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心のビタミン
特定のものからしか摂取出来ない心のビタミンって人それぞれ違うけどあると思ってる。
オーストラリアカルチャーの1つに野外映画がある。オーストラリアという国は本当に大きい。広大すぎるが故か、公園の数が尋常じゃない。しかも1つ1つの広さがでかいのである。ここから見れば東京、新宿にある新宿御苑なんて小指ほどのものだ。日本各地に行く度に「地図で見るよりも案外広いなぁ」なんて思っていたが、やはり狭いのだと考えを改めた。
住宅街から離れたバカでかい公園にスクリーンを建て、スピーカーを起き、画面の前にクッションの席を作り、近くに映写機の小屋を建てフードトラックを2、3台呼べば立派な野外映画の完成である。クッション席は少し高く売られており、映画のチケットだけ買った客は自分でピクニックシートや防寒具、食事などを持ってきて映画を楽しむことができる。
映画は日没近い時間から始まる。こちらは現在サマータイムが導入されているほどなので、日没が遅い。開演1時間前くらいから開場がスタートされ、ピクニックシートを持ってきた人たちは良き場所を取りにいく。わたしたちももれなくその波に乗った。大体の人の服装はカジュアルだが、防寒具はバッチリだ。中にはフリースパジャマの人やダウンを着てる人もちらほらいた。夏とはいえメルボルンの夜の寒さを知ることができる景色である。
今日観る映画はわたしのお気に入りの映画である。かなり昔のラブコメ映画である。これをこちらで観れるとは夢にも思ってなかった。友人とともにジャマイカ料理を頬張りながらビールを入れつつ、開演を待つ。多国籍にも程があるが、なかなか食べられない国の料理を食べられるところもここの魅力だ。オーストラリアのルールで野外での飲酒はアウトだが、このようなイベント毎では許されている。わたしたちの目の前には大きめの学生たちの男女グループ、その横には親子と犬の小さめのグループである。こういう時にも犬を連れてくるところがおおらかでいいなと思うし、周りの人もそれを暖かくて見守っているのがこの国をよく表している。
日没が近づくと見たこともないサイズのコウモリが四方八方から飛んでくる。リアルバットマンだなんてくだらないことを言い合っていると、映画が始まった。
今このタイミングでこの作品を観れて良かったと心から思う。この作品の何が好きかって、やっぱり主人公の生き方だ。決してスマートだとは言えない。空気を読める大人であれば、なぜそんなに複雑に生きるのか理由を理解できないだろう。決してみんなには好かれない主人公かもしれない。でもわたしの心は彼女を愛おしいと思うし、彼女の生き方にいつも勇気をもらう。どんなに失敗しても落ち込みながらも笑顔で進んでいくそのバイタリティと、常に自に正直であろうとする姿が健気で応援したくなるのだ。人生の選択肢は常に目の前にあるが自分を自分で幸せにするために何かを選び、器用じゃなくとも友達の信頼を得て愛され、人生にたまに起きる嫌なことも自分なりに受け流しつつ、いろんな味方をつけてありのままの自分を愛してくれる人を愛せるなんて、なんて美しいんだろう。
でもこの主人公はシンデレラのように王子様と結婚できたら終わりではない。人生は続くのだ。立ち止まることがあっても彼女にとっての心のビタミンが元気を与えながらも着実に前へ進めますよう、そしてこの先に彼女を待ってるものがどうか幸多からんことをと祈らずにはいられないのである。