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2024年ボカロ曲10選&ボカロ関連ニュース振り返り
2024年に発表された音声合成ソフトが歌うオリジナル曲(いわゆるボカロ曲) の中から、私が特にお気に入りの曲、多くの人に聞いて欲しい曲を10曲選びました。
私は週刊ボカフロというボカロ関連ニュースを毎週まとめるニュースブログを運営しています。2024年のボカロ関連ニュースを振り返ろうと考えていたのですが、どいういう切り口で振り返るか悩んでいました。それなら、ボカロ10選とニュースの振り返りを組み合わせたら、どっちも一緒にできて一石二鳥(?)と思い付き、やってみることにしました。
というわけで、ボカロ10選の曲紹介と合わせて、その曲を歌っている音声合成ソフト&キャラにまつわる2024年のニュースも振り返ります。長い文章になったので、目次から気になる曲やニュースを選んで、そこだけチェックするのも良いかもしれません。
黙ってロックをやれって言ってんの! / 猫舘 こたつ
私にとって2024年一番のお気に入り曲です。「黙ってロックをやれって歌ってんの」「お前の心を震わすまで鳴らすぜ」という歌詞が、まさにロックな歌詞で大好きです。ロック好き・バンドサウンド好きな自分の心が鷲づかみされました。
洗足学園音楽大学のファンメイドライブ制作団体 Project V-CLos が今年開催したVOCA-Fes2024 Progressにて、この曲が演奏されたときは思わず叫んでしまった。それくらい好きな曲。
ニコニコ動画が大規模サイバー攻撃で停止
この曲がYoutubeに投稿されたのは2024年6月、ニコニコ動画が大規模なサイバー攻撃でサービス停止されていた期間です。ニコニコ動画は、ボカロ曲など音声合成ソフトやキャラを使った動画が多く投稿される動画サイトで、その投稿者やリスナーにとって少なくない影響がありました。
この曲のニコニコ版がニコニコ動画にも投稿されたのも、8月のサービス再開後でした。
初の音 / 瀬名航
瀬名航さんの初音ミクイメージソング。たくさんの音や音楽ジャンルを詰め込んだおもちゃ箱のような瀬名航さんのサウンドが、私はお気に入りなのですが、この曲はまさにそれ。そんな曲に、ゆるめにかわいく歌うミクさんのボーカルが合うのです。
初音ミクが2回目の武道館公演と音楽フェス「コーチェラ」出演を果たす
今年も初音ミクのイベントや企画、グッズなど様々なニュースがありましたが、なかでも大きなニュースとしては、2回目の武道館公演と、アメリカ野外音楽フェス「コーチェラ」出演でしょうか。国内外の多くの音楽アーティストにとっても大きな舞台に、バーチャルな存在である歌唱合成の歌手が立った。それは、初音ミクにとっても歌唱合成ソフト/キャラクターにとっても、1つのマイルストーンだと思います。
そんな大きな舞台に立った初音ミクですが、誰でも使う事ができる歌唱ソフトでありキャラクターでもあります、それを使ってコンテンツを制作するクリエイター、そしてそれを支持するファンたち。それが初音ミクをこのような大きな舞台に押し上げました。
M@GICAL☆CURE! LOVE ♥ SHOT! / SAWTOWNE
MIKU EXPO 10周年記念楽曲コンテストで優勝した曲。オタ芸のコールがあったりと、2000年代を思わせるハイテンションな電波ソングな曲調。2007年あたりの初音ミク黎明期には、こういう初音ミクキャラクターソングは珍しくなかったですが、最近のボカロ曲では珍しく、かえって新鮮味を感じます。そんな曲調の曲が、海外のボカロPが制作して、日本に「逆輸入」されているのが面白いです。
"MIKU MIKU BEAAAAM!!" が、MIKU EXPO でも大いに盛り上がったパートのようで、公式から公開されたライブ動画でもそれが伺えます。
電気通信大学のバーチャルライブ研究会による初音ミクファンメイドライブ「MIKUEC 2024」ではこの曲が演奏されました。MIKU MIKU BEAAAAM!! が日本でも浴びれたのは嬉しかった。
🎉 MIKUEC2024 セトリ公開 💫
— MIKUEC@初音ミクファンライブ (@uec_miku_LIVE) December 22, 2024
【ライブ配信中▶️】
24曲目は『M@GICAL☆CURE! LOVE SHOT』です✨
MIKU MIKU BEAAAAM!!!
初音ミクファンメイドライブ『MIKUEC2024』はYouTube上にて配信中‼️
配信はこちら🔻https://t.co/tldOKZtoLb#初音ミク #MIKUEC2024 pic.twitter.com/knUhYrftE3
初音ミクの世界ツアーMIKU EXPOが10周年。北米、欧州、オーストラリア&ニュージーランドでMIKU EXPO開催
MIKU EXPOは、初音ミクの世界ツアーです。2014年にインドネシアで始まって以来、世界各地で開催されました。10周年となる今年は、4年振りとなる北米とヨーロッパ、そして初となるオーストラリア&ニュージーランドで開催されました。世界各地のファンの所へ、初音ミクが訪れました。
アンテナ39 / 柊マグネタイト
マジカルミライ2024のテーマ曲。EDM調のノリノリでかっこいいサウンドに、初音ミクを楽しもうというハッピーな歌詞。ライブで盛り上がる楽しい曲で、マジミラ2016テーマ曲「39みゅーじっく!」を思わせる。マジミラ開催前後はずっとこの曲をリピートしてました。
初音ミクのライブ&企画展「マジカルミライ2024」が福岡初開催
ここ数年、マジカルミライは東京(幕張)と大阪の2会場で開催していましたが、2024年は初めて福岡で開催しました。福岡では西鉄グループとのコラボもあり、歓迎ムードがありました。
2025年はマジカルミライ初の仙台開催が発表されており、日本国内ツアー開催と香川・沖縄で初公演も発表されています。2025年の初音ミクは、今までライブ参加が難しかった国内ファンの所へも訪れる一年になりそうです。
#マジカルミライ2025 の開催が告知された瞬間の会場の様子を動画でお届け✈
— 初音ミク「マジカルミライ」公式 (@magicalmirai) October 14, 2024
次回は「マジカルミライ」初のSENDAI会場も!
続報を楽しみにお待ちください🚩#初音ミク #鏡音リン #鏡音レン #巡音ルカ #MEIKO #KAITO pic.twitter.com/l0C2PzoXVV
スパイシーウィッチクラフト / しゃいと
雪ミク2024公式コンピアルバムに収録された曲。アップテンポで刺激的なサウンドがお気に入りです。MVも可愛くて楽しい。
SNOW MIKU 2024 の雪ミクさんの衣装は、スープカレーをモチーフとしたデザイン。そのスープカレーをテーマにしたこの曲。この曲を制作したしゃいとさんが、スープカレーを初めて食べた時の衝撃からこの曲調になったというエピソードが好きです。
実は雪ミクの話貰った当時まだスープカレー食べたことなくて、何となく野菜たっぷりで優しい家庭の味?みたいなイメージだったんだけど…
— しゃいと@ボカロP (@shaito_otiahs) July 24, 2024
実際食べてみたら具材も全部巻き込んでガツンとくる強烈なスパイスの味に衝撃受けて「あ、違うこれもっとノリノリで刺激的な感じだ…!」ってあの曲になりました
雪ミクが札幌観光大使に就任、雪ミクスカイタウンが10周年を迎える
そんな雪ミクですが、2024年には札幌観光大使に就任し、新千歳空港の雪ミクスカイタウンも10周年を迎えました。毎年冬季に札幌の街を走る雪ミク電車も札幌の風物詩になっています。雪ミクは北海道や札幌を代表するキャラクターになりつつあります。
げんてん / 大漠波新
MEIKO 20周年記念曲として制作された曲。MEIKOさんらしい力強くかっこいい曲。歌詞にMEIKOさんにまつわるキーワードを埋め込まれているのが良い。
MEIKOは最初に発売された日本語VOCALOIDであり、その後の初音ミク発売で広がるボカロムーブメントの「原点」となる存在。自分にとっても、初めて歌声を聞いたVOCALOIDがMEIKOでした。MEIKOにFF6 オペライベントを歌わせてみた動画や、涙そうそうをカバーした動画に、歌声合成でここまで歌わせられるのかと感嘆した覚えがあります。
VOCALOIDが20周年、MEIKOが20周年を迎える
MEIKOは2004年に発売され20周年を迎えましたが、VOCALOIDも20周年を迎えています。ZERO-G社の英語ライブラリ「LEON」「LOLA」が最初のVOCALOID製品として発売されたのも2004年でした。
VOCALOID20周年を記念して、ヤマハは記念サイトを開設しました。
オレンジ・ムーン / ねじ式
2024年も、新しい音声合成ソフトとキャラクターがいくつも発表されました。その中でも印象に残っているのが花響琴(ひびきこと)。パワフルに歌う本格的な歌手で、キャラクター設定の17歳とは思えないほど迫力があり、ジャズやR&Bのアダルトな歌が似合いそうな歌声。
そんな歌声の魅力をたっぷり楽しめるのが、ねじ式さんによるこの公式デモソング。スイングするスリリングなロックに、大人の恋愛を歌う色気のある歌詞。花響琴の歌声が、この曲にハマってる。
インターネット社から花響琴のVOCALOID6 AIとSynthesizer V AI が発売
そんな花響琴ですが、2024年4月にVOCALOID6 AI ボイスバンクが発売され、同年10月にはSynthesizer V AI が発売されました。GUMIに続いて、VOCALOID6 AIとSynthesizer V AIの両方が発売されたキャラとなりました。
歌声の幅を広げるために、複数の歌唱合成プラットフォームで音源を出す流れは、今後増えていくかもしれません。
vうなぎのぼれびくとりー!!!v / カルロス袴田(サイゼP)
2024年に発売された Synthesizer V AI 音街ウナ も、印象に残った新しい歌声合成ソフトの1つ。そのデモ曲がいくつか公開されましたが、その中でも特にお気に入りがこの曲。
サイゼPお得意のハイテンションなロックンロールで、新しく Synthesizer V AI が発売された音街ウナのテーマ曲でありながら、その曲を聞いた人にも元気を与えてくれる応援歌。
以前発売された VOCALOID6 AI 音街ウナは、VOCALOID4 音街ウナより自然な歌い方に進化したという印象だったのに対して、Synthesizer V 音街ウナは異なるボイススタイルで歌声の幅を広げたインパクトがありました。その歌声の可能性は、シカクドットさんが制作したデモ曲「フルカラー・エモーションズ」で確認できます。
GUMI・がくぽ・ウナの誕生祭ライブ「Lively Paradise 2024」が開催
音街ウナは、Synthesizer V AI 音街ウナが11月に発売され、トークではA.I.VOICE2 音街ウナが開発中との告知がありました。2025年も新しい展開が続きそうです。
2024年には、GUMIと神威がくぽ、音街ウナのライブも開催されました。クラウドファンディングでの支援を元に8月に開催され、12月には再配信もあり、好評だったようです。2025年も開催する動きがありそうです。
わたし最強プリンセス / マサキりたんP
CeVIO AI ずんだもん公式デモソング。二次創作が盛り上がった「お嬢様ずんだもん」の生みの親、おもちねぎさんの描きおろしイラストを使った、お嬢様ずんだもんのキャラクターソング。EDMとギターを組み合わせたサウンドもお気に入り。かわいくて楽しい歌。
マサキりたんPは、東北家の歌唱ソフトを使った曲を多く投稿しており、その曲が公式に起用されたのも嬉しい。
ずんだもんが注目を集める:メジャーデビュー、企業動画に起用、お嬢さまずんだもんなど
今年注目を集めた音声合成キャラの1つがずんだもんではないでしょうか。
ずんだもんを使った動画が多く作られているなか、メジャーデビューが決まったり、企業の動画などで起用されたり、お嬢様ずんだもんやずんだどんなどの二次創作が盛り上がったりと、多くの話題を集めました。
知りすぎた解像度 / 花言葉はインフィニティ
小春六花・夏色花梨・花隈千冬によるアイドルグループ「花言葉はインフィニティ」が歌うという設定の曲。悲哀を帯びた疾走感のあるアイドル曲。3人の歌い分けやユニゾンも聴きどころ。
作曲者のCHEEBOWさんは、実際のアイドルに楽曲を提供している音楽家ということもあり、メロディラインやサウンドも含めガチのアイドルソング。六花たち3人がアイドル衣装を着てステージで歌う姿を幻想してしまいます。
夏色花梨・花隈千冬のVOICEPEAK制作が決定、1st LIVEも2025年開催予定
小春六花・夏色花梨・花隈千冬を運営するTOKYO6 ENTERTAINMENTは、小樽潮風高校Projectという小樽コラボを展開しています。本コラボで開催される小樽まちめぐりスタンプラリーは5回目を迎え、各種コラボでの起用など、小樽のキャラクターとして活躍の場を広げつつあるようです。
また夏色花梨・花隈千冬のVOICEPEAK制作を目指すクラウドファンディングでは目標金額を達成し、2025年の発売が決定していました。また夏色花梨・花隈千冬の1st LIVEも2025年開催を予定しています。
[番外編]革命デュアリズム / covered by 可不 × 梵そよぎ
ここからは番外編として、カバー曲を3曲とりあげます。オリジナル曲以外にも魅力的な歌声が聴けるカバー曲も紹介したいのと、2024年を振り返るニュースを追加したいのが理由です。
1曲目のカバー曲は、梵そよぎと可不のデュエットによる「革命デュアリズム」カバー。梵そよぎ公式による制作されたカバーで、なヲタさんが調声。
そよぎと可不の歌唱が楽曲に負けず熱い。梵そよぎのテンションを強めた声と抜いた声のコントラスト、歌い回し、ハートーンと、良い歌声を聞かせる。可不の歌唱も、声を張り上げて歌ってる感があって良い。
声優・梶裕貴さんが音声合成プロジェクト「そよぎフラクタル」を立ち上げ、「CeVIO AI 梵そよぎ」を発売
梵そよぎは、声優・梶裕貴さんが立ち上げた「そよぎフラクタル」プロジェクトで制作・販売した音声合成ソフト/キャラクターで、梶裕貴さん自らCVを担当しています。
音声合成ソフトのCV担当が、そのキャラクターを応援する事例はありますが、声優自身が音声合成ソフト制作プロジェクトを進めるのは珍しい事例です。音声合成ソフト界隈に新しい風を吹かせる存在になるかもしれません。
[番外編]鬼束ちひろ「月光」カバー Synthesizer V 宮舞モカ
Synthesizer V AI 宮舞モカは、その高い歌唱力と、トークの声とのギャップで衝撃的でした。個人的には、この「月光」カバーに一番の衝撃を受けました。制作はDharmaさん。高音だけでなく中低音も迫力のあるパワフルな歌声で、この歌を歌い上げています。
私は鬼束ちひろの曲が好きでよく聴いてた時期があり、その中でも「月光」は好きな曲の1つでした。それだけに、この曲をここまで歌いこなせる歌唱合成が現れた事は驚きでした。
AHS社から宮舞モカ のVOICEPEAKとSynthesizer V AI が発売
宮舞モカは、2024年の1月にテキスト読み上げソフトVOICEPEAK、9月に歌唱ソフトSynthesizer V AI が、AHSから発売されたキャラクターです。落ち着いた印象のVOICEPEAKの声とは対照的にSynthesizer V AI はパワフルな歌声で、話題になりました。Synthesizer V AI 宮舞モカの今後の活躍に期待です。
[番外編]]【双葉湊音】少年時代【CeVIOAI / VoiSona カバー】
番外編最後に紹介するカバー曲は、双葉湊音の「少年時代」カバーです。制作は双葉湊音公式で、調声はnaotyu-さん。
「青春系ソングボイス」の名の通り、まさに青春を象徴する歌を、爽やかな歌声で歌います。ちょっとハスキーがかった歌声で、素朴に歌ってる感が良い。桧野拓海さんのイラストも素敵。
公式の枠を超えた音声合成キャラのライブイベント「VVV MUSIC LIVE 2024」「Voicetic Fantasia 2024」が開催された
2024年の双葉湊音は、1月にトークボイスCeVIO AI 双葉湊音が発売、8月には初のミニライブを配信、10月には初の公式CDアルバムを発売しました。
そして、音声合成キャラクターフェス「VVV MUSICE LIVE 2024」に出演しトップバッターを務め、ライブイベント「Voicetic Fantasia 2024」にもゲスト出演しました。2022年に誕生し2年目となる2024年の双葉湊音は、活躍の場を広げました。
「VVV MUSICE LIVE 2024」は、総勢26キャラクターが出演するオンラインの音楽ライブフェスでした。「Voicetic Fantasia 2024」は6キャラクターが出演するリアル&バーチャルライブでした。いずれも、音声合成キャラ公式とは別の企業が企画運営したライブイベントです。
公式とは異なる企業が運営することで、公式がライブを企画運営するのが難しいキャラクターでもライブできる機会が増え、公式の枠を超えたキャラクター同士のコラボが増えていくと思われます。
VVV MUSIC LIVEとVoicetic Fantasiaのような、公式の枠を超えて音声合成キャラが出演するライブイベントが今後も続いていく事に期待です。
終わりに
以上、2024年のボカロ曲10選と、2024年のボカロ関連ニュース振り返りでした。
曲紹介とニュース振り返りを1つにまとめると、ちょっと読みにくい文章になってしまったかなと思いました。でも、ニュースの振り返りとしては、少しユニークな切り口にできたかなと。(振り返り記事を作る労力も少し減った気がします)
2025年も、素敵なボカロ曲に出会えますように。そして、音声合成ソフトとキャラの良いニュースがたくさんありますように。