なぜか無視されるギリシャ「特別最高裁」のドイツの主権免除を肯定した判決:リドリキ村事件訴訟=マリゲロス対ドイツ連邦共和国事件
ここでも触れてますがタイトルに書いた上でこの点に絞って書きます。
韓国慰安婦訴訟肯定派は、「新たなトレンド」としてギリシャやイタリアにおけるドイツ軍の行為に対する訴訟を引き合いに出します。
が、なぜか無視されているものが2002年9月17日の【ギリシャ「特別最高裁」のドイツの主権免除を肯定した判決】(リドリキ村事件訴訟=マリゲロス対ドイツ連邦共和国事件。多く参照されてる出典として [2003] 56 Revue hellenique de droit international 199 )
これは2000年5月4日にギリシャ最高裁でドイツの主権免除を除外した判決(ディストモ事件訴訟。判決の執行を法務大臣が認めなかった。)とは別事件です。
リドリキ村事件訴訟特別最高裁判決はディストモ村事件最高裁判決の結果を否定するものではありませんが、主権免除の解釈を変更したものです。
ICJ判決とギリシャ・リドリキ村事件訴訟=マリゲロス対ドイツ連邦共和国事件
当該判決はドイツvsイタリア(ギリシャ訴訟参加)のICJ判決でも引用されています。
国際司法裁判所 主権免除事件 (ドイツ対イタリア; ギリシャ訴訟参加) 2012年2月3日判決
76. 本件の主題であるイタリアの諸判決を除けばイタリアの主張を支える司法実行が存在する唯一の国はギリシャである。ギリシャ最高裁判所のディストモ事件2000年判決は、それが武力紛争時の軍隊の行為には適用されないことに全く言及せずに域内不法行為原則について広範囲な議論を行っている。しかしながら ギリシャ最高特別裁判所はマリゲロス対ドイツ連邦共和国事件判決においてディストモ事件における最高裁判所の論理を否定し、ドイツは免除を享受すると判断した。特に、最高特別裁判所は域内不法行為原則は武力紛争遂行における国家の軍隊の行為には適用されないと判断した。この判決はディストモ事件の結論を変更するものではない。しかし今後外国軍隊のギリシャにおける行為が原因であると主張された賠償手続における免除の可否という同じ争点を扱うギリシャの裁判所その他の機関は、マルゲロス判決以降に慣習国際法が変化したと考えない限り、最高特別裁判所マルゲロス事件判例に拘束されることになるとギリシャは当裁判所に説明した。マルゲロス判決以降、第二次大戦中のドイツ軍の行為による損害であると主張してドイツに賠償請求した手続において免除を拒否したギリシャの裁判所は存在せず、最高裁判所も2009年決定において傍論ではあるがマルゲロス事件の論理を承認したとドイツは指摘した。マルゲロス判決と2009年の事件の傍論、更にディストモ判決の執行をギリシャ自身の国内で許可しなかったギリシャ政府の決定、欧州人権裁判所のカロゲロプールー他対ギリシャ・ドイツ事件(2002年12月12日決定)において前記決定を擁護したことを考慮すると、ギリシャの国家実行は全体としてイタリアの主張を裏付けるものではなく、むしろ否定するものであると裁判所は結論する。
「武力紛争遂行における国家の軍隊の行為」
さて、そうすると、韓国慰安婦訴訟肯定派としては、このICJ判決の射程から逃れようとするためには「武力紛争遂行における」という点に着目するでしょう。
曰く「慰安婦の扱いは武力紛争遂行におけるものではない」と。
それはともかくとして、ギリシャの最高裁判決だけ出して「世界の新しいトレンド」と指摘するような連中の文章には、当のギリシャのリドリキ村事件訴訟=マリゲロス対ドイツ連邦共和国事件における特別最高裁判決が無視されているということです。都合が悪いんでしょう。
以上
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