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「WHOがCt値を下げろと指針を出した」というデマ

「WHOがCt値を下げろと指針を出した」というデマとCt値について。

SARS-CoV-2の検出にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する核酸検査(NAT)技術 2021年1月20日 医療製品アラート ジュネーブ
WHO guidance Diagnostic testing for SARS-CoV-2 states that careful interpretation of weak positive results is needed (1). The cycle threshold (Ct) needed to detect virus is inversely proportional to the patient’s viral load. Where test results do not correspond with the clinical presentation, a new specimen should be taken and retested using the same or different NAT technology.

まず、どこにも「Ct値を下げろ」などとは書いてません。

「以前から言われていた注意喚起」はたとえば以下

Diagnostic testing for SARS-CoV-2 Interim guidance 11 September 2020
https://apps.who.int/iris/handle/10665/334254

"Ct values" で検索すれば書いてあります。

Ct値に関するデマを言ってる人たち、テドロスがどうのこうの言ってWHOは中共の手先だの言ってる人間がWHOのリリースを一部真に受け、加えて捏造してWHOを権威として使ってるってどういうことでしょうね?

Ct値に影響を及ぼす要素はウイルス量に限らない

Ct値デマについて要素

先述のWHOの1月20日の通知では「Ct値はウイルス量に反比例する」と書いてありますが、それは必ずしもそうではないこと、他の要素も影響するということが書かれていない点で注意です。

Date: 05/08/2020 Evidence Based Advisory on Correlation of COVID-19 Disease Severity with Ct Values of the Real Time RT-PCR Test 
Indian Council of Medical Research Department of Health Research, Ministry of Health and Family Welfare, Government of India
https://www.icmr.gov.in/pdf/covid/techdoc/Advisory_on_correlation_of_COVID_severity_with_Ct_values.pdf

Ct values also depend on how the sample has been collected…Ct values are also determined by technical competence of the person performing the test, calibration of equipment and pipettes and analytical skills of the interpreters.

「Ct値は、サンプルの採取方法にも依存します…Ct値は、検査を行う人の技術的能力、機器やピペットの目盛り、分析者の分析能力によっても決定される」、と書いてあります。

Ct値は設定値ではなく測定値且つ基準値

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日本の新型コロナウイルスのPCR検査では40サイクル以内に閾値を超えたサンプルを陽性と判定しています(国立感染症研究の検査手引きより)。2月から一貫して変わっていません。第2波の時に陽性と判定するサイクル数を増やしたから感染者が増えたんだ、という説もデマです。島津製作所のPCR検査試薬の説明書には45サイクルと書いてあるのを引用してミスリードしているようですが、
40サイクル以内に閾値を超えるかを判定しているので、検査工程ではそれ以上のサイクル数を行うのは当然です。この試薬では45サイクルを行い、何サイクル目で閾値を超えたのかを見ているのです。41~45サイクルで閾値を超えたサンプルは陰性と判定されています。他にも試薬によっては50サイクルを推奨しているものもある様です。実施するサイクル数は40サイクル以上だと検査時間が長くなることに影響するだけで、陽性判定には影響しません。これでよく誤解されているのだが、PCR検査は40サイクル以内のどのサイクル数で閾値を超えているかを判定しているのであって、40サイクル終了後に増幅した核酸量から判定しているのではありません。それぞれのサンプルごとにサイクル数を算出しています。

PCR検査におけるCt値、サイクル数について一番感覚を掴みやすいのがここだと思います。

「感覚を掴みやすい」と書いたのは、Ct値(Threshold Cycle)という言葉の使い方がいろいろ調べても統一感が無いため、安全を取った表現です。

https://www.takara-bio.co.jp/research/prt/pdfs/prt2.pdf なんかを見ると

あるサンプルについて核酸増幅曲線がある閾値(threshold)に達した際のサイクル数がCt値

という言葉の使い分けがなされています。

Ct値はあるサンプルについての「点」を指す言葉というのがどうやら厳密な用語法らしい。

サイクルっていうのはウイルスの核酸(DNA)増幅の処置を行うこと。

ただ、ネット上で研究者やら医師やらの発言を見ると、「何サイクル以内に閾値を超えるものを陽性判定とするか」という陽性判定の基準値のことをCt値として言及している人を見かけます。

この意味の言葉は、「カットオフ値」と呼ばれるのが一般的のようですが、カジュアルな言い方でCt値と呼んでるんでしょう。

この場合の「Ct値」の用語法は測定値(サンプルによって異なる)且つ基準値=基準サイクル数(日本の場合は40)ということですね。

「Ct値を設定」と書くと誤解が生じると思います。

「サイクル数」「閾値」「Ct値(測定値)」「陽性判定基準サイクル数(基準値としてのCt値)」みたいな言葉の使い分けをすると混乱しないのかなと思います。

(な~んか、「エアロゾル」に関する感染症学系・臨床医師系と生物学系の用語法の齟齬みたいな話があるんじゃないか…?)

Ct値を35あたりにという議論には尾身教授も関心

で、「Ct値は今より低くなるべきでは?」という主張にはトンデモ論とまっとうな議論が混在している点に注意です。まっとうな議論は基準値としてのCt値として言及しており、この話は上記引用記事の最後に出てきます。

https://www.naika.or.jp/jsim_wp/wp-content/uploads/2020/11/nichinaishi-109-11-article_Zadankai.pdf
尾身 Ct値がどの程度だか私は今研究しているわけではありませんが,いろいろな人のお話を聞くと,35ぐらいがよいのではないかという感じではあります.

この発言を都合よく取り上げる人が居るのですが、尾身教授が言っているのは陽性判定の基準値としてのことです。

詳細は引用記事を見ていただくとして、少なくとも言えることは「Ct値(陽性判定の基準値として)が35じゃなくて40だから感染性の無い陽性者が多く出ている」は、デマです。

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Nathan(ねーさん)
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