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知らぬ間に
どこを見ても絵画で見たことのありそうな自然の光景が広がっている。
ニュージーランドに来ている。友人が私と同じく期間限定で移り住んでおり、日本にいる友人と共に訪ねることとなったためだ。わたしの住むオーストラリアもここニュージーランドも自然の豊富な国だと思っていたがいや、思っている以上にニュージーランドの持つ自然の迫力に圧倒されている。こりゃたまげた、である。
今回のニュージーランドでの工程は11日間、まずは北ウェリントンからクライストチャーチまでフェリーや電車を使って南下していき、友人たちと合流して車を手に入れ、行きたいところを巡っていく。
普段旅に出る場合は行く場所について調べるが、今回は友人たちにお願いした。全くニュージーランドの知識がないために誰かと行けばどこでも楽しい精神でみんなの行きたいところにくっついていくのがわたしにとってはこの旅の最善だと思うからである。そして彼女らはみな調べのプロである。
どのルートを通るのか、行く先々の名物は何なのか全く知識がない状態で行くのは久方ぶりで、だからこそ出会えた時の新鮮さはいつも以上のものがある。こういう旅の仕方をしたのは久しぶりでワクワクしている。この楽しみ方を許してくれる友人に心から感謝だ。
大概、旅行となると帰る日も分かりきっているためかホームシックになるということはまずない。逆にまだ堪能しきってないと思うことの方が多い気がする。しかし今日、ニュージーランドはクライストチャーチで住むように生活してみるに重きを置いてみた。これまではアクティビティや移動などでアドレナリン爆発だったが、ここで一旦の休息である。時間を気にせずカフェに行き、携帯をいじりながらまったり過ごしてアウトレットモールの店舗を眺めながらスーパーで食材を買って飯を作り洗濯をする。そんな休日のような過ごし方の中でわたしはメルボルンに少しのホームシックを感じてしまったのである。
たった数ヶ月、ほんの5か月の滞在である。日本に一体何十年住んできたんだという人間がその仮移住地に今まで感じたことのない寂しさを感じてしまったのだ。これはある種の病気である。
せっかく1年どうとでもしてられる魔法のビザを貰ったのだから、その国を満喫する方法を考えるという意見を聞いて心が動いたが、わたしが今住んでる場所に来た理由はとある理由でこの地に住む人への恩返しをしたいという気持ちから始まったのだ。別州への短期間の滞在はあるにせよ、土地移動はやはり考えられなかった。
正直な話、わたしも動揺している。メルボルンは好きだがまさかホームシックのような気持ちになるなんて。そうか、わたしはそんなに今住む地に愛着を持って生活をしていたのかと逆輸入のように自身の気持ちに気づいてしまった。まさに「ラブストーリーは突然に」である。
今はどこに自分が1番腰を据えたいのか分からないが、物事はこういう日常の気づきの積み重ねの上に成り立つのだと改めて感じたのであった。