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目線を作るところから始まるサーキュラーエコノミー

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース「クリエイティブリーダシップ特論2021」第12回:大山 貴子さん
2021年9月27日 by コク カイ

「クリエイティブリーダーシップ特論2021」は武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース(通称「ムサビCL学科」)が行われている、クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師を招いて、参加者全員で議論を行う形の講義です。受講生たちは毎回の内容をレポート形式でnoteで連載しています。

今回のゲストは株式会社fog代表、大山 貴子さんです。

大山さんはアメリカの大学を卒業してから新聞社、編集の仕事を経て、2015年に帰国しました。 日本における食品安全や環境面への配慮に課題を感じて、フードロス問題を取り上げた企画やワークショップを実施しました。その後、株式会社fog(フォグ)を立ち上げました。

株式会社fogでは、自然と社会とコミュニティの循環と再生を耕すデザインファームを位置付けとして、人材、組織開発のコンテンツを提供しています。そしてfogのほか、elab(エラボ)という食とものづくりの循環的な実践が行うラボも運営されています。今回の講義では彼女の原体験をもとに、人間と自然が共生する循環型社会の実現のために、重要なマインドセットをいくつか紹介しました。

共に目線を作る

サーキュラー変革の起点となるのは人です。さまざまなバックグランドの人を巻き込むために、大山さんがfogとelabの事業を始めたと言えます。例えば、fogは主に行政、企業、市民団体を顧客にしていて、elabは同じ地域に住む近所の人々や職人、生産者などと関係を結んでいます。彼らといかに共視する(共に目線を作る)かは大山さんにとって一番重要な課題として考えています。

なぜ共視することがそこまで重要かというと、その原因は大山さんの原体験にあります。アメリカの大学から卒業後、就職をきっかけに地域におけるコミュニティづくりや市民参加型のソーシャルムーブメントにも体験しました。近所のスーパーは月に数時間働けば、地場産のオーガニック野菜が安く購入できるという仕組みがあり、しかも毎月に仕入れる商品は住民とミーティングした上で決められています。そこでは年収や職業などと関係なく平等に暮らせるコミュニティ環境を大山さんが実感しました。

日本ならではの形でそれをなんとか実現できないかと考えて、帰国した彼女は動き出しました。そこで、日本らしい循環型社会のあり方を考えて、食品安全やゴミ問題などを切り口にして、日常からサーキュラーエコノミーの実践ができる環境づくりに注目しました。誰もが気軽に立ち寄れる茶房、計り売りのフードスタンド、そして何よりも循環可能な生産、輸送、調理方法に心がけたオーガニック野菜が主役のレストラン。大山さんが居心地いい暮らしを実践するための第一歩がここにあります。

地域に溶け込む

大学の時に参加したウガンダやエルサルバドルの支援プロジェクトでは、大山さんは当地の人と一緒に食事して、一緒に生活して、一緒に働き、ました。その中で一般人ではなかなか聞けないような話が聞けて、当地の人と深い絆を築きました。

その経験から大山さんが学んだのは地域の人に溶け込む重要性です。新しいコミュニティに入る時に特にそこが重要です。それができないといつまでも上から目線にいたり、外部者扱いされたりすることがよくあるので、そこで溶け込むような目線を調整することが、地域の人々と一緒に未来を作る前提条件です。

その実践として、大山さんらは島根県雲南市で地域団体と一緒に、持続可能な心地いい暮らしを作るためのプロジェクトを推進しました。そこで市民に対する意識調査を行なった上で気づいたのは、地域が外に発信するのは得意だが、その意識が内部の住民に溶け込んでいない現状です。それを改善するために大山さんたち当地に泊まり、地域在住者、I・Uターン・地元出身者に耳を傾き、彼らの意見をもとに「うんなんローカルマニフェスト」を作りました。

もちろん、言葉にするだけではまだまだ足りません。地域における共通認識を浸透するには、教育現場や行事、いろんなイベントで活用して、少しずつ広がらなければなりません。

これまでの実践の中で、大山さんがいつも心掛けているのは、固有観念に囚われないことです。自分が見えていることや認識していることが全てではないので、その後ろのコンテキストを自分で掘り起こさなければなりません。また、持続可能やサスティナブルなどのようなかっこいい言葉を先走りして、本当の目的を見失うことにならないようにも、自分なりのゴールを見据えながら行動すべきだと彼女が指摘しました。

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