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シーライオニングの元ネタ漫画は黒人差別に繋がるという論はストローマン(藁人形)論法である
デイヴィッド・マルキ!氏原作のワンダーマークにおけるシーライオニングの元ネタ漫画について和訳しつつその内容と狙いについて、作者の発言も含めて解説しました。
が、どうも「アシカの存在否定をする女性を肯定する内容は黒人や在日朝鮮人などのマイノリティの差別を肯定することに繋がる」「代入可能性がある」「女性の方が酷くて、アシカの方に同意する」などと言っている人がそれなりに居ます。
作者の意図を別にしても、それはちゃんちゃらおかしいよね、ということを書いていきます。
シーライオニングの漫画は黒人への代入可能性がある?
"Pardon me, I couldn't help but overhear..." // Wondermark #1062; The Terrible Sea Lion http://t.co/mow0vnmWSS pic.twitter.com/7gByjQ4mAD
— Wondermark Comics (@wondermarkfeed) September 19, 2014
「シーライオニングの漫画は黒人への代入可能性がある」
この主張をする人、「代入」ってどういうものか分かってるのでしょうか?
この手の話をする人は、「女性の嫌悪対象としてのシーライオン」という局面だけを取り出してそこに「黒人」をシーライオンに代入しているのです。
なぜ、5コマ目や6コマ目にも代入しないのでしょうか?
黒人や在日朝鮮人は、5コマ目や6コマ目のように、拒否られた相手の部屋に深夜に侵入したり朝食の時間にも議論を吹っかけて粘着するような人々なのでしょうか?(「そうだ」という事なら、もはや何も言わないが…)
当たり前の話ですが、この漫画は6コマで構成されています。
3コマ目や4コマ目までで終わっているなら、むしろ女性が論拠を示さずにただシーライオンが嫌いだと言っていることの方にフォーカスされるでしょう。でも、現実の漫画の展開はそうじゃないわけです。
要するに、この漫画全体におけるシーライオンの役割を見ずに、女性が嫌悪する対象が、とある存在であるという一点を持って「人種差別に繋がる」と評価するのは、いわゆるストローマン(藁人形)論法なのです。
有名無名問わず、誰かがメディアでした話から別の誰かが一言だけ抜き取って、文脈から切り離してネットで持ち出して、そこから少数派を除いた多くの人がソースの文脈を参照しようとしないまま自己投影に基づいた批判や擁護(つまり妄想)のたたき台にして論争が繰り広げられる現象にまだ名前ないのかな
— 宇多田ヒカル (@utadahikaru) July 17, 2018
おお、ストローマン!まさにこれ!ウィキで調べて勉強になりました。
— 宇多田ヒカル (@utadahikaru) July 17, 2018
存在ではなく、行為を対象にしていないからだめ?
画像出典:[1-7] ポプテピピック【1】
「女性の非難の対象が、ある存在ではなく、行為を対象にすればこういう問題は生じなかった」
このように言う人が居るのですが、では、そうだとして問題は解決するのでしょうか?
たとえば、女性が嫌悪する対象が「シーライオン」という動物ではなく、たとえば【ベーコンをムシャムシャする】という行為だったとしたらどうでしょうか?
しかし、それでも「ベーコンムシャムシャくん」という擬人化した存在が出てきて、あの漫画ではシーライオンと同じ行動をしたでしょう。
それに対して「それは黒人に置き換えられる!代入可能性のある表現だからダメだ!」とか言うんでしょうか?いや、そう言うだろうなとしか思わないんですよね。
なんでもかんでも「〇〇に置き換え可能だ!」と言ってくる現象にまだ名前ないのかな?
感情移入できる対象だったのが良くない?
シーライオンだと感情移入できてしまうから擁護したくなる気持ちが出てくるのかな?と思ったのですが、もっと無機質な対象だったらどうだったでしょうか?
女性「ロボット全般は大丈夫だけど、ターミネーターは無理」とか
女性「昆虫全般は大丈夫だけど、ゴキブリは無理」とか
ゴキブリの絵があったら、結構ゴキブリの方に共感を示す日本人は少なかったのかな?と思います(ゴキブリ=コックローチが嫌悪対象ではない国地域は存在する)。
でも、いずれにしてもここで主題にしている彼ら彼女らの論法では「ターミネーター」「ゴキブリ」も「黒人」に置き換えることが可能です。だって、ある種族の存在を否定していることに変わりはないからです。
【ある者の「行為の是非」を論じているのに、いつの間にか「その者の存在そのもの」を否定していると非難してくる】
これも「ネットあるある」ですよね。
嫌悪対象を擬人化した表現は人種差別に繋がる?
これとは別に、「擬人化表現」という表現の一形態において、嫌悪対象を擬人化すること自体に抵抗感を持つ人が居ました。
しかしそれは、【風刺漫画の中の一つの表現方法という「存在」を否定】しているので、それって差別にならないんですかね?
女性「私、風刺漫画は大体OKなんだけど、ワンダーマークの"The Terrible Sea Lion"だけは無理」
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) July 20, 2020
男性「そんな事いっちゃ…」
ワンダーマークの"The Terrible Sea Lion"「すみません、聞こえてきたのですが…ワンダーマークの"The Terrible Sea Lion"があなたを実際に不幸にさせたエビデンスを…」 https://t.co/bMphzrA59s
ちなみに私がエンカウントした方は、シーライオンがゴキブリであってもダメだという、ある種、筋の通った方でした。
あのような風刺において擬人化表現が許されない、というのは、表現方法を狭める行為なのですが、それって好ましい方向性でしょうか?
女性の言動の問題とシーライオンの問題は独立
「女性の言動に問題がある」と言うことは何ら問題ないと思います。
が、「だからシーライオンの方が正しい」とはならないでしょう。
それらは別個独立した問題であり、「女性に問題があるからシーライオンには問題が無い」と言うのは5コマ目6コマ目の行動からあり得ないというのが自明です。
そのことは以下のコメント欄でも提示されましたし
とりあえず差別と言ってみたり、単語だけ置き換えて何か反撃したつもりになってる事を、「オタクの手癖」とか「オート反撃」とか呼んでいますが、あまりしっくりとくるものがないですね…(既に何かあるのかもしれませんが)
— 超かおりん (@chou_kaorinn) July 18, 2020
「代入可能性がある」とか何とか言って、勝手に設定を変えてるんですよね。
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) July 18, 2020
そりゃ設定をいじれるなら何でも差別の話に出来ますよと。
あと、原題が"The Terrible Sea Lion"だということがあまり知られてないのも作品の理解の方向性がバラバラな事の一因だと思ってます。
風刺漫画である以上キャラ化は必然という印象はありますね。
— 環 (@fuyu77) July 18, 2020
ツイートでも同様の懸念を示している方は見つかります。
3コマ目の「エビデンスを示せ」に対してそれ以降のシーライオンの行動が答えになってる、というブーメラン構造を楽しむためには、やはり6コマ全体を通した理解が無いとダメで、5,6コマ目のシーライオンの言動を捨象して女性の言動に問題があるからといってシーライオンの問題を無視するのはストローマン論法の極致じゃないでしょうか?
それとも、今現在アメリカでBLMが過激派に乗っ取られているように、「白人が過去に悪い事をしたんだから、差別されても仕方ないんだ」みたいな論法だというのなら、それはそれでお里が知れるというものでしょう。
以上
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![Nathan(ねーさん)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/8508941/profile_6dc129550422f1c144224fab872938e5.jpg?width=600&crop=1:1,smart)