南東北旅行⑤
南東北旅行①
南東北旅行②
南東北旅行③
南東北旅行④
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一泊した名取市を後に帰路に就く。閖上から「なとりん号」で駅へ戻り、東北本線上りホームへ。
ちなみにホームの向こう側に見えるのは駅西側にあるサッポロビール仙台工場。工場見学はやっていないが仙台ビール園というレストランがあり、工場直送ビールとジンギスカンなどの料理を楽しめるとのこと。酒飲みとしてはぜひ、是非とも行っておきたいので、この時点で名取市再訪は確定している。
上り列車に乗り込み数駅、降りたのは槻木駅。新幹線じゃないにしてもせめて素直に東北本線で南下すれば良いのに、そうは行かないのがオタクの性である。ここから分岐して福島駅までバイパスする阿武隈急行線に乗り換える。
阿武隈急行の車両はほとんどが開業時に用意された、「国鉄型」に片足突っ込んだような古くてオタクスキな車両なのだが、運が良いのか悪いのかここでは新型車両(3編成しかいない)に当たった。
オタク的には古い方が好みだが、新型も悪いわけではない。特に窓が大きいのは楽しいところだ。阿武隈急行線は比較的高規格に造られた路線で、トンネルも多いが地上を走る区間は高架や土を盛った高い所を直線的に突っ走ることが多く、車窓の眺めが良いのがお気に入りだ。そんなところなので車窓を大きく楽しめるのは思ったより良かった。
列車は短時間ながら路線名の由来となった阿武隈川沿いを走る。写真ではのどかなローカル線に見えるが、実際は80~90キロくらいでぶっ飛ばしている。写真を撮るのも一苦労である。
さて、槻木から1時間足らずで途中下車をする。ちょっと寄り道したい場所があるのだ。
降りたのはやながわ希望の森公園前駅。この手の第三セクターはどうしてこうも長い駅名を付けがちなのだろうか。見ての通り何の変哲もない途中駅、こんなところに何があるのかと思われるだろうが、お目当ての物は駅から歩いて5分ほどとすぐ近くにある。
こんなところに、というと失礼かもしれないが、ここにはなんと本物の蒸気機関車が走っている。やながわ希望の森公園の園内施設の一つではあるが、阿武隈急行の駅側から公園の入口までを結ぶれっきとした交通手段でもあるし、よくあるアトラクションのバッテリー駆動ではなく石炭を炊いて走るマジのやつである。
とはいえ正直そこまで期待しておらずついでのようなつもりだったのだが、実際に熱気を放ち石炭の匂いを漂わせる「蒸気機関車」を目前にすると否応なしにテンションが上がる。(ちなみにオタク的な話をするなら、JRで走っているような普通サイズのSLなら走っているものも多いのだが、ナローゲージと呼ばれる小型鉄道でのSLは国内でも数例しかなく、その中でもここは随一の本格度合いなのでその意味でも盛り上がっていた。)
なお写真は線路上から撮影しているが、これは車掌さんが立ち入りを許可してくれたものである。昔の鉄道であったと言われる(そして今の鉄道ではまずありえない)こうしたゆるさも味わうことができ感無量であった。
オタクの奇行を事細かに解説することも無いと思うので省略するが、この後はもう乗ったり撮ったりを繰り返していた。何なら公園内を散策する予定だったのだが全部やめてこっちだけにした。それくらい一瞬でハマってしまった。実際、きさくな車掌さんや機関士さん曰く、鉄道ファンの中でもさらにマニアックなナローゲージファンには関西からわざわざここ福島までこのSLを撮りに来る人もいるのだそうだ。確かにそれだけの魅力がある。「君は埼玉だから近い方だよ笑」と言われたがその通りである、また来ます(実際に1ヶ月も経たないうちに再訪しました)。
ただやはり公園の施設、店じまいは早く暗くなる前に終列車である。せっかくなので入庫作業を見物させてもらった。転車台でくるりと回ってねぐらの前にやってきたSLに、給水しつつ錆止めの薬剤を入れてやり、燃えカスを線路下に捨て、ボイラー内の煤を掃除してやる。作業をしながら機関士さんが色々と話してくれたが、この機関車のことを「じゃじゃ馬」と呼んでいたのが、古くて扱いづらくも愛着のある様子を感じさせて印象的だった。
私はここをすっかり気に入ってしまった。維持も大変とのことだったが、末永く走り続けてほしいものだ。
素敵な鉄道と鉄道員さんに別れを告げ、阿武隈急行の駅に戻った。
福島行きは乗りたかった古い車両。阿武隈急行はこの車両も車窓も気に入っていて、実はこれが3回目の来訪であった。鉄道オタクの間でもそこまで注目されている路線ではないのだが、だからこそ“my favorite”として意識的に来たい場所だ。
新しくお気に入りになったSLを存分に楽しみ、お気に入りの列車で帰路に就く。何とも贅沢なひとときであった。
福島駅で新幹線に乗り換え、満足のうちに帰宅した。
以上、2022年7月に行ってきた南東北旅行1泊2日の旅行記でした。
旅を重ねてきて感じるのは、旅の満足度は長さではないということです。確かに2泊3泊それ以上の旅行はボリューミーですが、1泊でも丁寧に見たいところを味わって行けば、とても充実した旅にすることができます。その意味で今回の旅行はとても良いものとすることができました。
文章は努めて平易に分かりやすく書いたつもりですが、そもそもの内容自体がオタクそのものなのでオタクでない方も楽しんでいただけたかはちょっと自信がありません。少しでも楽しんでいただいていれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。