先生毎に異なるアプローチと、患者ごとの適切な対応があると思いますので、相談されてみるとよいかと思います。
手術は、バーの挿入〜抜去で、全2回の手術を受けます。
1回目の手術はかなり体力を使うため、受ける際には最低でも術後1〜2ヶ月程度休めるよう、事前に準備される事をおすすめします。
ほかにも、胸骨拳上術(ラビッチ法)や、胸骨翻転術といった治療法を見かけますが、これらの詳細な方法については、あくまで事前情報に留め、
自身に適した方法は専門医の先生へ相談される方がよろしいかと思います。
補足ですが、ネット上で一部の病院の方法が「新Nuss法」と表現されている事がありますが、おそらく患者界隈の中での非公式なものであるようです。
漏斗胸の診断を受けられる場所は?
診療科は、主に形成外科や呼吸器科になるかと思います。
注意点として、クリニックなどで紹介状を書いて頂くと、一応診ては頂けるのですが、専門医の先生でない場合、基本的に
「本人が気にならないのであれば、そのままでも問題ない」
といったお返事のことが多いです。
今後どうなる可能性があるか、実際に自分が治療するとしたら、
といった踏み込んだ内容についてを具体的に伺う場合、やはり専門医の先生に診て頂く方が最短で確実です。
正直、全国で見てもかなり少なく、遠方の病院も多いと思いますが、
稀な病気かつ大きな手術のため、足を運ぶメリットは十分にあると私は思います。※ 実際私も東西往復していくつか受診して決めました。
病院の良し悪し関しては環境や距離、先生が合っているかなど、
個人に依存する要素が多いため、あくまで参考として頂ければと思います。
※ 病院の正確な情報は、各公式ページ等をご確認ください
慶應義塾大学病院 (東京)
2016年に漏斗胸外来開設されたようで、比較的最近治療が始められた病院です。症例数については私が確認したタイミング(2022年2月時)では、2020年時点で、挿入66、抜去19と記載がありました。
上記の時点で(サイトの私が見たページには)独自の術式や特徴について記載はなく、Nuss法か場合により胸骨拳上術を組み合わせて行う、といった内容の記載がありました。
サイト:慶應義塾大学医学部 呼吸器外科「漏斗胸外来のお知らせ」
香川大学医学部付属病院 (香川)
永竿先生という名医がおられる所で、600例以上の手術をこなされているという記載がありました。
香川大学病院の公式サイト内の情報の他に「「胸のかたち」研究室」という専門サイトにて情報発信をされており、病気自体については勿論の事、治療方針、アフターケアについて詳しく記載されています。
こちらの特徴としては、CTデータを3次元化し構造解析ソフトウェアによってモデルに仮想的な負荷を与え力学的な計算を行い、骨の変形を予測するといったアプローチが取られており、凹みに伴う症状改善に加えて審美的な部分での改善が謳われています。
また術後フォローアップとして、先生ご自身が定期的に大阪・東京に出張されており診察をして頂けますので、普段は遠方でもとても心強いかと思います。
松山笠置記念心臓血管病院 (愛媛)
40年以上、症例数は1000例以上、漏斗胸の治療を行っている病院で、
医院長の笠置先生が漏斗胸の名医です。
ここの特徴は、手術方式がNuss法をアレンジした「筋層下Nuss法」というもので、バーのズレに対してのアプローチが取られています。
公式ページの説明を見ると、手術時は(凹みの程度に依るかもしれませんが)漏斗胸の凹んだ部分をエンジンジャッキを使って強制的に持ち上げ線状骨折を起こさせ自然治癒により形状改善を目指すとともに、その支えとなるペクタスバーを、筋層下と書かれている部分に入れる事で、治療中のズレを防ぐといった内容のようでした。
サイト:松山笠置記念心臓血管病院
その他、「漏斗胸外来」を見かけた病院
治療フローとスケジュールは?
かかられる病院や医師の方針により違いがあると思いますが、
私の場合は下記のような形でした。
サイトに記載の専用窓口からメール
初診日確定(〜1週間程度)
受診。手術適応の確定(〜1ヶ月程度)
※ 総合病院のため、半日程度の休暇が必要です。諸々の検査。手術日の確定(〜4ヶ月程度)
※ 終日の休暇が必要です。コロナ情勢や休暇取得のタイミングで長引きました手術(〜3ヶ月程度)
入院(2週間程度)
退院後療養
このときはコロナの影響もあったと思いますが、実際に受けるまで8ヶ月ほどでした。
退院後の行動制限は?
治療法により異なるようですが、見かけた中では、術後 2〜3週で少し走ったりできる物から3〜6ヶ月の運動制限がかかる物まで様々でした。
(制限の内容については、各病院の漏斗胸ページが参考になります)
下記は、実体験の内容をご参考までに。
寝る/起きるの動作に痛みがあり時間がかかる、または補助が必要
電動ベッドを検討するレベル(2ヶ月程度)
前かがみになれない
ならない、で我慢(2ヶ月程度)
重いものは持てない
2Lのペットボトル1本でも、歩くとバーが擦れ痛い(2.5ヶ月程度)
くしゃみ、咳が通常通りできない
抑えつつでなんとか(1.5ヶ月程度)
術前と同じ速度で歩けない
(2ヶ月程度)
治療中は体力が減る
2〜3年の間はバーが入っているので仕方ないと割り切る
仕事に関しては、入院〜退院後の療養でまとめて1ヶ月ほど休暇を頂きましたが、デスクワークのため術後3週間ほどで復帰できました。
立ち仕事の場合ですと、術後1〜2ヶ月ほど休暇を取っている方が多いようです。
この辺りも主治医の先生に確認しておけると良さそうです。
費用は?
通常、3割負担で40、50万のようですが、さまざまな制度を使うことで負担を軽減できるため、下記を参考になさってください。
私の場合、勤務先が加入している保険組合へ高額医療費制度の限度額適用認定証の交付を申請しました。
郵送でのやり取りとなり、多くの組合で長くとも1〜2週間程度で届くようです。
この限度額適用認定証には期限があり、事前に申請した期限を過ぎて使用することはできないため、入院期間など踏まえ注意すると良さそうです。
また、高額医療費制度の軽減はその月の1日〜末日を1つの期間として適用され、月をまたぐ場合には算出が月毎となり支払額が増えるようなので、
なるべく月初めに入院して、月内に退院できると良さそうです。
参考:月またぎの入院は損!高額療養費制度「自己負担が増える」落とし穴
次の引用は、年齢別で受けられる制度の紹介になります。
18歳以上の場合
18歳未満の場合
おわりに
漏斗胸に関する情報は、実際の患者さんによるものがとても少なく、
私が手術を決めたタイミングでは、ふた桁未満くらいの記事数でした。
そのような中、先人の方々とメッセージ等やり取りをさせて頂けた事で手術に備えることができたため、末筆になりますが、参考にさせて頂いた執筆者すべての方へ、感謝申し上げます。
別途、実際に手術が決まった向けに、入院前の準備や術後経過の情報も残していますので、もしよろしければ、ご参考までに。
この記事が、どなたかのお役に立ちましたら幸いです。