春の西旅・九州へ⑥
時刻は9時前。まだ1時間ほど自由時間があるので、9時開館の九州鉄道記念館に行ってみることにした。
JR各社が各々設けている鉄道博物館的な施設の九州版だ。ここは九州の鉄道に特化しており、その始まりの地である門司港という立地も適している。
展示物を逐一紹介してもきりがないので割愛するが、1時間程度の時間潰しにはちょうどよかった(もう少しじっくり見たかったが)。
門司港駅に戻り、いよいよこの旅のメインディッシュへ取り掛かろう。受付を済ませ、売店での買い出しも済ませ準備は完璧だ。ホームに上がってそのときを待つ。
今回のメインディッシュ、それは門司港発筑豊線経由熊本行きの客車列車「急行天草」だ!SL人吉用客車を用いたツアー団臨は何度か運行されており、この日も門司港までは夜行で来ていたのだが、敢えて昼行の方を選んだ。由緒正しき九州の玄関口である門司港駅から、5時間かけて熊本へ至る情緒あふれる列車である。
往年の姿を残す門司港駅のプラットホームにレトロ調の人吉編成が溶け込む。関門海峡を船で渡って来たのも全てこのためであった。九州の玄関口・門司港駅から長距離客車列車に乗り込み移動するという、きわめてクラシカルな体験を味わえるのだ。
オタクまみれかと思っていたが、昼行ということもあってか家族連れや老夫婦の姿もあり微笑ましい。
開扉後、自席に荷物を置いたら一旦最後尾へ向かう。この歴史的ターミナルの頭端式プラットホームからの旅立ちを展望車から見送ることができるのが、早くもこの列車のハイライトだからだ。
列車は定刻通り発車し、門司港の街を後にした。素晴らしい幕開け、さあ5時間の列車旅の始まりだ。
自席に戻ると早速。旅をするということはウィスキーのポケット瓶を持ち歩くということと同義である。
この客車はSL人吉(熊本→鳥栖)で乗車したことがあるが、今回はDL牽引である。速いスジらしく、古い車両をかばうような遅い運転ではなく、第一線的な快走する客車を楽しめる。
この辺りの鉄道事情には詳しくないが、門司からしばらくは通常の旅客線ではなく貨物線を走っているらしい。ホームの無い線路を快調に飛ばしていく。
良い感じに酔いが回ってきた。これがあと4時間もあるのだから最高だ。
「急行天草」は折尾駅でしばしの停車。ここから列車は筑豊線へ入り、博多をショートカットして原田、鳥栖を目指していく。