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ギフトボックスを作りました。(note始めました)
ナショナルデパート秀島です。
タイトル通り、ギフトボックスを作りました。
というよりも、note始めました。
誰だお前は、という向きもあるかと思いますので自己紹介しておきますね。
僕はナショナルデパート株式会社(正式名称)という会社の代表取締役(難しく言うと)やってます。食品や生活雑貨の企画・デザイン・製造・販売をやってます。資金調達とかしてないので、いつもキャッシュがショート気味です。
関連会社が1社ありますが、それはまた今後書いていきます。新しいものを作る会社と人のためになる会社の全く儲からない2社の代表をやってます。 いわゆる一人社長会社を二社やっています。
CANOBLE
ナショナルデパートでは、今はCANOBLE(カノーブル)という名前の食品プロダクトやってます。その昔、創業当時はカフェをやってました、そこからベーカリーカフェになり、ベーカリー専業になり、駅なんかで売ってるおみやげ菓子を作ったりしてました。
CANOBLEは8年前に立ち上げたブランドで、当初は食のコスメティックというよくわからなものを作ってましたが発売日が震災とバッティングして断念して、昨年2018年11月にリブランドして復活させました。
現CANOBLEは「ブールアロマティゼ」が主力商品です。平たく言うとバターです。味のついたバターです。もっと言うと香りのついたバターです。もっと言うと色彩のついたバターです。
こういうバターです。(2018年11月発売当時)
こうやって作ってます。(ました)
過去形なのは、いまは3Dプリンターを活用してバターを作っているからです。そうです、エンジニアですね。今はエンジニアと言うとIT系の何者かという感じで、プロダクトと言うとサービスやアプリを指すようですが、僕の中ではすべてフィジカルなものを指します。時代遅れですね。
3Dプリンターを活用したバターの製造について詳しくはプレスリリースを読んでください。大学で工場経営学やってたマンの奮闘を感じていただけると思います。
ちなみに、これが3Dプリンターで造形されたバターのマザーです。
内向的な僕
僕は今流行の発信型のシェフと言うよりは、内向的で人との接触を拒み、ひたすらに開発に向き合っていくエンジニアタイプのシェフであり、経営者であり、技術者であり、研究者であり、デザイナーで、一人社長です。
なので、製法を開発して、量産の製造ラインをつくって、パッケージデザインをつくって、パンフレットをつくって、商談して、製造して、金策にも走り回ります。目に見えるものだと、パッケージデザインとかは評価されています。これも、ある程度まで仕組み化しているので「ひとりAdobe SENSEI」と呼んでいます。
デザイナーと言う言葉に引っかかった人もいると思うので書いておくと、20年前、学生のときに都内でWEBデザインの会社を作りました。スタイルシートも一般的でない時代の化石のようなWEBデザイナーです。
いまのサイトも昔の感覚のまま頑張ってつくってます。
トップページを作り変えました。
— ナショナルデパート / CANOBLE カノーブル (@nationaldepart) December 4, 2019
クリスマス感出たでしょうか。 pic.twitter.com/PqqSigO1lJ
これまでの経歴の序章
その後は、今でこそ一般的になった「UI」を作ってました。その当時だと「GUI」グラフィカルユーザインタフェース(Graphical User Interface)ですね。Flashで作ってDirectorに組み込んでDVDROMにしてドングル代わりに使うようなものを主に作ってました。
当時はフラッシャーと呼ばれていたような部類です。Lingoというスクリプトもありましたね(余談です)。企業内の主にグラフィックに関係するものを管理するシステムのUIを作ってて、その流れでサイト上で擬似3次元表現を使う工作機械系や自動車系のいろいろをやってました。
PCをつかって仕事をするようになったのは、人工衛星が地球の周りをクルクル回る3DCGの映像を作らされたのがキッカケです。なんかよくわからないままにやったらできたので、向いているんじゃないかと思って会社を作りました。
当時のあるあるですが、レンダリングを開始して箱根に温泉旅行に行って、2泊3日して帰ってきてもまだレンダリングしてたりとか。
しかし今は3Dプリンターでバターを作っているので、人生というのはよくわからないものですね。人は気を抜くとパンやバターを作り始めます。あなたも気をつけてください。
パンを焼いていた時代
なに?パンも焼いていたの?
という向きもあろうかと思うので、パンのときの話も少ししておきます。
これがパンです。
17年やってます。
岡山の本社工場では今も焼いていますが、東京工場では焼いていません。なぜなら売れないからです。美味しいです。とにかく美味しいです。しかし美味しいものが売れるというのは幻想です。今でも一部百貨店のポップアップなどでは並んでいたりいなかったりします。
パンはひとつが5kgの大きさで焼き上げられます。名前を「グランパーニュ」といいます。「大きい」と「カンパーニュ」をかけ合わせたフランス語っぽい造語です。気に入ってます。
なんで5kgなのかというと、この大きさで焼かないと美味しくないからです。ウソです。1kg程度から美味しく焼けます。これは重量あたりの表面積をいかに少なくするかという考え方で、パンの焼成後のデンプンの老化を考えるとパンは大きくすればするほど良いのは分かりきったことなのですが、売りにくいです。なので一般的なパン屋さんには、買いやすいサイズだけどデンプンが老化した小さなパンが並んでいます。
グランパーニュは、クラム(パンの内部)とクラスト(パンの外皮)で組成を変えることで熱の入り方とデンプンが糊化(α化)するタイミングをずらせます。ここに僕のパン焼きの設計技術のすべてが詰まっています。
パンを新しく発明し直すと意気込んだ時代
あと、僕は新しいものを作るのが好きなので、パンでも新しいことをしました。それが着色着香です。これは今のバターにも生かされています。17年前は「パンに色を付けるなんて」とよく怒られましたね。常識は人を殺します。
パンというものは、常に業火(トースター)で焼かれ、脂(バター)を塗りたくられ、ドロドロとした不純な粘液(ジャム)をぶっかけられる存在でしたが、その行為自体を否定していこうという運動の発露がグランパーニュです。
何も塗らなくても、霧吹きで水をかけてトースターでリベイクすればふわふわもちもちのパンに仕上がります。内部の生地にフランボワーズやピスタチオやカカオなどが練り込んであるのでそのままでも美味しくお召し上がりいただけます。
グランパーニュの二層構造は、硬い殻に覆われた果実や木の実からインスピレーションを得て、しっかり焼き込まれた外皮の中に内包されたパン生地に果実や木の実のような芳醇な香りと鮮やかな色彩を与えて、自然物の生命感をデザインに取り入れました。
色彩計画は陰陽五行説に習って「木火土金水」の5色にゼロ概念の白を足して6色で展開。これは割烹の料理長に教えてもらったカラーパターンです。
陰陽五行、シックスセンスをパンに取り入れたのは、パンとは種子が芽吹き、葉を茂らせ、花を咲かせ、サイクルを「発酵」というプロセスの中に内包しているということを表現するためです。全ては土に還る。その土に還るプロセスは分解と発酵でしか無いからです。
で、この着色着香のテクニックを使うと、世の中のもの全てをパンで表現できるようになります。それがこれ。
パンで肉を作りました。
名付けて「グランパーニュ・ヴィアンド(肉)」です。
これ、形だけではなくて中身の成分も肉にしています。
熟成肉の牛脂を煮溶かして香りを強め、筋膜の油かすごとパン生地に練り込んでいます。色付けには紅麹色素を使っていますが、少し彩度を鈍くするために牛レバーから抜き取った血液を酸化させてレバーごとハーブで煮込んだものを水代わりに使っています。
これをフライパンで焼き直すとまるで熟成肉のような味になります。牛肉のたんぱく質をパンのデンプンに置き換える、香りと味と色を要素として抽出して全く別の組成の物体に置換するというテクニックです。僕のオリジナルだと思います。
ちなみに、このテクニックを使うとこんなものも作れます。
にぼしです。
名付けて「ニ・ボン・パーニュ」
伊吹島産の白口煮干しの粉を練り込んでいます。
これも2層構造(スケルトン・インフィル)によって煮干しのドロドロの生地を外皮の構造体によって支え、デンプンの老化を防ぎながら煮干しの香りが外部に漏れないよう特殊な作りになっています。
ボルディエ氏と高山シェフとの出会いがブールアロマティゼを生んだ
このニ・ボン・パーニュに煮干しが練り込まれた「にぼバター」をのせるとうま味の爆弾と化します。煮干しをそのまま食べているかのような錯覚を起こしますが、パンの焼成温度(高温)で火入れをしているので、今まで食べたことのないような味に仕上がっています。ちなみに、この「にぼバター」を発明したのは、僕が敬愛する高山シェフです。
このにぼバターが、僕にブールアロマティゼを作らせる最終的なトリガーになりました。パリで出会ったボルディエのバター、競馬の師匠でもある高山シェフの「にぼバター」、そして僕のグランパーニュのテクニック、この3つが合わさってブールアロマティゼは誕生しました。が、この話は長くなるのでまたどこかで。
なので、パリでポップアップを出していたときに出会ったボルディエ氏、東京だと高山シェフは僕の中で特別な存在です。新しいものが生まれるときには必ず系譜が存在します。それを無視しては語れないわけです。すでに昔からあるものに勝手に名前をつけてオリジナルだと言いはる人も多いですが、ちゃんとリスペクトしましょうね。
秀島との約束だぞ♡
高山シェフのお店、日本橋「sisi煮干啖」sisiNibotan オリジナルのにぼバターはネットストアでもご購入いただけます。
ここまで書いてきて、僕は技術の人なんだなあ、と自分でも痛切に感じ入ってます。僕はコミュニケーション寄りではなく、完全にクリエイティブ寄りのシェフであり、義を尊ぶタイプの経営者であり、古いタイプのデザイナーという感じです。
で、これまでのフィジカルプロダクトのクリエイティブ人生のすべてを賭けてデザインしたプロダクトがあります。*
それが、ギルトフリーバターです。
悲運のプロダクト「ニュートリション」「ボーテ」
先月、これまでの食のプリダクト人生の集大成となるはずだったプロダクトをリリースしました。
これはカロリーや脂質を大幅にカットした未来のバターとも言うべきプロダクトで、バターの組成をリバースエンジニアリングの考え方で脂質とたんぱく質のバランスを組み替えた、今までの常識を覆すバターです。
開発にまるまる2ヶ月間を費やしたギルトフリーバター。
詳しくはプレスリリースを読んでいただければと思います。
しかし、このギルトフリーバターで思わぬブレーキがかかりました。
いやいや順調にリリースしてるじゃない、という向きもあるかと思いますが、で、なにが問題なのかというと、以下の2本のリリースです。
日本初、プロテイン強化バター「ニュートリション」と、ビタミン・ミネラル強化バター「ボーテ」です。
この2つのバターを作るためにほぼ2ヶ月を費やしたといっても過言ではないほどに力を入れて開発しました。
ちゃんとやってますねー。
食パンに塗るだけでビタミン・ミネラルやたんぱく質を摂取できるバターです。コレいけると思ったんですよね。でも発売を中止しました。
なぜか、
メディアの反応が皆無
だったんです。
これは僕の広報人生の中で初めての経験でした。
プレスリリースがまったくどのメディアにもかすりもしなかったんです。こんなこと今までありませんでした。
これまでのボディーメイクフード市場に無い、一般食品のボディーメイクフード化という新たな試みで、しかも製法はアメリカの大学で論文が出たばかりというレベルの世界最先端。
もう、驚きました。
メディアが取り上げないものは売れない、というのが僕の広報としての考えなので、市場に出すのをいったん止めました。代わりに通常のギルトフリーバターのみを販売。
今後、このボディーメイクバターを発売するかどうか、ということですが、いまのところ未定です。どうしてメディアが取り上げなかったのかの分析をしてみないといけないので、プロジェクトはいったん終了しました。
これについてもまたどこかでいつか書きたいと思います。
通常のギルトフリーバターはご購入いただけますので、気になる方はどーぞ!
と、ここまで書いてて、ギフトボックスについて書くのを忘れてましたね、このままだとタイトル詐欺です。
と思ったのですが、ここまで長くなってしまったので、ギフトボックについてはまた次回ということで。
いつになったらギフトボックスの話にたどり着くのかは、人生と同じ永遠のテーマとしておきます。
会社のサイトです
ECです
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