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スノーボードの醍醐味は自然の中で風を切って走る疾走感と非日常
よくスノーボードのフレックスについて、「硬い、柔らかい」で表現をする人がいますが。スノーボードは「硬い柔らかい」ではなく、「どこが硬くてどこが柔らかい」が大切です。
ようするに、スノーボードは全体を硬くしたり、全体を柔らかくしたりしているのではなく。ノーズからテールにかけて、どこを硬くしてどこを柔らかくするかで特徴を出しています。
例えばこんな感じです。
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あくまでも例であって、必ずこれが当てはまるとは限りませんが、だいたいこんな感じです。
そして、このフレックスバランスをサイドカーブなどのアウトラインに合わせて、それぞれ微調整してモデルごとの特徴を出しています。
■スタンス幅の自由
フレックスのパターンは3種類あると言いましたが。現在、主に使われているフレックスバランスは②の「前後が硬くて、真ん中が柔らかい」タイプが圧倒的に多く、カービングやレース系のボードには③の「前が柔らかくて、テールが硬い」タイプもよく見かけます。
そして、①の「前後が柔らかくて、真ん中が硬い」タイプのボードはいまほとんど見かけることはありません。
なぜか?
これに関しては様々な理由があると思いますが、あくまでも私なりの見解で言わせてもらうと。
①のタイプは「スタンス幅の自由が低くなるから」です。
スタンス間を硬くさせているボードで、スタンス幅を広げてしまうとさらにスタンス間が硬くなって曲がれなくなり。さらにスタンスをズラしてしまうと、柔らかいところにバインディングの圧がかかり変な曲がり方をしてしまうことがあります。
そうなると、スタンス幅の調整に制限があり、推奨スタンスで乗ってもらうか、狭くする分には大丈夫という感じになります。
②のタイプだとスタンス間を柔らかくしているため、スタンス幅を広げようとズラそうと。真ん中が柔らかく簡単にたわむし、捻じれるから、スタンス幅を適当にセットしても曲がれるんです。
ということは、①のタイプよりも、②のタイプの方がより多くのユーザーさんに対応ができるボードになるということです。
■安定感
私が手掛けるブランドのFOSSIL SNOWBOARDSは、モデルごとの加減はあるにしろ、基本的には①の「前後が柔らかくて、真ん中が硬い」タイプです。
これは、ALL MOUNTAINⅡ、THE CURVE、BANKED-R、NATURAL、全てそうです。
なぜこのタイプにしているかと言うと、真ん中がしっかりしていた方が足下に安定感を感じるので、スピードを出しても怖くないし。ターンをするときにボードをたわませると、力を抜いたときの反発が強くなるので加速にもつながります。
さらに言えば、ノーズとテールがしなやかになっていることで、荒れた斜面などでデコボコを吸収してくれるので、ボードが暴走しにくくなります。
これが反対に、ノーズとテールがしっかりしているタイプだと、ボードの前後でデコボコを拾ってしまうので、ボードが暴れてしまいます。
ちなみにこちらは、白馬47スキー場で一番斜度のある「R-3」コース(最大斜度32°)をBANKED-Rで滑走している映像です。
荒れている斜面をこれだけスピードを出して滑れるのは、間違いなくフレックスバランスのおかげです。
■お客さんに合わせた
私にとって、①タイプのフレックスバランスが好みなんですが、ほとんどのメーカーさんはこのタイプのフレックスを使いません。
それで先日ユーザーさんから、
「なぜ名取さんはこのフレックスバランスに行きついたんですか?」
という質問を受けまして。
これについて回答をさせて頂くと、
「昔はこのパターンのボードが多かった」
ということです。
ようするに、昔は「ノーズとテールが柔らかくて、真ん中が硬い」タイプのボードが当たり前にあったんです。
だから別に珍しくもなんともないんです。
じゃあなぜいま①タイプのボードが無くなってしまったのか?
ここからは私の見解ですし、少々キツイ言い方をすると。
メーカーがお客さんに合わせた。
だと思っています。
さきほども言ったように、①タイプの場合は力強くスピードにも耐えられるし加速力もあるので、昔はそういったボードが多かったし。メーカーもこれがスノーボードだと言わんばかりに自信を持って販売していた。
しかし、スノーボードブームが下火になりモノが売れなくなると、今度はお客さんに合わせた商品を作るように。そこへ2000年代前半あたりから、ワイドスタンス、ダックスタンスが流行ると、スタンス幅を広げて乗りたいという要望が増え。そうなると、スタンス間が硬いボードは敬遠され、スタンス間を柔らかくしなきゃ売れなくなった。
それにより自然と真ん中が硬いボードは消えた。
そのように私は見ています。
■要望に応えられない
スノーボードの醍醐味は、自然の中で風を切って走る疾走感、そして非日常を味わえることだと思っています。
だから私はスムーズに気持ちよく、そしてスピードを出しても安心できるボードが好きです。だからスタンス間は柔らかくしたくない。
だけどそうなると、スタンス幅を広げたいという要望には応えられない。
でもそれでいいと思っています。
やはりこの気持ちよさを体験してもらうには、お客さんの要望に応えていては実現できないんです。
こんなことを言っては何ですけど、やはりお客さんはその時の流行りに流されて要望を言うことが多い。それにいちいち反応していたらブランドとしてブレてしまう。
だから私は試乗会に力を入れて、1人1人に「これはこういう理由で、こういう仕組みだから、こうやって乗ってください」と説明をし続けているのです。
あまり卸売をせずに直販をメインにしているのも、それが理由です。
仮に、FOSSIL SNOWBOARDSを沢山のお店に卸して販売をしたら。何の説明も無しに購入してしまい、適当にバインディングをセットして、「乗りにくい」なんて言われるのは目に見えています。
この辺はもどかしいところですが、ブレないためにもコツコツ販売をしています。
■BALANCE
FOSSILという単語の意味は、「時代遅れ・化石」などです。
ここまで読んで頂いたら分かると思います。このFOSSILに込めた想いは、いまとなっては時代遅れのボードを作っているから。
でも私は本当に昔ながらの、「強くて速い」スノーボードに憧れているし。これからも必要だと思っています。
それに私はスノーボードをはじめてすぐに、BURTONのBALANCEというテリエ・ハーカンセンのシグネチャーボードに出会い。ずっとこれに乗って滑っていました。
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当時でも群を抜いてバキバキに硬く、「こんなの誰が乗るの?」というようなボードでしたけど。むしろ私はこうしたボードを「乗りこなす楽しさ」みたいなものもあったし、何より上手くコントロールできたときの爆発的なスピードとパワーは、他では味わうことのできない体験だった。
だから、スタンス幅の自由が無いと言われようと、ワイドボードが増えてきた現在では「細い」なんて言われることも増えましたけど、何を言われようとブレるつもりはありません。
本当に自分が良いと思うものを作らないと心からおススメできませんから。
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ぜひ試乗会で体験してください。
■2月4日(火)・5日(水)・6日(木)
岐阜県・めいほうスキー場
■2月16日(日)・17日(月)※ショップ主催
栃木県・ハンターマウンテン塩原スキー場
■2月18日(火)・19日(水)・20日(木)
群馬県・川場スキー場
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