ラムザイヤー教授の論文が学業不正と主張する研究者
ラムザイヤー教授の論文には複数の学業不正などがある、と主張する研究者5人が書いた文章がUPされています。
英語でそれなりの文量なので全部は見てませんが、指摘のうちの1つに気になった点が。
【支那渡航婦女に関する件】の記述をラムザイヤー教授が引用している箇所について、「黙認」の部分は引用が省かれている、という指摘。
その上で、この「黙認」の意味は、婦女売買に関する国際条約(【婦人及児童の売買禁止に関する国際条約】とその一部修正をした【醜業を行わしむる為の婦女売買禁止に関する国際条約】)に違反していることを政府が認識していたものではないか、という主張をしています。
しかしこの部分、「婦女売買に関する国際条約の趣旨に悖ること無きを保し難き」を"It will also be difficult to guarantee that recruitment does not contravene international treaty agreements concerning the trafficking of women"と訳しているのですが、「趣旨」に当たる訳語がありません。
「条約(法規)違反ではないか」という認識と、条約(法規)の「趣旨に違反」しているのではないかという認識は、まったく別ものです。
後者は、ある行為や状態が「条約(法規)違反であるかは断定できないがその疑いもある」、というようなレベルから、「違反ではないがその実質からすると道義的に非難される」というようなものまで、認識に差がありますが、いずれにしても確定的に違反だという認識ではありません。
ラムザイヤー教授の引用が不十分だ、と主張している者がこのような訳出の漏れをしているのは少し気になります。
この「黙認」の意味についてはよくわからないのですが、学術上の論点だろうと思われるので、ここでは触れないでおきます。
なお、今回取り上げた「支那渡航婦女に関する件」については、過去に関連文書について書いたことがあります。
以上
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